計算問題総合演習(利回り・損益・証拠金)
計算問題は五肢択一1問10点の得点源である。利回りは「年当たり収益÷投下元本」、損益は「価格差×倍率×数量」、信用・証拠金は「当初30%・最低30万円・維持20%」——この3構造の正確な使い分けが合否を分ける。
証券外務員一種試験は、○×方式70問(各2点)と五肢択一方式30問(各10点)の計100問・440点満点で実施され、7割(308点)以上の得点で合格となるCBT方式の試験である。合否を分けるのは配点の大きい五肢択一であり、その中核を占めるのが計算問題である。出題の典型は、債券の利回り計算、株式の投資指標(PER・PBR・ROE等)、信用取引の委託保証金、先物・オプションの損益および証拠金であり、いずれも日本証券業協会「外務員必携」に掲載された公式に基づいて機械的に解ける。計算問題は1問10点と配点が重く、失点すれば○×5問分に相当する痛手となる一方、確実に得点できれば合格ラインへの寄与が極めて大きい。本章では、本試験での出題実績が高い計算論点を「利回り」「損益」「証拠金」の3系統に整理し、公式の導出構造と典型的なひっかけを併せて総合演習する。
債券の利回り計算は単利ベースで行うのが原則であり、4種類の利回りを区別することが第一歩である。①直接利回り=表面利率÷購入価格×100、②応募者利回り=〔表面利率+(額面100円-発行価格)÷償還年限〕÷発行価格×100、③最終利回り=〔表面利率+(額面100円-購入価格)÷残存年数〕÷購入価格×100、④所有期間利回り=〔表面利率+(売却価格-購入価格)÷所有期間〕÷購入価格×100である。構造はすべて共通で、分子が「1年当たりの収益(クーポン+償還差損益または売買損益の年割り)」、分母が「投下元本(取得価格)」である。頻出のひっかけは分母を額面100円と誤らせるものであり、応募者利回りは発行価格、最終利回り・所有期間利回りは購入価格が分母であることを徹底する。また、オーバーパー(100円超)で購入した債券は償還差損が生じるため、最終利回りが直接利回りより低くなる点も○×形式で問われる。
株式の投資指標は、1株当たり当期純利益(EPS)=当期純利益÷発行済株式数、1株当たり純資産(BPS)=純資産÷発行済株式数を土台に、PER(株価収益率)=株価÷EPS(倍)、PBR(株価純資産倍率)=株価÷BPS(倍)、ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本×100(%)、配当利回り=1株当たり年間配当金÷株価×100(%)、配当性向=配当金総額÷当期純利益×100(%)で計算する。PERとPBRは「倍」、ROE・配当利回り・配当性向は「%」で答える点で単位のひっかけが作られる。また、PBR=PER×ROEという関係式は、三指標のうち二つから残りを逆算させる出題に使われる。配当利回りの分母は株価(時価)であり額面や純資産ではないこと、配当性向の分母は当期純利益であることを混同させる選択肢が定番である。数値は割り切れる設定で出題されることが多く、電卓操作よりも公式の分子・分母の取り違え防止が得点を分ける。
信用取引の委託保証金は、金融商品取引法第161条の2および同条に基づく内閣府令(金融商品取引法第百六十一条の二に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令)により規制され、取引所の受託契約準則上、約定価額の30%以上かつ最低30万円を、約定日から起算して3営業日目の日の正午までに差し入れなければならない。保証金は有価証券で代用でき、代用掛目は上場株券で時価の80%が基準である。建玉に評価損が生じた場合や代用有価証券の値下がりにより、受入保証金から評価損等を控除した実質的な保証金の維持率が約定価額の20%を下回ると、追加保証金(追証)の差入れが必要となる。計算問題では「約定価額×30%」で必要保証金を求める基本形のほか、代用有価証券の掛目適用後価額の算出、評価損控除後の維持率判定が出題される。当初の30%・維持の20%・最低額30万円という三つの数値の入替えが最頻出のひっかけである。
