情報セキュリティ(暗号・認証・攻撃手法と対策)
暗号と認証は「誰のどの鍵で何をするか」(機密性=受信者の公開鍵で暗号化/署名=送信者の秘密鍵で生成・公開鍵で検証)を軸に整理し、攻撃手法は名称・手口・対策を三点セットで対応付けて覚えることが合否を分ける。
情報セキュリティの目的は機密性・完全性・可用性(CIA)の維持であり、JIS Q 27000ではこれに真正性・責任追跡性・否認防止・信頼性を加えた特性を定義している。機密性を支える中核が暗号技術であり、共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式に大別される。共通鍵暗号方式は暗号化と復号に同一の鍵を用いる方式で、代表はAES(米NISTがFIPS 197として標準化したブロック暗号。ブロック長128ビット、鍵長128/192/256ビット)である。処理は高速だが、n人が相互に通信する場合に必要な鍵の総数はn(n-1)/2個に達し、鍵を安全に相手へ渡す鍵配送問題が課題となる。公開鍵暗号方式は暗号化鍵と復号鍵が異なる方式で、素因数分解の困難性に基づくRSAや楕円曲線暗号(ECC)が代表である。機密性確保の用途では「受信者の公開鍵で暗号化し、受信者の秘密鍵で復号」する。実用上はデータ本体を高速な共通鍵暗号で暗号化し、そのセッション鍵を公開鍵暗号で安全に配送するハイブリッド暗号が使われ、TLSがその典型である。
ハッシュ関数は任意長のデータから固定長のハッシュ値(メッセージダイジェスト)を生成する関数で、SHA-256などが用いられる。要求される性質は原像計算困難性(一方向性)・第二原像計算困難性・衝突発見困難性の三つであり、改ざん検知やパスワードの保管(ソルトを付加したハッシュ化)に利用される。デジタル署名は、送信者がメッセージのハッシュ値を自身の秘密鍵で処理して署名を生成し、受信者が送信者の公開鍵で検証する仕組みで、改ざん検知・本人確認・否認防止を実現する。署名自体は機密性を提供しない点が頻出のひっかけである。公開鍵と所有者の対応を保証する基盤がPKI(公開鍵基盤)であり、認証局(CA)がX.509形式のデジタル証明書を発行する。秘密鍵の漏えい等により有効期限内に失効させた証明書はCRL(証明書失効リスト)に登録され、OCSPを使えばオンラインで失効状態を即時照会できる。電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)により、一定の要件を満たす電子署名には手書き署名や押印と同等の推定効が与えられる。
認証は本人確認の手段であり、記憶(パスワード)・所持(ICカード、ワンタイムパスワードトークン)・生体(指紋、虹彩、静脈)の3要素に分類される。異なる要素を二つ以上組み合わせる多要素認証がパスワードリスト攻撃等への有効な対策となる。ネットワーク経由の認証ではチャレンジレスポンス認証が重要で、サーバが毎回異なるチャレンジ(乱数)を送り、クライアントはそれとパスワードからハッシュ演算したレスポンスを返す。パスワード自体が回線を流れないため、盗聴されても再利用できずリプレイ攻撃を防げる。生体認証では本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)がトレードオフの関係にあり、判定のしきい値調整で用途に応じたバランスを取る。複数サービスに一度の認証でアクセスするシングルサインオン(SSO)にはSAMLやOpenID Connectが、認可の委譲にはOAuth 2.0が用いられる。普段と異なる端末や場所からのアクセス時のみ追加認証を課すリスクベース認証も出題実績がある。
攻撃手法は午前・午後とも最頻出領域である。Webアプリケーションへの攻撃では、入力値にSQL断片を混入させてデータベースを不正操作するSQLインジェクション、悪意のスクリプトを利用者のブラウザで実行させるクロスサイトスクリプティング(XSS)、ログイン中の利用者に意図しないリクエストを送信させ設定変更や投稿を行わせるクロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)、「../」等でパス指定を操作し非公開ファイルへアクセスするディレクトリトラバーサルが代表である。ネットワーク層では、キャッシュDNSサーバへ偽の名前解決情報を注入して利用者を偽サイトへ誘導するDNSキャッシュポイズニング、通信に割り込む中間者攻撃、多数の機器から一斉に負荷をかけるDDoS攻撃がある。認証への攻撃としては辞書攻撃、総当たり(ブルートフォース)攻撃に加え、他サイトから流出したIDとパスワードの組を使い回すパスワードリスト攻撃がIPA「情報セキュリティ10大脅威」の常連である。標的型攻撃は業務を装うメールで特定組織をマルウェアに感染させ、C&Cサーバ経由で内部活動と情報窃取を行う。データを暗号化し身代金を要求するランサムウェアも必修である。
