リスク管理(生命保険・損害保険と税務)
保険金・給付金の課税は契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組合せで相続税・所得税(一時所得)・贈与税に分かれ、死亡保険金の非課税「500万円×法定相続人の数」と各種保険料控除の限度額が最頻出である。
保険契約のルールは保険法と保険業法の二本立てで規律される。保険法は契約当事者間の権利義務を定める私法であり、告知義務は保険者(保険会社)が告知を求めた事項にのみ答えればよい「質問応答義務」とされる。告知義務違反による保険者の解除権は、保険者が解除原因を知った時から1か月間行使しないとき、または契約締結から5年(約款では2年とするのが一般的)を経過したときに消滅する。一方、保険業法は保険会社を監督する行政法規であり、契約申込みの撤回(クーリング・オフ)は、申込日またはクーリング・オフに関する書面の交付日のいずれか遅い日から8日以内に、書面または電磁的記録により行うことができる。保険会社の健全性を示すソルベンシー・マージン比率は200%が監督上の目安とされ、200%を下回ると金融庁による早期是正措置の対象となる。破綻時のセーフティネットとして、生命保険契約者保護機構は原則として責任準備金等の90%(高予定利率契約を除く)まで補償する。なお、少額短期保険業者の契約は保護機構の補償対象外であり、その保険料は生命保険料控除・地震保険料控除の対象にもならない。
生命保険の保険料は、予定死亡率・予定利率・予定事業費率の3つの予定基礎率に基づき、大数の法則と収支相等の原則によって算定される。予定利率が高いほど保険料は安くなる。剰余金は死差益・利差益・費差益の三利源から生じ、契約者配当として分配される。主な商品では、定期保険は保障が一定期間で満期保険金がなく保険料が割安だが、更新型は更新時の年齢・保険料率で再計算されるため保険料が上がる(健康状態にかかわらず告知なしで更新できる)。終身保険は保障が一生涯続き解約返戻金が逓増する。養老保険は死亡保険金と同額の満期保険金がある。収入保障保険は死亡後に年金形式で保険金が支払われ、一時金で受け取ると年金受取総額より少なくなる。個人年金保険には確定年金・有期年金・終身年金があり、変額個人年金保険は特別勘定で運用され年金原資は変動するが、死亡給付金には一般に基本保険金額の最低保証がある。必要保障額は遺族の支出総額から遺族の収入見込額を差し引いて求め、通常は末子誕生時に最大となり、子の成長とともに逓減する。
生命保険料控除(所得税法76条)は契約締結日で新旧制度に分かれる。2012年1月1日以後の契約(新制度)は一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3区分で、控除限度額は所得税で各4万円(合計12万円)、住民税で各2万8,000円(合計7万円)である。2011年12月31日以前の契約(旧制度)は一般・個人年金の2区分で、所得税各5万円(合計10万円)、住民税各3万5,000円。新制度では傷害特約・災害割増特約など身体の傷害のみに基因して保険金が支払われる特約の保険料は控除対象外となる点が頻出である。個人年金保険料控除の適用には税制適格特約の付加が必要で、①年金受取人が契約者またはその配偶者で、かつ被保険者と同一であること、②保険料払込期間が10年以上であること、③確定年金・有期年金の場合は年金受取開始が60歳以降かつ受取期間10年以上であること、の要件をすべて満たさなければならない。要件を満たさない個人年金保険や変額個人年金保険の保険料は、一般生命保険料控除の対象となる。
保険金の課税関係は契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の組合せで決まる。死亡保険金は、①契約者=被保険者の場合は相続税の課税対象(相続税法3条のみなし相続財産。受取人が相続人であれば「500万円×法定相続人の数」の非課税金額を適用、相続税法12条。法定相続人の数には相続放棄者も含める)、②契約者=受取人の場合は一時所得として所得税、③三者がすべて異なる場合は贈与税の課税対象となる。満期保険金・解約返戻金は、契約者=受取人なら一時所得((収入金額-払込保険料総額-特別控除50万円)×1/2を総合課税)、契約者≠受取人なら贈与税。ただし保険期間5年以下(5年以内の解約を含む)の一時払養老保険等は金融類似商品として20.315%の源泉分離課税となる。入院給付金・手術給付金・通院給付金、高度障害保険金、特定疾病保険金、リビング・ニーズ特約保険金など身体の傷害に基因して本人・配偶者・直系血族等が受け取る給付金は非課税である(所得税法施行令30条)。ただしリビング・ニーズ特約保険金の未使用残額は相続税の課税対象となる。
