標本分布と推定(中心極限定理・信頼区間)
標本平均は平均μ・分散σ²/nに従い、nが大きければ中心極限定理により母集団分布の形によらず正規近似できる。母平均の信頼区間はσ既知ならz、未知なら自由度n−1のt分布で構成し、幅は√nに反比例する。
推測統計の目的は、母集団の未知の特性値(母数)を、そこから無作為抽出した標本に基づいて推し量ることである。母平均μ・母分散σ²・母比率pが母数の代表であり、これに対して標本から計算される標本平均X̄や標本分散などを統計量と呼ぶ。統計量は抽出のたびに値が変わる確率変数であり、その従う確率分布を標本分布という。統計検定2級の出題範囲表(日本統計学会公式シラバス)では「標本分布」が独立の項目として明記され、ほぼ毎回出題される中核論点である。基本公式は、互いに独立に同一の分布(平均μ、分散σ²)に従うX₁,…,Xₙの標本平均X̄について、E[X̄]=μ、V(X̄)=σ²/nが成り立つことである。したがってX̄の標準偏差はσ/√nとなり、これを標準誤差と呼ぶ。標本サイズを大きくするほど標本平均のばらつきは小さくなるが、その縮小は1/nではなく1/√nに比例する点が正誤問題で繰り返し問われる。
大数の法則は、nを大きくすると標本平均X̄が母平均μに確率収束することを保証する定理である。一方、中心極限定理は分布の形にまで踏み込む定理であり、母集団分布が正規分布でなくても、母平均μ・母分散σ²が有限でありさえすれば、nが十分大きいとき標本平均X̄の分布は近似的に正規分布N(μ, σ²/n)に従うと述べる。実戦では標準化した Z=(X̄−μ)/(σ/√n) が近似的に標準正規分布N(0,1)に従うという形で確率計算に用いる。二項分布B(n,p)の正規近似(ド・モアブル=ラプラスの定理)は中心極限定理の特別な場合であり、np(1−p)が十分大きいときB(n,p)をN(np, np(1−p))で近似できる。本試験では「母集団分布の形状によらず成立する」という核心を突いた正誤問題と、正規近似を使った確率計算問題の両形式で出題実績がある。
正規母集団N(μ,σ²)からの無作為標本については、近似ではなく厳密な標本分布が導かれる。第一に、標本平均X̄はnの大小によらず厳密にN(μ,σ²/n)に従う。第二に、不偏分散s²を用いた統計量 (n−1)s²/σ² は自由度n−1のカイ二乗分布χ²(n−1)に従い、母分散の区間推定・検定に用いられる。第三に、母分散が未知の場合の T=(X̄−μ)/(s/√n) は自由度n−1のt分布に従う。t分布は0を中心に左右対称で、標準正規分布より裾が重く(厚く)、自由度が大きくなるにつれて標準正規分布に近づくという性質が正誤問題の定番である。第四に、独立な2つの正規母集団の不偏分散の比から作られる統計量はF分布に従い、等分散性の検討に使われる。これらχ²分布・t分布・F分布は2級出題範囲表に明記されており、「どの統計量がどの分布に従い、自由度はいくつか」という対応関係の正確な暗記が得点に直結する。
点推定では、母数を1つの値で推定する推定量の「良さ」の基準が問われる。不偏性とは推定量の期待値が母数に一致する性質(E[θ̂]=θ)、一致性とはnを大きくすると推定量が母数に確率収束する性質、有効性とは不偏推定量の中で分散が最小である性質をいい、いずれも公式出題範囲表の「点推定」の項に含まれる用語である。最重要の具体例が分散の推定である。偏差平方和をnで割った標本分散は母分散σ²を系統的に過小評価するため不偏推定量にならない。不偏性を満たすのは偏差平方和をn−1で割った不偏分散 s²=Σ(Xᵢ−X̄)²/(n−1) であり、E[s²]=σ²が成り立つ。標本平均X̄は母平均μの不偏かつ一致推定量であり、母比率の推定では標本比率p̂が同じ役割を果たす。「nで割るかn−1で割るか」および「不偏性・一致性・有効性の定義の入れ替え」は正誤問題の頻出ひっかけであり、各定義を自分の言葉で説明できる水準まで仕上げておきたい。
