確率と確率分布(条件付き確率・二項分布・正規分布)
条件付き確率P(A|B)=P(A∩B)/P(B)を土台にベイズの定理で事後確率を求め、二項分布B(n,p)の期待値np・分散np(1−p)と正規分布の標準化Z=(X−μ)/σによる確率計算を確実に使い分けることが本章攻略の核心である。
統計検定2級は日本統計学会公式認定のもと一般財団法人統計質保証推進協会が実施するCBT方式の試験であり、公式の出題範囲表では本章の内容は「確率(加法定理・条件付き確率・独立性・ベイズの定理)」「確率変数(期待値・分散)」「確率分布(二項分布・正規分布)」に対応する頻出領域である。土台となるのは事象と確率の基本法則である。標本空間Ωの部分集合として事象を定め、確率は0以上1以下、全事象の確率は1という公理を満たす。加法定理はP(A∪B)=P(A)+P(B)−P(A∩B)であり、AとBが互いに排反(A∩B=∅)のときに限りP(A∪B)=P(A)+P(B)と単純化できる。余事象の公式P(Aの余事象)=1−P(A)は「少なくとも1回起こる確率」を求める問題で必須であり、本試験では直接計算より余事象経由の方が速い設問が繰り返し出題されている。
条件付き確率はP(B)>0のときP(A|B)=P(A∩B)/P(B)で定義される。分母が「条件として与えられた事象の確率」である点が最重要で、P(A|B)とP(B|A)は一般に一致しない。この定義を変形した乗法定理P(A∩B)=P(B)P(A|B)=P(A)P(B|A)は、くじ引きや非復元抽出のように試行が連鎖する問題で用いる。事象の独立はP(A∩B)=P(A)P(B)で定義され、P(B)>0のもとではP(A|B)=P(A)、すなわち「Bが起きたという情報がAの確率を変えない」ことと同値である。本試験で最も多いひっかけは排反と独立の混同である。P(A)>0かつP(B)>0のとき、排反ならばP(A∩B)=0となりP(A)P(B)>0と一致しないため、排反な事象は決して独立にならない。この一点だけで正誤問題が構成される出題実績がある。
ベイズの定理は条件付き確率の応用として2級の定番であり、公式の出題範囲表にも「ベイズの定理」として明記されている。標本空間を互いに排反な事象A1,…,Akで分割するとき、全確率の公式P(B)=ΣP(Ai)P(B|Ai)が成り立ち、ベイズの定理はP(Ai|B)=P(Ai)P(B|Ai)/ΣP(Aj)P(B|Aj)と表される。典型例は検査問題である。有病率1%、感度(罹患者が陽性となる確率)90%、特異度(非罹患者が陰性となる確率)90%のとき、陽性者が実際に罹患している確率(陽性的中率)は0.01×0.9/(0.01×0.9+0.99×0.1)=0.009/0.108≒8.3%にすぎない。事前確率(有病率)が小さいと、精度の高い検査でも事後確率は直感より遥かに低くなる。この「事前確率の無視」を突く数値問題は繰り返し出題されており、樹形図か分割表を書いて機械的に計算する習慣をつけるべきである。
確率変数Xの期待値は離散型でE[X]=Σx·P(X=x)(連続型は積分)、分散はV[X]=E[(X−μ)²]=E[X²]−(E[X])²で定義され、標準偏差は分散の正の平方根である。試験で確実に使えるべき性質は一次変換の公式であり、E[aX+b]=aE[X]+b、V[aX+b]=a²V[X]が成り立つ。分散では定数bが消え、係数aは2乗されて外に出る点が問われる。和については、期待値の線形性E[X+Y]=E[X]+E[Y]が独立性の有無にかかわらず常に成立する一方、分散の加法性V[X+Y]=V[X]+V[Y]はXとYが独立(厳密には無相関)のときに限って成立する。この非対称性は正誤問題の頻出論点である。一般にはV[X+Y]=V[X]+V[Y]+2Cov(X,Y)であり、共分散の符号によって和の分散は単純和より大きくも小さくもなる。
