金融商品取引法と協会定款・諸規則
外務員は登録を受けなければ職務を行えず、所属業者に代わり一切の裁判外の行為を行う権限を有するとみなされる(金商法64条の3)。適合性の原則(40条)と損失補塡の禁止(39条・事後補塡も違反)が最頻出である。
金融商品取引法(金商法)は、企業内容等の開示制度の整備、金融商品取引業を行う者に関する必要な事項の規定、金融商品取引所の適切な運営の確保等により、有価証券の発行及び金融商品等の取引等を公正にし、有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金融商品等の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする(金商法1条)。試験では「投資者の保護」と「国民経済の健全な発展」の両方が目的である点が問われる。有価証券の定義は金商法2条に置かれ、国債証券・地方債証券・社債券・株券・投資信託の受益証券等の第一項有価証券と、信託受益権や集団投資スキーム(ファンド)持分等の第二項有価証券(みなし有価証券)に大別される。なお、通貨、約束手形、小切手は金商法上の有価証券に該当しない点がひっかけとして頻出である。
金融商品取引業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ営むことができず(金商法29条)、業務内容により第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、投資運用業の4類型に区分される(28条)。株券等の売買やその委託の媒介、有価証券の元引受け、店頭デリバティブ取引等を業として行うのは第一種金融商品取引業である。外務員とは、金融商品取引業者等の役員又は使用人のうち、その業者のために有価証券の売買その他の取引等の勧誘等の行為を行う者をいい、外務員の職務を行うには外務員登録原簿への登録を受けなければならない(金商法64条)。この登録事務は内閣総理大臣から日本証券業協会に委任されている(64条の7)。外務員は、その所属する金融商品取引業者等に代わって、有価証券の売買その他の取引等に関し一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなされる(64条の3)。したがって外務員が権限を越えて行った行為であっても、その効果は直接業者に帰属し業者は責任を免れない(相手方が悪意の場合を除く)。
金商法は業者等の行為規制を詳細に定める。広告等の規制(37条)では、利益の見込み等について著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させるような表示が禁止される。契約締結前には手数料・元本損失のおそれ等の重要事項を顧客に提供する義務があり(37条の3)、令和5年改正により従来の書面交付義務は契約締結前の情報提供義務へと改められ、電磁的方法による提供も可能となった。禁止行為(38条)には、虚偽告知、断定的判断の提供(不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて勧誘する行為)等があり、断定的判断の提供は結果的に顧客が利益を得たか否かを問わず違反となる。適合性の原則(40条1号)は、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者保護に欠けることのないように業務を行わなければならないとするもので、本試験の最頻出論点の一つである。
損失補塡は、事前の約束(損失保証)と事後の補塡のいずれも禁止され(金商法39条)、顧客側が補塡を要求し、又は受領する行為にも罰則が科される。ただし誤認勧誘や事務処理ミス等の「事故」に起因する損失を、内閣総理大臣の確認を受ける等の手続を経て賠償する場合は禁止の対象外である。不公正取引の規制としては、不正行為の包括的禁止(157条)、風説の流布・偽計の禁止(158条)、仮装売買・馴合売買等の相場操縦の禁止(159条)、会社関係者等によるインサイダー取引の禁止(166条・167条)があり、インサイダー規制は会社関係者でなくなった後1年以内の者や第一次情報受領者にも及ぶ。重要事実の公表後の取引は規制されず、平成25年改正で未公表の重要事実の伝達・取引推奨行為も規制対象となった(167条の2)。開示制度では、募集・売出し時の有価証券届出書と目論見書、継続開示としての有価証券報告書(事業年度経過後3ヶ月以内)が柱であり、令和5年改正(令和6年4月施行)で上場会社の四半期報告書は廃止され半期報告書に一本化された。株券等保有割合が5%を超えた者に課される大量保有報告書の提出義務(5日以内・5%ルール、27条の23)も頻出である。
日本証券業協会は金商法上の認可金融商品取引業協会であり、協会員は会員(金融商品取引業者)、特別会員(登録金融機関)及び特定業務会員に区分される。外務員資格には一種外務員・二種外務員等があり、一種外務員はすべての外務員の職務を行うことができるのに対し、二種外務員は信用取引(既に成立している建玉の残高減少を目的とする売買等を除く)や有価証券関連デリバティブ取引等の勧誘・受託を行うことができず、取り扱える商品が現物の有価証券等に限定される(協会「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」)。また、外務員登録を受けた者は、登録日を基準として5年目ごとの日の属する年度内に外務員資格更新研修を受講しなければならず、所定期間内に受講を修了しない場合は外務員の職務を行うことが禁止され、外務員資格の効力が停止する。協会員の役職員には、名義貸しの禁止、仮名取引と知りながらの受託の禁止、自己の計算による信用取引・有価証券関連デリバティブ取引等の禁止(従業員規則)など、法令より踏み込んだ自主規制が課される。
協会の「協会員の投資勧誘、顧客管理等に関する規則」は実務直結の頻出分野である。協会員は、顧客の氏名・住所・職業・投資目的・資産の状況・投資経験の有無等を記載した顧客カードを整備し、適合性の原則を踏まえた投資勧誘を行わなければならない。信用取引や有価証券関連デリバティブ取引等については取引開始基準を定め、その基準に適合した顧客との間で契約を締結する。高齢顧客への勧誘による販売については、協会の「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」に基づき、社内規則で勧誘留意商品を定め、役席者の事前承認等の慎重な手続を踏むことが求められる。また協会員は、顧客との債権債務の残高等を記載した照合通知書を顧客の区分に応じ定期的(原則1年に1回以上)に交付し、その作成は営業部門から独立した検査、監査又は管理を担当する部門が行う。上場会社の役員等インサイダー情報に接し得る顧客については内部者登録カードを備え付ける。これらの自主規制は自己責任原則と投資者保護を支える仕組みとして体系的に出題される。
この章の問題から3問
外務員が所属する金融商品取引業者に代わって行った有価証券の売買の勧誘等の行為の効果は、当該外務員個人に帰属し、所属する金融商品取引業者には及ばない。
正解 ×(誤り)
誤り。金商法64条の3により、外務員はその所属する金融商品取引業者等に代わって、有価証券の売買その他の取引等に関し一切の裁判外の行為を行う権限を有するものとみなされる。したがって行為の効果は直接業者に帰属し、外務員が権限を越えて行った行為でも業者は責任を免れない(相手方が悪意であった場合を除く)。「個人に帰属」の部分がひっかけである。
あらかじめ損失補塡の約束をしていなければ、顧客に生じた損失を事後的に補塡しても金融商品取引法違反とはならない。
正解 ×(誤り)
誤り。金商法39条は、事前の損失保証・利回り保証の約束だけでなく、事後の損失補塡や利益追加のための財産上の利益提供も禁止している。また補塡を要求・約束させ、又は受領した顧客側にも罰則が科される。例外は誤認勧誘・事務処理ミス等の「事故」による損失について内閣総理大臣の確認を受ける等の手続を経て賠償する場合のみである。「事前の約束がなければ可」がひっかけ。
二種外務員は、原則として、顧客に対し信用取引の勧誘を行うことも、その注文を受託することもできない。
正解 ○(正しい)
正しい。日本証券業協会「協会員の外務員の資格、登録等に関する規則」により、二種外務員が行える職務は現物の有価証券等に限定され、信用取引(既に成立している建玉の残高減少を目的とする売買等の例外を除く)や有価証券関連デリバティブ取引等の勧誘・受託はできない。一種外務員はすべての外務員の職務を行うことができる。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。