先物取引の損益は、買建てなら「(転売価格-買付価格)×取引単位×枚数」で計算する。大阪取引所の日経225先物(ラージ)の取引単位は日経平均株価の1,000倍、日経225miniは100倍、日経225マイクロ先物は10倍であり、TOPIX先物(ラージ)は指数の10,000倍、ミニTOPIX先物は1,000倍である。損益計算は倍率さえ正確なら単純な掛け算にすぎない。証拠金については、従来のSPAN方式に代わり、2023年11月から株式会社日本証券クリアリング機構(JSCC)がVaR方式(ヒストリカル・シミュレーション方式等)により所要証拠金を算出している。委託証拠金は有価証券による代用が認められるが、計算上生じた現金不足額は現金で差し入れる必要がある。計算問題では、売建て・買建ての別を取り違えさせる符号のひっかけ、ラージとミニの倍率(1,000倍と100倍)の混同が典型であり、枚数の掛け忘れにも注意を要する。
オプション取引の損益は、プレミアム(オプション料)の授受と権利行使価値から求める。コールの買い手の損益分岐点は「権利行使価格+支払プレミアム」、プットの買い手は「権利行使価格-支払プレミアム」であり、売り手の損益分岐点も同一価格である(損益の符号が逆になるだけである)。日経225オプションの取引単位はプレミアムの1,000倍である。買い手の最大損失は支払ったプレミアムに限定され、売り手の最大利益は受け取ったプレミアムに限定される一方、コールの売り手の損失は理論上無限大、プットの売り手の損失は権利行使価格からプレミアムを控除した額まで拡大しうる。プレミアムは本質的価値(イン・ザ・マネー部分)と時間的価値の合計で構成される。計算自体は「SQ値または転売価格と権利行使価格の差にプレミアムを加減して1,000倍する」だけだが、コールとプットで分岐点の加減が逆になる点、買い手と売り手で損益の符号が逆になる点が定番のひっかけである。
転換社債型新株予約権付社債(CB)では、パリティ価格=株価÷転換価額×100(円)、乖離率=(CB価格-パリティ価格)÷パリティ価格×100(%)が頻出である。パリティの分子・分母を逆にした誤答肢が必ず用意されるため、「株価が転換価額を上回ればパリティは100円超」という検算習慣をつけたい。総仕上げとして、本章の計算問題は①利回り系(分子=年当たり収益、分母=投下元本)、②損益系(価格差×倍率×数量)、③証拠金・保証金系(約定価額×所要率と最低額・維持率の判定)の3構造に還元できる。公式を丸暗記するのではなく、この構造で捉えれば初見の数値でも対応できる。本試験では計算過程は採点されず答えのみが問われるため、単位(円・倍・%)と端数処理の指示を最後に確認してから解答を確定することが、10点問題の取りこぼしを防ぐ最終チェックとなる。
この章の問題から3問
債券の最終利回りを計算する際の分母は、額面(100円)ではなく購入価格である。
正解 ○(正しい)
正しい。最終利回り=〔表面利率+(額面100円-購入価格)÷残存年数〕÷購入価格×100(外務員必携の単利利回り公式)であり、分母は投下元本である購入価格を用いる。分母を額面100円と取り違えさせるのが定番のひっかけである。なお、応募者利回りの分母は発行価格である。
信用取引において、委託保証金の維持率が約定価額の30%を下回った場合、顧客は追加保証金を差し入れなければならない。
正解 ×(誤り)
誤り。追加保証金(追証)が必要となるのは、受入保証金の維持率が約定価額の20%を下回った場合である(取引所の受託契約準則)。30%は新規建て時に必要な当初委託保証金率(金融商品取引法第161条の2に基づく内閣府令・取引所規則)であり、「当初30%」と「維持20%」を入れ替えるのが典型的なひっかけである。
日経225先物(ラージ)の取引単位は日経平均株価の1,000倍であり、日経225miniの取引単位は100倍である。
正解 ○(正しい)
正しい。大阪取引所の日経225先物(ラージ)は指数の1,000倍、日経225miniは100倍、日経225マイクロ先物は10倍である。損益計算問題ではラージとミニの倍率の混同が最も多い誤りであるため、倍率はセットで記憶する。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。