行政法総論・行政手続法
申請に対する処分では審査基準の設定・公表が法的義務(行手法5条)だが、不利益処分の処分基準は設定・公表とも努力義務(12条)——この非対称と理由提示・聴聞/弁明の使い分けが本章最大の得点源である。
行政法には統一的な単一法典が存在せず、行政組織法・行政作用法・行政救済法の三分野の総称として理解される。行政法の一般原則として、法律による行政の原理(法治主義)が最重要であり、その内容は「法律の法規創造力」「法律の優位」「法律の留保」の三原則に分解される。法律の留保の範囲については、国民の権利を制限し義務を課す侵害行政にのみ法律の根拠を要するとする侵害留保説が伝統的通説であり、実務もこれを前提とする。このほか、比例原則、平等原則、信義誠実の原則(信頼保護)も行政法の一般原則として本試験で繰り返し問われる。最判昭62.10.30(青色申告事件)は、租税法律主義が支配する租税法律関係にも信義則の適用があり得るが、その適用は納税者間の平等・公平という要請を犠牲にしてもなお当該納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえる特別の事情がある場合に限られるとした点で頻出である。
行政行為(講学上の概念。行政手続法・行政事件訴訟法上は「処分」)は、公定力・不可争力・自力執行力・不可変更力といった特殊な効力を持つ。公定力とは、行政行為が仮に違法であっても、権限ある機関(処分庁・審査庁・裁判所)により取り消されるまでは有効なものとして扱われる効力であるが、重大かつ明白な瑕疵がある行政行為は無効であり公定力を生じない(重大明白説・最判昭36.3.7参照)。行政行為の分類では、法律行為的行政行為(命令的行為=下命・禁止・許可・免除、形成的行為=特許・認可・代理)と準法律行為的行政行為(確認・公証・通知・受理)の区別が択一の定番である。許可(本来の自由の回復。例: 運転免許・風俗営業許可)と特許(新たな権利の設定。例: 河川占用許可・公有水面埋立免許)と認可(第三者の法律行為の効力補充。例: 農地権利移転の許可)の具体例の対応関係は毎年度確実に押さえるべきである。
行政裁量については、裁量権の逸脱・濫用がある場合に限り裁判所は処分を取り消すことができる(行政事件訴訟法30条)。判例は、マクリーン事件(最大判昭53.10.4)で外国人の在留期間更新につき法務大臣の広範な裁量を認めつつ、判断が全く事実の基礎を欠くか社会通念上著しく妥当性を欠く場合に違法となるとした。また、伊方原発訴訟(最判平4.10.29)は専門技術的裁量に対する判断過程審査を、日光太郎杉事件(東京高判昭48.7.13)は考慮事項審査の代表例を示す。行政行為の附款(条件・期限・負担・撤回権の留保)は法律行為的行政行為にのみ付すことができ、附款のうち負担に違反しても行政行為本体の効力は当然には失われない点、行政行為の「取消し」(原始的瑕疵・遡及効)と「撤回」(後発的事情・将来効。処分庁のみが法律の根拠なくなし得るとするのが判例=菊田医師事件・最判昭63.6.17)の区別も頻出である。
行政手続法は、処分・行政指導・届出・命令等制定手続に関する一般法であり(1条)、目的は行政運営における「公正の確保と透明性の向上」である(「迅速」は含まれない点がひっかけの定番)。申請に対する処分については、審査基準の設定・公表は法的義務(5条)、標準処理期間の設定は努力義務・設定した場合の公表は法的義務(6条)、申請が事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始する義務(7条)、拒否処分時の理由提示義務(8条)が定められる。一方、不利益処分については、処分基準の設定・公表はいずれも努力義務(12条)にとどまる点が申請対応との最重要対比である。不利益処分の理由提示(14条)につき、一級建築士免許取消事件(最判平23.6.7)は、処分基準の適用関係が示されなければ理由提示として不十分であり処分は違法となるとした。
不利益処分をしようとする場合の意見陳述手続は、許認可の取消しや資格・地位の剥奪など重大な不利益処分では聴聞(13条1項1号)、それ以外は弁明の機会の付与(同項2号)による。聴聞は原則非公開で、当事者には文書等の閲覧権(18条)や代理人選任権が認められる。行政指導(2条6号)は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであり(32条1項)、従わなかったことを理由とする不利益取扱いは禁止される(同条2項)。申請に関連する行政指導につき、相手方が従う意思がない旨を表明したにもかかわらず行政指導を継続して申請への応答を留保することは原則違法とするのが品川マンション事件(最判昭60.7.16)であり、33条はこれを明文化した。平成26年改正で、法令違反行為の是正を求める行政指導の中止等の求め(36条の2)と、処分・行政指導を求める処分等の求め(36条の3)が新設された。
意見公募手続(パブリックコメント)は、命令等(政令・省令・審査基準・処分基準・行政指導指針)を定める際に、原則30日以上の意見提出期間を設けて案を公示し広く意見を求める手続である(39条)。提出意見を「十分に考慮しなければならない」(42条)が、意見に拘束されるわけではない。なお、行政手続法の適用除外に注意を要する。地方公共団体の機関がする処分のうち条例・規則に根拠を置くもの、地方公共団体の機関がする行政指導、地方公共団体への届出、条例・規則の制定行為には同法は適用されず(3条3項)、地方公共団体は行政手続条例により必要な措置を講ずる努力義務を負う(46条)。また、国会・裁判所の行為、刑事事件に関する処分、公務員の身分に関する処分等も適用除外である(3条1項)。
行政上の義務履行確保として、行政代執行法は代替的作為義務についてのみ代執行を認め、手続は戒告→通知→実行→費用徴収(国税滞納処分の例による)の順で進む。義務履行確保の手段は法律の専管事項であり、条例により直接強制や執行罰を創設することはできない(行政代執行法1条)。執行罰は現行法上、砂防法36条にほぼ唯一の例が残る。即時強制は義務の存在を前提としない点で強制執行と区別される。行政罰には行政刑罰(刑法総則・刑事訴訟法適用)と秩序罰(過料)があり、行政刑罰と過料の併科は二重処罰禁止(憲法39条)に反しないとされる点も択一頻出である。
この章の問題から3問
行政手続法1条は、同法の目的として行政運営における公正の確保と透明性の向上のほか、行政運営の迅速性の確保を掲げている。
正解 ×(誤り)
行政手続法1条1項が掲げるのは「行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資すること」であり、「迅速性」は目的規定に含まれない。定番のひっかけ。
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合、申請者に対し原則として同時にその理由を示さなければならない。
正解 ○(正しい)
行政手続法8条1項本文。拒否処分と同時の理由提示が原則(処分を書面でするときは理由も書面による。同条2項)。審査基準が数量的指標等で明確な場合の例外(同項ただし書)はあるが原則は理由提示義務。
行政庁は、不利益処分の処分基準を定め、かつ、これを公表するよう努めなければならないとされ、その設定・公表は法的義務ではない。
正解 ○(正しい)
行政手続法12条1項は処分基準の設定・公表をいずれも努力義務とする。申請に対する処分の審査基準(5条)が設定・公表とも法的義務であることとの対比が最頻出論点。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。