法人契約の経理処理は、2019年の法人税基本通達改正(9-3-5、9-3-5の2)により、保険期間3年以上の定期保険・第三分野保険は「最高解約返戻率」で区分される。①50%以下は支払保険料の全額を損金算入、②50%超70%以下は保険期間の前半4割の期間において40%を資産計上・60%を損金算入(被保険者1人あたり年換算保険料30万円以下なら全額損金)、③70%超85%以下は同期間に60%を資産計上、④85%超は原則として当初10年間、支払保険料×最高解約返戻率×90%を資産計上する。養老保険の福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)は、契約者=法人、被保険者=全役員・従業員(普遍的加入)、死亡保険金受取人=被保険者の遺族、満期保険金受取人=法人とすることで、支払保険料の2分の1を資産計上、2分の1を福利厚生費として損金算入できる。総合福祉団体定期保険は法人を契約者とする1年更新の定期保険で保険料は全額損金算入できるが、加入には被保険者本人の同意が必要である。
損害保険は実際の損害額をてん補する実損てん補が原則で、利得禁止の原則が働く。住宅用の火災保険では、保険金額が保険価額の80%以上であれば実損てん補となり、80%未満の場合は比例てん補(保険金=損害額×保険金額÷(保険価額×80%))となる。失火責任法により、軽過失による失火で隣家に延焼させても不法行為の損害賠償責任を負わない(重過失・故意は除く)が、借家人が借家を焼失させた場合の家主に対する債務不履行に基づく賠償責任は免れない。火災保険では地震・噴火・津波を原因とする損害は補償されず、地震保険の付帯が必要である。地震保険(地震保険に関する法律)は単独では加入できず、保険金額は主契約の30〜50%の範囲内で建物5,000万円・家財1,000万円が上限。損害区分に応じて全損100%・大半損60%・小半損30%・一部損5%(いずれも保険金額に対する割合、時価が限度)が支払われる。保険料は建物の構造と所在地で決まり、免震建築物割引(50%)など4種類の割引があるが重複適用はできない。
自動車保険では、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険、自動車損害賠償保障法)が原動機付自転車を含むすべての自動車に加入義務のある強制保険で、補償対象は対人賠償のみである。支払限度額は被害者1人あたり死亡3,000万円・後遺障害最高4,000万円・傷害120万円。任意保険の対人・対物賠償保険は、被害者救済の観点から無免許運転や酒酔い運転による事故でも保険金が支払われる。人身傷害補償保険は自己の過失割合にかかわらず実際の損害額が支払われる。傷害保険は「急激かつ偶然な外来の事故」による傷害を補償し、普通傷害保険では細菌性食中毒や地震・噴火・津波による傷害は対象外である。国内旅行傷害保険は細菌性食中毒を補償するが地震等は対象外、海外旅行(傷害)保険は細菌性食中毒も海外滞在中の地震等による傷害も補償する。個人賠償責任保険は日常生活の賠償事故を補償し、同居の親族等も被保険者に含まれるが、業務遂行中の事故・自動車事故・他人からの受託物の損壊は対象外である。
損害保険の税務では、地震保険料控除として払込保険料の全額(所得税で最高5万円)、住民税では2分の1(最高2万5,000円)を所得控除できる。店舗併用住宅は居住用部分の割合に応じて按分する(居住用が90%以上なら全額が対象)。個人が受け取る火災保険金・車両保険金などの損害保険金や、対人・対物賠償により被害者が受け取る損害賠償金は非課税である。一方、傷害保険の死亡保険金や積立型保険の満期返戻金は、生命保険と同様に契約形態に応じて相続税・所得税(一時所得)・贈与税の課税対象となる。個人事業主が事業用店舗に付した火災保険の保険料は必要経費に算入できるが、事業主自身を被保険者とする傷害保険の保険料は必要経費にならない。法人が受け取った火災保険金で代替の固定資産を取得した場合は圧縮記帳が認められ、課税の繰延べができる。なお、法人が受け取る保険金は原則として益金に算入される。
この章の問題から3問
国内で事業を行う生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構により、原則として破綻時点の死亡保険金額の90%まで補償される。
正解 ×(誤り)
誤り。生命保険契約者保護機構(保険業法に基づく)の補償対象は「死亡保険金額」ではなく「責任準備金等の90%」まで(高予定利率契約を除く)である。保険金額の90%と混同させるのが定番のひっかけ。なお、銀行窓口で加入した生命保険契約も補償対象に含まれる。
地震保険の保険金額は、主契約である火災保険の保険金額の30%から50%の範囲内で設定し、建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限となる。
正解 ○(正しい)
正しい。地震保険に関する法律に基づく地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯して契約する。保険金額は主契約の30〜50%の範囲内で、建物5,000万円・家財1,000万円が上限である。
契約者(=保険料負担者)を夫、満期保険金受取人を妻とする養老保険において、妻が受け取る満期保険金は、一時所得として所得税の課税対象となる。
正解 ×(誤り)
誤り。契約者(保険料負担者)と受取人が異なるため、相続税法5条のみなし贈与財産として贈与税の課税対象となる。一時所得として所得税の課税対象となるのは契約者=受取人の場合であり、この組合せの違いを問うのが定番のひっかけ。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。