信用取引と先物・オプション取引
委託保証金は約定価額の30%以上・最低30万円(金商法161条の2)で維持率20%割れは追証、オプションは買い手の損失限定・売り手の損失無限定——この数値基準と損益の非対称性が本章の得点源である。
信用取引とは、顧客が金融商品取引業者から買付代金または売付株券の貸付けを受けて行う売買であり、手元資金を超える取引や保有しない株式の売付け(いわゆる空売り)を可能にする。信用取引には制度信用取引と一般信用取引の二類型があり、両者の区別は本試験の最頻出論点である。制度信用取引は、弁済期限(最長6ヶ月)、品貸料、配当落ち・株式分割等の権利処理の方法がすべて金融商品取引所の規則により一律に定められ、対象銘柄も取引所が選定する制度信用銘柄に限られる。このうち証券金融会社(金融商品取引法第156条の24に基づく免許法人)からの貸借取引により資金・株券を調達できる銘柄が貸借銘柄である。これに対して一般信用取引は、弁済期限や金利等の条件を顧客と証券会社との合意により自由に決定でき、品貸料(逆日歩)は発生しない。「制度」と「一般」の条件を入れ替えた正誤問題が繰り返し出題されており、どの条件が取引所規則で固定されるかを正確に区別しておく必要がある。
信用取引を行う顧客は、金融商品取引法第161条の2および同条に基づく内閣府令により、約定価額の30%以上かつ最低30万円の委託保証金を、約定日から起算して3営業日目の日の正午までに差し入れなければならない。委託保証金は全額を有価証券で代用することができ、代用価格は取引所の受託契約準則が定める掛目(国債は時価の95%、上場株式は80%など)により評価される。建玉に評価損が生じた場合、その評価損は受入保証金から控除して実質的な保証金の額を計算し、委託保証金の維持率が建玉の約定価額の20%を下回ったときは、不足額が生じた日から起算して3営業日目の日の正午までに追加保証金(追証)を差し入れなければならない。当初の30%(法令)と維持の20%(取引所規則)の混同を誘う出題が多く、また追証額の計算(維持率20%の回復に必要な額)は計算問題として頻出であるため、分母が建玉の約定価額である点まで確実に押さえること。
先物取引とは、将来の一定の期日(限月)に、特定の商品を現時点で取り決めた価格で売買することを契約する取引であり、期日前に反対売買(転売・買戻し)を行えば差金の授受のみで決済を終えることができる。大阪取引所には日経225先物・TOPIX先物などの株価指数先物と、長期国債先物などの債券先物が上場されている。株価指数先物の最終決済は、取引最終日(SQ算出日の前営業日)の翌営業日に構成銘柄の始値に基づき算出される特別清算数値(SQ)による差金決済に限られる。一方、長期国債先物の取引対象は利率年6%・償還期限10年に設定された「長期国債標準物」という架空の債券であり、最終決済では残存期間7年以上11年未満の受渡適格銘柄による現物の受渡しが行われる点で株価指数先物と異なる。取引にあたっては証拠金の差入れが必要であり、証拠金所要額の計算方式は従来のSPAN方式から現在はVaR方式に移行している。建玉は日々値洗いされ、相場変動に応じた差金の授受が行われる。
先物取引の利用形態はヘッジ取引・裁定取引・スペキュレーション取引の三つに大別される。現物を保有する者が価格下落に備えて先物を売り建てるのが売りヘッジ、将来の購入予定に備えてあらかじめ先物を買い建てるのが買いヘッジである。株価指数先物の理論価格は「現物価格+現物価格×(短期金利−配当利回り)×満期までの期間」で表され、通常は短期金利が配当利回りを上回るため、理論上は先物価格が現物価格より高くなる。先物価格と現物価格の差はベーシスと呼ばれる。市場の先物価格が理論価格から乖離したとき、割高な方を売り、割安な方を買い、両者が理論価格へ収れんする過程で利益を得るのが裁定取引(アービトラージ)であり、先物が割高であれば「先物売り・現物買い」の裁定買いが入る。ヘッジの売買方向や裁定取引の仕組みを問う五肢択一が出題されるため、機械的な暗記ではなく金利と配当利回りの関係から自力で導けるようにしておくことが得点の近道である。