区間推定は、母数を含むと考えられる区間を信頼係数付きで示す方法である。正規母集団の母平均μの信頼区間は、母分散σ²が既知なら X̄±z(α/2)·σ/√n で構成し、信頼係数95%ならz=1.96、99%ならz=2.576を用いる。母分散が未知なら不偏分散から求めたsで置き換え、X̄±t(α/2)(n−1)·s/√n と自由度n−1のt分布のパーセント点を使う。解釈上の最重要注意として、「母平均がこの区間に入る確率が95%」という言い方は誤りである。母平均は未知だが固定された定数であり、確率的に変動するのは標本から作られる区間の側である。同じ手続きで区間を多数回構成すれば約95%が母平均を含む、というのが正しい頻度論的解釈であり、この解釈自体が正誤問題として出題実績がある。区間の幅は、信頼係数を上げると広がり、nを大きくすると√nに反比例して狭まる。幅を半分にするにはnを4倍にする必要がある。
母比率pの区間推定は、標本比率p̂の標本分布を中心極限定理で正規近似して構成する。nが大きいときp̂は近似的にN(p, p(1−p)/n)に従うから、95%信頼区間は p̂±1.96√(p̂(1−p̂)/n) となる。ここから派生するのが必要標本サイズの設計問題で、信頼区間の半幅(推定の誤差)をE以下に抑えたければ n≧(z(α/2)/E)²·p(1−p) を満たす最小の整数(小数点以下切り上げ)を取る。事前情報がない場合はp(1−p)が最大となるp=0.5を代入するのが安全側の標準手順であり、世論調査の設計問題として本試験で繰り返し出題されている。CBT方式の本試験では標準正規分布表・t分布のパーセント点が問題画面で与えられるため、z=1.96と2.576の使い分け、t分布の自由度の取り方(n−1)、電卓での平方根計算までを一連の手順として体に染み込ませておくことが、60点の合格ラインを確実に超える近道である。
この章の問題から3問
母集団分布が正規分布でなくても、母平均μと母分散σ²が有限であれば、標本サイズnが十分大きいとき標本平均X̄の分布は近似的に正規分布N(μ, σ²/n)に従う。
正解 ○(正しい)
正しい。中心極限定理(統計検定2級出題範囲表「標本分布」)は、母集団分布の形状によらず、平均と分散が有限でありさえすれば、nが大きいときX̄が近似的にN(μ, σ²/n)に従うことを保証する。「母集団が正規分布であること」は条件に含まれない点が本定理の核心であり、逆に正規母集団ならnの大小によらずX̄は厳密に正規分布に従う。
標本平均X̄の標準偏差(標準誤差)は、標本サイズnに反比例して小さくなる。
正解 ×(誤り)
誤り。V(X̄)=σ²/nより標準誤差はσ/√nであり、nの平方根に反比例する。「分散がnに反比例」は正しいが「標準偏差がnに反比例」は誤りで、ここがひっかけ。標準誤差を1/10にするにはnを100倍にする必要がある(出題範囲表「標本分布」の基本公式)。
母平均μの95%信頼区間が[48.0, 52.0]と求められたとき、「μがこの区間に含まれる確率は95%である」と解釈するのが正しい。
正解 ×(誤り)
誤り。頻度論の枠組みではμは未知だが固定された定数であり、確率変数ではない。確率的に変動するのは標本ごとに変わる区間の側である。正しい解釈は「同じ手続きで信頼区間を多数回構成すれば、そのうち約95%が母平均を含む」であり、実現した特定の区間にμが入る確率が0.95という意味ではない。この解釈問題は2級の正誤問題での出題実績がある定番のひっかけである。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。