相続・事業承継(相続税・贈与税・財産評価)
基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を軸に、法定相続人の数え方(放棄・養子)、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例、相続時精算課税の110万円基礎控除など改正論点の適用要件を正確に使い分けることが得点の核心である。
相続は被相続人の死亡によって開始する(民法882条)。法定相続人は常に相続人となる配偶者と、第1順位の子、第2順位の直系尊属、第3順位の兄弟姉妹であり、法定相続分は配偶者と子の場合が各2分の1、配偶者と直系尊属の場合が3分の2と3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合が4分の3と4分の1である(民法900条)。相続開始以前に子が死亡している場合は孫が代襲相続するが、兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りである点が頻出する(民法889条2項)。相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなければならない(民法915条)。限定承認は共同相続人の全員が共同して家庭裁判所に申述する必要があるが(民法923条)、放棄は各相続人が単独で行うことができる。放棄をした者は初めから相続人でなかったものとみなされ、その者に代襲相続は生じない。
遺言は満15歳以上で意思能力があれば作成でき(民法961条)、普通方式には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類がある。自筆証書遺言は全文・日付・氏名の自書と押印が要件だが、2019年施行の民法改正により、添付する財産目録に限りパソコン等での作成や通帳の写しの添付が認められた(民法968条2項・毎葉に署名押印が必要)。公正証書遺言と、法務局における遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要である。遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められ、その割合は原則として遺留分算定の基礎となる財産の2分の1(直系尊属のみが相続人である場合は3分の1)である(民法1042条)。2019年施行の改正により従来の遺留分減殺請求は金銭債権化され、遺留分侵害額請求権となった。この請求権は、遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年、相続開始の時から10年を経過すると消滅する(民法1048条)。
相続税の計算は3段階で行う。第1段階では各人の課税価格を算定する。生命保険金・死亡退職金はみなし相続財産として課税対象となるが、相続人が受け取ったものは各々「500万円×法定相続人の数」まで非課税である(相続税法12条)。被相続人の債務や葬式費用は控除でき、相続開始前7年以内の暦年課税による贈与財産は生前贈与加算の対象となる(令和5年度税制改正で加算期間が3年から7年へ段階的に延長され、延長された4年分については総額100万円まで加算されない)。第2段階では、課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」(相続税法15条)を差し引き、課税遺産総額を法定相続人が法定相続分どおりに取得したものと仮定して相続税の総額を算出する。このときの「法定相続人の数」は相続放棄がなかったものとして数え、養子は実子がいる場合1人まで、いない場合2人までしか算入できない。第3段階で相続税の総額を実際の取得割合で按分し、各人の納付税額を確定する。申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内である。
算出税額の調整として、まず配偶者に対する相続税額の軽減がある(相続税法19条の2)。配偶者が実際に取得した財産のうち、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない。婚姻期間の要件はなく、また納付税額がゼロになる場合でも適用には相続税の申告書の提出が必要である。一方、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)および配偶者以外の者が相続または遺贈により財産を取得した場合、その者の算出税額にその2割相当額が加算される(相続税法18条)。兄弟姉妹や、代襲相続人ではない孫養子は2割加算の対象となる点が定番のひっかけである。このほか税額控除として、未成年者控除(18歳に達するまでの年数×10万円)、障害者控除(85歳に達するまでの年数×10万円・特別障害者は20万円)、相次相続控除、生前贈与加算に対応する贈与税額控除が設けられている。
贈与税は暦年課税が原則で、基礎控除は受贈者1人につき年110万円、税率は直系尊属から18歳以上の者への贈与に係る特例贈与財産と一般贈与財産とで異なる超過累進税率である。相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択でき、累計2,500万円の特別控除と一律20%の税率が適用される(相続税法21条の9以下・21条の13)。令和5年度税制改正により、2024年1月1日以後の贈与からは特別控除とは別枠で年110万円の基礎控除が新設され、基礎控除以下の贈与は申告不要で、相続財産にも加算されない。いったん選択すると同じ贈与者について暦年課税に戻ることはできない。また、婚姻期間20年以上の配偶者から居住用不動産またはその取得資金の贈与を受けた場合に基礎控除とは別に2,000万円まで控除できる贈与税の配偶者控除(相続税法21条の6)、直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の非課税、教育資金の一括贈与の非課税(1,500万円限度)などの特例がある。贈与税の申告期限は翌年2月1日から3月15日である。
財産評価は国税庁の財産評価基本通達に基づいて行う。宅地は、市街地的形態を形成する地域では路線価方式(路線価×奥行価格補正率等×地積)、それ以外の地域では倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)により評価する。利用区分に応じた評価では、貸宅地=自用地評価額×(1-借地権割合)、貸家建付地=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)となる(財産評価基本通達25・26)。家屋は固定資産税評価額×1.0で評価し、貸家は固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)である。小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(租税特別措置法69条の4)では、特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額、特定事業用宅地等は400㎡まで80%減額、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減額される。特定居住用と特定事業用は完全併用が可能で合計730㎡まで適用できるが、貸付事業用宅地等を含めて適用する場合には限度面積の調整計算が必要となる。
上場株式は、課税時期の最終価格と、課税時期の属する月・その前月・その前々月の各月の最終価格の月平均額の計4つの価額のうち、最も低い価額で評価する(財産評価基本通達169)。取引相場のない株式は、同族株主等が取得する場合は会社規模(大会社・中会社・小会社)に応じて類似業種比準方式・純資産価額方式またはその併用方式で評価し、同族株主以外の少数株主等が取得する場合は配当還元方式による。事業承継対策では、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)を前提とした非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度(事業承継税制)が重要で、特例措置では対象株式数の上限なく納税額の100%が猶予される。同法にはこのほか遺留分に関する民法特例(除外合意・固定合意)が定められており、自社株評価引下げ、金庫株(自己株式の取得)の活用、生命保険による納税資金の準備と併せて出題される。
この章の問題から3問
相続人が複数いる場合、限定承認は、共同相続人の全員が共同して家庭裁判所に申述しなければならない。
正解 ○(正しい)
適切。限定承認は共同相続人の全員が共同してのみ行うことができる(民法923条)。相続放棄は各相続人が単独で申述できる(民法938条)ため、両者を入れ替えるひっかけが頻出する。いずれも熟慮期間は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条)。
「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けるためには、被相続人との婚姻期間が20年以上でなければならない。
正解 ×(誤り)
不適切。配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)に婚姻期間の要件はなく、法律上の配偶者であれば適用でき、1億6,000万円と法定相続分相当額のいずれか多い金額まで相続税がかからない。「婚姻期間20年以上」は贈与税の配偶者控除(相続税法21条の6)の要件であり、両制度の混同を狙ったひっかけである。
自筆証書遺言を作成する場合、これに添付する財産目録についても、遺言者がその全文を自書しなければならない。
正解 ×(誤り)
不適切。2019年1月13日施行の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録はパソコンでの作成や通帳の写し等の添付が認められた(民法968条2項)。ただし目録の毎葉に署名・押印が必要であり、遺言の本文・日付・氏名は依然として自書が要件である点がひっかけどころ。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。