オプション取引とは、特定の商品(原資産)を将来の一定の期日または期間内に、あらかじめ定めた価格(権利行使価格)で「買う権利」(コール・オプション)または「売る権利」(プット・オプション)を売買する取引である。買い手はプレミアム(オプション料)を支払って権利を取得し、権利行使するか放棄するかを選択できるため、最大損失は支払ったプレミアムに限定される。一方、売り手は受け取ったプレミアムが最大利益である反面、買い手の権利行使に応じる義務を負うため、コールの売りの損失は理論上無限定となる(プットの売りは権利行使価格からプレミアムを控除した額が最大損失)。この損益の非対称性ゆえに、証拠金の差入れが必要となるのは義務を負う売り手のみである。損益分岐点は、コールの買いが「権利行使価格+プレミアム」、プットの買いが「権利行使価格−プレミアム」であり、満期損益図とあわせてほぼ毎回出題される基本論点である。
プレミアムは本質的価値と時間的価値の合計で構成される。本質的価値とは直ちに権利行使した場合に得られる利益であり、コールでは「原資産価格−権利行使価格」、プットでは「権利行使価格−原資産価格」(いずれも正の値となる場合)で表される。本質的価値を持つ状態をイン・ザ・マネー(ITM)、原資産価格と権利行使価格が等しい状態をアット・ザ・マネー(ATM)、本質的価値がゼロの状態をアウト・オブ・ザ・マネー(OTM)と呼ぶ。プレミアムの変動要因は五つで整理する。①原資産価格の上昇はコール上昇・プット下落要因、②権利行使価格が高いほどコールは低く・プットは高い、③残存期間が長いほど時間的価値が大きくコール・プットとも高い、④ボラティリティ(価格変動率)の上昇はコール・プットともに上昇要因、⑤短期金利の上昇はコール上昇・プット下落要因である。ボラティリティと残存期間が「コール・プットの双方を上昇させる」点は、片方だけ動かす誤り選択肢として最も多用されるひっかけである。
大阪取引所の日経225オプション取引は、権利行使が満期日に限られるヨーロピアン・タイプであり、最終決済は特別清算数値(SQ)に基づく差金決済で行われる。取引最終日は各限月のSQ算出日(原則として各月の第2金曜日)の前営業日である。買い手はプレミアムを支払うのみで証拠金は不要であり、証拠金(VaR方式で計算)を差し入れるのは売り手のみである点も再確認しておきたい。なお、店頭デリバティブ取引のうち個人顧客を相手方とする店頭外国為替証拠金取引(店頭FX)については、金融商品取引業等に関する内閣府令により想定元本の4%以上の証拠金の預託受入れが義務付けられ(レバレッジは実質25倍まで)、ロスカット制度の整備も求められている。また、店頭金融先物取引等については、勧誘の要請をしていない顧客に対する訪問・電話による勧誘が禁止される(金融商品取引法第38条の不招請勧誘の禁止)。取引所デリバティブと店頭デリバティブとで規制の枠組みが異なる点を整理して本章の総仕上げとする。
この章の問題から3問
制度信用取引における弁済期限や品貸料、権利処理などの条件は、顧客と証券会社との間の合意により自由に決定することができる。
正解 ×(誤り)
誤り。制度信用取引の弁済期限(最長6ヶ月)・品貸料・権利処理の方法は、金融商品取引所の規則により一律に定められている。合意により自由に決定できるのは一般信用取引であり、「制度」と「一般」の条件を入れ替えるのが本問のひっかけである。
信用取引の委託保証金は約定価額の30%以上かつ最低30万円が必要であり、その全額を国債や上場株式などの有価証券で代用することができる。
正解 ○(正しい)
正しい。金融商品取引法第161条の2および同条に基づく内閣府令により、委託保証金は約定価額の30%以上かつ最低30万円とされる。委託保証金は全額を代用有価証券で差し入れることができ、代用価格は取引所の受託契約準則が定める掛目(国債95%、上場株式80%など)で評価される。「全額代用は不可」と誤解させるのがひっかけどころである。
他の条件が同一であれば、原資産価格のボラティリティ(価格変動率)が上昇すると、コール・オプションのプレミアムは上昇し、プット・オプションのプレミアムは下落する。
正解 ×(誤り)
誤り。ボラティリティの上昇は原資産価格が大きく変動する可能性を高め、コール・プット双方の期待価値を高めるため、両者のプレミアムはともに上昇する。買い手の損失がプレミアムに限定される非対称な損益構造上、上下どちらの変動拡大もプレミアムの押し上げ要因となる。「片方だけ下落」とするのが定番のひっかけである。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。