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AIの社会実装(法律・倫理・AIガバナンス・著作権)

AI学習は著作権法30条の4で原則適法(但書と享受目的併存に注意)、個人データは匿名加工・仮名加工の義務の違い、ガバナンスはAI事業者ガイドライン等のソフトロー中心——各法令の改正年と要件の対応を正確に覚えることが得点の鍵である。

AIの学習・運用にはパーソナルデータの取り扱いが不可避であり、個人情報保護法の理解が前提となる。同法における個人情報とは、生存する個人に関する情報であって特定の個人を識別できるもの(顔認識データ等の個人識別符号を含む)を指す。人種・信条・病歴など不当な差別や偏見を生じ得る「要配慮個人情報」は取得に本人の事前同意が必要で、オプトアウト方式による第三者提供は認められない。2015年改正では、特定の個人を識別できないよう加工し復元不能とした「匿名加工情報」が導入され、公表義務等を満たせば本人同意なく第三者提供できる。さらに2020年改正(2022年施行)では、他の情報と照合しない限り個人を識別できない「仮名加工情報」が新設され、開示・利用停止請求への対応義務が緩和される一方、原則として第三者提供は禁止され社内での分析利用が想定されている。Cookie等の「個人関連情報」も同改正で規律され、提供先で個人データとなる場合は本人同意の確認が義務付けられた。

海外法制ではEUの一般データ保護規則(GDPR、2018年施行)が最重要である。EU域内に拠点がなくても域内の個人に商品・サービスを提供する事業者に適用される域外適用が特徴で、違反には全世界売上高の4%または2,000万ユーロのいずれか高い方を上限とする制裁金が科され得る。本人には消去権(忘れられる権利)、自己のデータを機械可読形式で受け取り他の管理者へ移せるデータポータビリティの権利、プロファイリングを含む自動処理のみに基づく重要な決定に服しない権利などが認められる。日本は2019年に日EU間で相互の十分性認定を得た。また2024年に成立したEUのAI規則(AI Act)は世界初の包括的AI規制であり、リスクベースアプローチを採用する。ソーシャルスコアリング等の「許容できないリスク」のAIは禁止、雇用・与信等の「ハイリスク」AIには適合性評価等の厳格な義務、チャットボット等の「限定リスク」には透明性義務を課し、生成AIを含む汎用目的AIモデルへの規律も設けられた。

著作権法は学習と生成の両局面で問われる。2018年改正で新設された30条の4は、著作物に表現された思想または感情の「享受」を目的としない利用について、情報解析(機械学習・深層学習の学習データとしての利用を含む)に必要な限度で、営利・非営利を問わず原則として権利者の許諾なく行えると定める柔軟な権利制限規定である。ただし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は但書により適用されず、文化庁が2024年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方について」は、享受目的が併存する場合には同条が適用されないこと等を整理した。生成・利用段階では通常の著作権侵害の判断枠組み(類似性・依拠性)がそのまま適用される。AI生成物の著作物性については、著作物が「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されるため、人間の創作的寄与なくAIが自律的に生成したものは著作物に該当せず、プロンプトの工夫や生成物の選択・修正など人間の創作的寄与が認められる場合に限り著作物となり得る。

データやモデルの保護には不正競争防止法と特許法の知識が必要である。営業秘密として保護されるには秘密管理性・有用性・非公知性の3要件(同法2条6項)を満たす必要があり、社内で秘匿管理する学習データや学習済みモデルが該当し得る。他方、外部に提供するデータは秘密管理性を欠くため、2018年改正で「限定提供データ」の制度が導入され、業として特定の者に提供する、電磁的方法により相当量蓄積・管理された技術上または営業上の情報が不正取得・不正使用等から保護されることになった。特許については、特許法上の発明者は自然人に限られると解されており、AIシステム「DABUS」を発明者とした出願をめぐる訴訟で知財高裁は2025年1月、AIを発明者と認めない判断を示した。学習済みモデルはプログラム部分がプログラムの著作物として保護され得る一方、重みパラメータそのものの法的保護は困難とされ、契約・営業秘密・限定提供データを組み合わせた多層的な保護設計が実務上の論点となる。

