地方自治法
直接請求は「署名数(1/50か1/3か)×請求先(長・監査委員・選管)」、長と議会は「再議は議決一般が対象・条例予算の再議決のみ3分の2(他は過半数)・不信任は2/3出席かつ3/4同意」、住民監査請求は「住民1人でも可・1年以内・監査請求前置」を正確に暗記せよ。
地方自治法は憲法92条の「地方自治の本旨」を具体化する法律である。地方自治の本旨は、住民の意思に基づいて地方政治を行う「住民自治」と、国から独立した団体が自らの事務を処理する「団体自治」の二要素からなる。地方公共団体は普通地方公共団体(都道府県・市町村)と特別地方公共団体(特別区・地方公共団体の組合・財産区。地方自治法1条の3)に分かれる。市には人口50万以上を要件とする指定都市(252条の19)、人口20万以上を要件とする中核市(252条の22)の大都市特例があり、指定都市・中核市は特別地方公共団体ではなく普通地方公共団体である点が繰り返し出題される。地方公共団体の事務は自治事務と法定受託事務(2条8項・9項)に区分され、機関委任事務は平成11年の地方分権一括法により廃止された。
条例制定権について、普通地方公共団体は「法令に違反しない限りにおいて」条例を制定できる(憲法94条、地方自治法14条1項)。法律との抵触の判断基準は徳島市公安条例事件(最大判昭50.9.10)が示した通り、両者の趣旨・目的・内容・効果を比較して矛盾抵触があるかで決する。条例には2年以下の拘禁刑(刑法改正により懲役・禁錮から改められた)、100万円以下の罰金、拘留、科料、没収、5万円以下の過料を科す旨の規定を置くことができる(14条3項)。一方、長が定める規則には5万円以下の過料のみ規定できる(15条2項)。義務を課し又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除き条例によらなければならない(14条2項)。条例と規則の罰則の差は択一の定番論点である。
直接請求制度は署名数と請求先の組合せが最頻出である。①条例の制定改廃請求は選挙権を有する者の総数の50分の1以上の連署で長に請求する(74条)。ただし地方税の賦課徴収並びに分担金・使用料・手数料の徴収に関するものは対象外である(74条1項括弧書)。②事務監査請求は50分の1以上の連署で監査委員に請求する(75条)。③議会の解散請求は原則3分の1以上(有権者総数40万超・80万超の部分は要件緩和)の連署で選挙管理委員会に請求し、住民投票で過半数の同意があれば解散する(76条〜79条)。④議員・長の解職請求も原則3分の1以上で選挙管理委員会に請求するが、副知事・副市町村長など主要公務員の解職請求の請求先は長であり、議会で議員の3分の2以上が出席しその4分の3以上の同意により失職する(86条・87条)。
議会と長は共に住民の直接選挙で選ばれる二元代表制であり、両者の抑制均衡の制度が問われる。長は、議会の議決に異議があるときは、送付を受けた日から10日以内に理由を示して再議に付すことができる(一般的拒否権、176条1項。平成24年改正により条例・予算に限らず議決一般が対象となった)。再議決の要件は、条例の制定改廃又は予算に関する議決については出席議員の3分の2以上の同意を要し(同条3項)、それ以外の議決については過半数で足りる。再議決されると議決は確定する。違法な議決・選挙に対する再議(176条4項)は義務的である。議会が長の不信任を議決するには議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意を要する(178条3項)。長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散でき、解散しなければ失職する。解散後の議会で再び不信任議決(この場合は3分の2以上出席・過半数の同意)があれば長は失職する。また、議会が成立しないとき等には長は専決処分ができ、次の会議で議会に報告し承認を求めなければならないが、承認が得られなくても処分の効力は失われない(179条)。
住民監査請求(242条)と住民訴訟(242条の2)は毎年のように出題される。住民監査請求は、当該普通地方公共団体の住民であれば選挙権の有無や国籍を問わず一人でも行うことができ、法人も可能である。対象は長・職員等の違法又は不当な財務会計上の行為(公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結、公金の賦課徴収を怠る事実等)に限られ、原則として当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過するとできない(正当な理由がある場合を除く)。住民訴訟は監査請求を経た者のみが提起できる監査請求前置主義を採り、対象は違法な行為に限られる(不当は対象外)。請求類型は差止め(1号)、取消し・無効確認(2号)、怠る事実の違法確認(3号)、職員等への損害賠償・不当利得返還の請求を当該団体の執行機関等に求める請求(4号)の4つである。
公の施設(244条)は住民の福祉を増進する目的でその利用に供する施設であり、普通地方公共団体は正当な理由がない限り住民の利用を拒んではならず、利用について不当な差別的取扱いをしてはならない。公の施設の設置・管理に関する事項は条例で定め(244条の2第1項)、条例の定めるところにより、法人その他の団体を指定管理者として管理を行わせることができる(同条3項)。指定管理者には株式会社等の民間事業者もなり得るが、指定は条例の定める手続により議会の議決を経て行う。条例で定める重要な公の施設の廃止等には出席議員の3分の2以上の同意を要する場合がある(244条の2第2項)。このほか、議会の定例会・臨時会、通年会期制(102条の2)、議員に認められる調査権(100条調査権)、外部監査契約制度も基礎知識として押さえておくべきである。
この章の問題から3問
地方税の賦課徴収に関する条例についても、選挙権を有する者の総数の50分の1以上の連署をもって、その制定又は改廃を請求することができる。
正解 ×(誤り)
誤り。地方自治法74条1項括弧書により、地方税の賦課徴収並びに分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例は、制定改廃の直接請求の対象から除外されている。減税請求の濫発を防ぐ趣旨である。署名数1/50・請求先が長である点は正しく、除外対象の有無がひっかけどころ。
議会が普通地方公共団体の長の不信任の議決を行うには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意がなければならない。
正解 ○(正しい)
正しい。地方自治法178条3項。最初の不信任議決は「3分の2以上出席・4分の3以上同意」。なお長が議会を解散した後の議会で再び不信任を議決する場合は「3分の2以上出席・過半数の同意」に緩和される点もあわせて押さえる。
住民監査請求は、当該普通地方公共団体において選挙権を有する者でなければ行うことができない。
正解 ×(誤り)
誤り。住民監査請求(地方自治法242条)は「住民」であれば足り、選挙権の有無・国籍を問わず、一人でも、また法人でも行うことができる。選挙権を有する者の総数の50分の1以上の連署を要するのは事務監査請求(75条)であり、両者の混同を狙ったひっかけ。
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