結果が「成功か失敗か」の2通りで、成功確率pが一定、各回が独立という条件を満たす試行をベルヌーイ試行という。これをn回繰り返したときの成功回数Xが従う分布が二項分布B(n,p)であり、確率関数はP(X=k)=nCk·p^k·(1−p)^(n−k)(k=0,1,…,n)である。期待値と分散はE[X]=np、V[X]=np(1−p)であり、これは暗記必須である。分散np(1−p)はnを固定するとp=0.5のとき最大となる。計算問題では「ちょうどk回」はそのまま確率関数へ、「少なくとも1回」は余事象を用いて1−(1−p)^nへ持ち込むのが定石である。例えば公正なサイコロを3回投げて1の目がちょうど1回出る確率は3C1×(1/6)×(5/6)²=75/216≒0.347であり、組合せの係数3C1を掛け忘れると25/216≒0.116という誤答肢に誘導される。係数の掛け忘れは最も多い失点源である。
正規分布N(μ,σ²)は平均μに関して左右対称な釣鐘型の連続分布であり、平均・中央値・最頻値が一致し、歪度は0である。分散σ²が大きいほど山は低く裾が広がる。最重要の操作は標準化であり、XがN(μ,σ²)に従うときZ=(X−μ)/σは標準正規分布N(0,1)に従う。CBT本試験では標準正規分布表(上側確率の表)が提供されるため、任意の正規分布に関する確率は標準化して表を引くだけで求められる。頻出の数値は暗記しておくと速い。μ±1σに約68.3%、μ±2σに約95.4%、μ±3σに約99.7%が含まれ、上側5%点はz=1.645、上側2.5%点はz=1.96である。特にz=1.96は後続章の区間推定・仮説検定でも使う統計学全体の要であり、「μ±1σの範囲に約95%」とすり替える誤り選択肢が正誤問題の定番となっている。
正規分布には再生性があり、独立にXがN(μ1,σ1²)、YがN(μ2,σ2²)に従うならばX+YはN(μ1+μ2,σ1²+σ2²)に従う。差X−Yの場合も分散は引き算ではなく足し算でσ1²+σ2²となる点が頻出のひっかけである。また、nが大きいとき二項分布B(n,p)は正規分布N(np,np(1−p))で近似できる(ド・モアブル=ラプラスの定理、中心極限定理の特別な場合)。実用上の目安はnp≥5かつn(1−p)≥5であり、離散分布を連続分布で近似する際は連続修正(±0.5の補正)を施すと精度が上がる。この近似は次章で扱う標本比率の標本分布や母比率の区間推定・検定の理論的根拠そのものであるから、「二項分布の平均npと分散np(1−p)をそのまま正規分布のパラメータに引き継ぐ」という構造を確実に押さえておくことが、本章のみならず後続章の得点にも直結する。
この章の問題から3問
P(A)>0かつP(B)>0である事象AとBが互いに排反であるとき、AとBは独立である。
正解 ×(誤り)
誤り。独立の定義はP(A∩B)=P(A)P(B)である(統計検定2級出題範囲表「事象の独立性」)。排反ならP(A∩B)=0だが、P(A)>0かつP(B)>0よりP(A)P(B)>0なので定義式は成立しない。つまり排反な事象は(両方の確率が正なら)決して独立にならない。「排反=無関係=独立」という直感のすり替えが本問のひっかけである。
二項分布B(n,p)の分散はnp(1−p)で与えられ、nを固定するとp=0.5のとき分散は最大になる。
正解 ○(正しい)
正しい。二項分布B(n,p)ではE[X]=np、V[X]=np(1−p)が公式である(出題範囲表「二項分布」)。p(1−p)は2次関数でp=0.5のとき最大値0.25をとるため、分散はp=0.5で最大となる。「表裏が五分五分のときが最も結果がばらつく」と対応づけて覚えるとよい。
正規分布N(μ,σ²)において、区間[μ−σ, μ+σ]に含まれる確率は約95%である。
正解 ×(誤り)
誤り。μ±1σに含まれる確率は約68.3%である。約95%となるのはμ±1.96σ(μ±2σなら約95.4%)であり、標準正規分布表でP(Z>1.96)=0.025、両側で0.05を確認できる。1σと1.96σ(2σ)のすり替えは本試験の正誤問題で定番のひっかけであり、68.3%・95.4%・99.7%の3点セットで暗記しておく。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。