AI倫理では国内外の原則文書が頻出する。日本では2019年に統合イノベーション戦略推進会議が「人間中心のAI社会原則」を決定し、人間の尊厳・多様性と包摂・持続可能性の3つの基本理念の下、①人間中心②教育・リテラシー③プライバシー確保④セキュリティ確保⑤公正競争確保⑥公平性、説明責任及び透明性⑦イノベーションの7原則を掲げた。国際的にはOECDが2019年にAI原則を採択し、EUは「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」を公表している。公平性をめぐっては、米国の再犯リスク予測システムCOMPASが黒人被告に不利な予測を出すと2016年に指摘された事例が、学習データに由来するバイアスの代表例であり、FAT(公平性・説明責任・透明性)の確保が求められる。判断根拠を人間が理解できる形で示すXAI(説明可能なAI)の研究や、採用AIが女性応募者に不利な評価をした事例、ディープフェイクによる偽情報も、社会実装における倫理的リスクとして出題される。

AIガバナンスはソフトローを中心に整備が進む。2024年に総務省・経済産業省が公表した「AI事業者ガイドライン」は、従来の「国際的な議論のためのAI開発ガイドライン」「AI利活用ガイドライン」「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」の3文書を統合したもので、事業者をAI開発者・AI提供者・AI利用者の3類型に整理し、人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティ等の共通の指針を示す。法的拘束力を持たないソフトローであり、環境変化に応じてガバナンスを継続的に見直す「アジャイル・ガバナンス」の考え方を採用する点が特徴である。国際的には2023年のG7広島AIプロセスにより、高度なAIシステムを開発する組織向けの国際指針・国際行動規範が合意された。国内では2025年に日本初のAI基本法制である「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(AI推進法)が成立し、罰則を設けずイノベーション促進と適正性確保の両立を図る枠組みが整えられた。

分野別の法規制も出題実績が多い。自動運転では2019年の道路交通法・道路運送車両法改正(2020年施行)によりレベル3(条件付運転自動化)が解禁され、作動状態記録装置の搭載等が義務付けられた。さらに2022年改正道路交通法(2023年4月施行)により、運転者を必要としないレベル4に相当する「特定自動運行」が都道府県公安委員会の許可制で可能となった。ドローンについては航空法改正により2022年に機体認証と無人航空機操縦者技能証明の制度が創設され、有人地帯上空での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が解禁された。このほか、カメラ画像の利活用について実務指針を示す「カメラ画像利活用ガイドブック」、採用・与信など人の評価に関わるプロファイリングの適正性、ディープフェイクによる名誉毀損や偽情報拡散への対応など、技術の悪用・誤用に対する規律も体系的に押さえる必要がある。試験では法改正の年・施行年と解禁されたレベルの対応関係が問われやすい。

この章の問題から3問

著作権法第30条の4により、AI開発のための機械学習に他人の著作物を利用する行為は、営利目的であっても原則として著作権者の許諾なく行うことができる。

正解 ○(正しい)

正しい。著作権法30条の4は「享受を目的としない利用」として情報解析(機械学習・深層学習を含む)への利用を、営利・非営利を問わず原則適法とする。「営利目的」の部分がひっかけだが、同条に営利性による限定はない。ただし但書により「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」(例: 情報解析用に販売されるデータベースの著作物の複製)には適用されない。また文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は享受目的が併存する場合も同条の対象外とする。

個人情報保護法上の匿名加工情報を第三者に提供する場合には、あらかじめ本人の同意を得なければならない。

正解 ×(誤り)

誤り。匿名加工情報は特定の個人を識別できず復元もできないように加工された情報であり、本人の同意なく第三者提供できる(提供する情報の項目および提供方法の公表等の義務はある)。本人同意の原則が及ぶのは個人データの第三者提供である。2020年改正で新設された仮名加工情報が原則第三者提供禁止(内部分析用)であることとの混同を狙ったひっかけ。

日本の特許法では、AIが自律的に行った発明についてAI自体を発明者として特許出願することが認められている。

正解 ×(誤り)

誤り。特許法上の発明者は自然人に限られると解されている。AIシステム「DABUS」を発明者と記載した出願をめぐる訴訟でも、東京地裁(2024年5月)に続き知財高裁(2025年1月)が発明者は自然人に限られると判断し、AI発明の取り扱いは立法論に委ねられるとした。著作権でも同様に、人間の創作的寄与のないAI自律生成物は著作物と認められない点をセットで押さえる。

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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。