タックスプランニング(所得税)
所得は10種類に区分して計算し、損益通算できる損失は不動産・事業・山林・譲渡の4つのみ。退職所得・一時所得の「控除後×1/2」と、医療費控除は確定申告必要という点が最頻出論点である。
所得税は、個人が1暦年(1月1日〜12月31日)に得た所得に対して課される国税であり、納税者自身が所得と税額を計算して申告する申告納税方式を採る(所得税法)。納税義務者は居住者と非居住者に区分され、国内に住所を有し、または現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を居住者という。居住者(非永住者を除く)は国内外を問わず全ての所得に課税される無制限納税義務を負い、非居住者は国内源泉所得のみに課税される。また、所得税には非課税所得が定められており、遺族基礎年金・遺族厚生年金、障害年金、雇用保険の失業等給付、通勤手当(月15万円まで)、生活用動産(1個または1組の価額が30万円を超える宝石・貴金属・書画・骨とう等を除く)の譲渡による所得などは課税されない(所得税法9条1項9号、所得税法施行令25条)。つまり生活に通常必要な家具・衣服等の譲渡益は非課税だが、1個(1組)30万円超の貴金属・宝石等の譲渡益は課税対象となる。本試験では居住者の定義と非課税所得の具体例が繰り返し出題されている。
所得税法は所得をその性質に応じて10種類に区分する。利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得・雑所得である。給与所得は「給与収入金額−給与所得控除額」で計算され、給与所得控除額には下限(最低保障額。令和7年度税制改正で55万円から65万円に引き上げ)と上限(収入850万円超で195万円)がある。退職所得は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算され(所得税法30条)、退職所得控除額は勤続20年以下の部分が1年当たり40万円(最低80万円)、20年超の部分が1年当たり70万円である。勤続年数の1年未満の端数は1年に切り上げる。なお短期退職手当等(勤続5年以下)には300万円超部分に2分の1課税を適用しない特例がある点も近年の改正論点である。
課税方法には、各種所得を合算して超過累進税率(5%〜45%の7段階)を適用する総合課税と、他の所得と分離して課税する分離課税がある。利子所得(預貯金利子)は源泉分離課税(20.315%)、土地建物等の譲渡所得・株式等の譲渡所得は申告分離課税、退職所得・山林所得も分離課税である。損益通算(所得税法69条)は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得(頭文字「富士山上(ふじさんじょう)」)の損失に限り他の所得と通算できる。ただし不動産所得の損失のうち土地取得に係る借入金利子部分、生活に通常必要でない資産(別荘・ゴルフ会員権等)の譲渡損失、株式等・土地建物等の譲渡損失(申告分離内での通算は可)は損益通算の対象外である。一時所得・雑所得の損失は損益通算できない。この論点は○×・択一とも最頻出である。
所得控除は課税標準から差し引く人的・物的控除であり15種類ある。基礎控除は令和7年度税制改正により原則58万円に引き上げられた(合計所得金額に応じた上乗せ特例あり・2,350万円超は逓減)。配偶者控除は納税者本人の合計所得金額1,000万円以下が要件で最高38万円(老人控除対象配偶者は最高48万円)。扶養控除は一般38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)63万円、老人扶養親族48万円(同居老親等58万円)である。医療費控除(所得税法73条)は「支払医療費−保険金等で補填される金額−10万円(総所得金額等が200万円未満はその5%)」で最高200万円、年末調整では適用できず確定申告が必要である。社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除は支払額全額が控除でき、生命保険料控除は新契約で一般・介護医療・個人年金の各枠最高4万円(合計12万円)が限度である。
税額控除は算出税額から直接差し引く控除で、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)と配当控除が代表例である。住宅ローン控除は返済期間10年以上の借入れ、住宅の床面積50㎡以上(合計所得1,000万円以下の者は40㎡以上の特例)、合計所得金額2,000万円以下などが要件で、年末借入金残高(認定住宅等の区分に応じた限度額あり)に0.7%を乗じた額を控除する。給与所得者も適用初年度は確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で適用できる。配当控除は総合課税を選択した配当所得について原則10%(課税総所得金額1,000万円超の部分は5%)を控除するもので、申告分離課税や申告不要制度を選択した場合には適用できない。所得控除が「所得から引く」のに対し税額控除は「税額から引く」ため減税効果の性質が異なる点を整理して覚えることが重要である。
確定申告は原則として翌年2月16日から3月15日までに行う。給与所得者は年末調整で課税関係が完結するのが原則だが、給与収入2,000万円超の者、給与所得・退職所得以外の所得が20万円超の者、2か所以上から給与を受ける者などは確定申告が必要である。青色申告は不動産所得・事業所得・山林所得のある者が税務署長の承認を受けて行うことができ、青色申告特別控除(正規の簿記の原則により記帳し貸借対照表等を添付すれば55万円、さらにe-Tax申告または電子帳簿保存を行えば65万円、それ以外は10万円)、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の繰越控除(3年間)・繰戻還付などの特典がある。新規に青色申告をする場合は原則としてその年の3月15日まで(1月16日以後開業の場合は開業日から2か月以内)に承認申請書を提出しなければならない。
この章の問題から3問
所得税において、国内に住所を有する居住者(非永住者を除く)は、国内で生じた所得に加え、国外で生じた所得についても課税対象となる。
正解 ○(正しい)
正しい。所得税法上、居住者(非永住者以外)は国内外の全ての所得に課税される(全世界所得課税)。国内源泉所得のみ課税されるのは非居住者である。居住者と非居住者の課税範囲の入替えがひっかけの定番。
遺族厚生年金や障害基礎年金として受け取る年金は、所得税の課税対象となる。
正解 ×(誤り)
誤り。遺族年金・障害年金は非課税所得である(所得税法9条、国民年金法・厚生年金保険法の非課税規定)。課税対象となる公的年金は老齢基礎年金・老齢厚生年金等(雑所得)であり、「遺族・障害」と「老齢」の区別がひっかけポイント。
上場株式を譲渡したことによる譲渡損失の金額は、給与所得の金額と損益通算することができる。
正解 ×(誤り)
誤り。上場株式等の譲渡損失は申告分離課税の枠内でのみ通算可能で、給与所得など総合課税の所得とは損益通算できない(租税特別措置法37条の11〔上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例〕)。通算できる相手は上場株式等の譲渡益や申告分離課税を選択した上場株式等の配当等に限られる。損益通算できるのは不動産・事業・山林・(総合課税の)譲渡所得の損失(所得税法69条)。「譲渡所得だから通算可」と誤答させるひっかけ。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。