対策技術は多層防御の観点で整理する。ネットワーク境界ではファイアウォールがIPアドレスやポート番号によるパケットフィルタリングで通過可否を制御し、外部公開サーバは内部LANと分離したDMZに配置する。IDS(侵入検知システム)は不正な通信を検知して管理者へ通知し、IPS(侵入防止システム)は検知に加えて遮断まで行う。WAF(Web Application Firewall)はHTTPメッセージの内容を検査してSQLインジェクションやXSSなどアプリケーション層への攻撃を防ぐ点で、ファイアウォールと防御階層が異なる。開発側の根本対策として、SQLインジェクションにはプレースホルダ(バインド機構)の利用、XSSには出力時のエスケープ処理がIPA「安全なウェブサイトの作り方」で示されている。通信の保護にはトランスポート層のTLSとネットワーク層のIPsecが用いられ、TLSはサーバ証明書による認証とハイブリッド暗号を組み合わせる。電子メールでは送信ドメイン認証のSPF・DKIM・DMARCが頻出であり、S/MIMEによる暗号化と署名も押さえる。
マネジメントと法制度も確実な得点源である。ISMS(JIS Q 27001)では、リスクアセスメントをリスク特定・リスク分析・リスク評価の手順で実施し、リスク対応としてリスク回避(原因となる活動の中止)、リスク低減(管理策による発生確率・影響の低減)、リスク共有(保険加入や外部委託による移転)、リスク保有(受容)から選択する。インシデント対応の専門組織としてCSIRTを設置し、JPCERT/CCやIPAと連携する体制が問われる。法制度では、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)が他人の識別符号の不正利用やセキュリティホール攻撃による不正ログイン、識別符号の不正取得・保管、フィッシング行為を処罰対象とする。刑法には不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるウイルス作成罪、刑法168条の2)がある。個人情報保護法は令和3年改正で民間・行政機関等の規律が一本化され、重大な漏えい等の際の個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化された。サイバーセキュリティ基本法、NISTのサイバーセキュリティフレームワークも出題実績がある。
この章の問題から3問
公開鍵暗号方式を通信の機密性確保に用いる場合、送信者は受信者の公開鍵でデータを暗号化し、受信者は自身の秘密鍵で復号する。
正解 ○(正しい)
正しい。機密性確保では「受信者の公開鍵で暗号化・受信者の秘密鍵で復号」する。復号鍵(秘密鍵)を受信者しか持たないため第三者は読めない。ひっかけはデジタル署名(送信者の秘密鍵で生成・送信者の公開鍵で検証)との混同で、IPA公式シラバス「情報セキュリティ」分野で毎回問われる基本の対比である。
デジタル署名では、署名者は自身の公開鍵を用いて署名を生成し、検証者は署名者の秘密鍵を用いて署名を検証する。
正解 ×(誤り)
誤り。鍵の役割が逆である。署名の生成は署名者の「秘密鍵」、検証は署名者の「公開鍵」で行う。秘密鍵は本人しか保持しないからこそ、本人が作成したこと(真正性)と否認防止が成立する。検証者が秘密鍵を使うとする記述は成り立たない(秘密鍵は公開されない)。公開鍵暗号の暗号化方向と署名方向を入れ替える定番のひっかけである。
共通鍵暗号方式を用いてn人が互いに1対1で暗号化通信を行う場合、必要となる鍵の総数はn(n-1)/2個である。
正解 ○(正しい)
正しい。全ての2人の組合せごとに固有の共通鍵が必要なので、鍵数は組合せnC2=n(n-1)/2個。例えば10人なら10×9÷2=45個。公開鍵暗号方式ならば各人が鍵ペア1組を持てばよく計n組で済む、という対比まで含めて午前試験で繰り返し出題されている計算論点である。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。