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管理会計論② 管理会計・意思決定

意思決定会計の核心は関連原価概念である。埋没原価は常に無関連、機会原価は支出なしでも関連原価として考慮し、差額収益と差額原価の比較で判断する。この一点で計算・理論とも大半の出題を貫ける。

管理会計は財務会計と異なり法規制に服さず、経営管理者の意思決定と業績管理に資する内部報告会計である。ただし短答式では「原価計算基準」(昭和37年・大蔵省企業会計審議会)の理解が前提となる。基準一は原価計算の目的として財務諸表作成目的・価格計算目的・原価管理目的・予算管理目的・基本計画設定目的の5つを掲げており、このうち原価管理目的以降が管理会計領域に対応する。また基準二が定める「原価計算制度」は財務会計機構と有機的に結合して常時継続的に行われる計算体系であり、特殊原価調査(差額原価・機会原価等を用いる随時的計算)は原価計算制度の枠外である点が繰り返し出題される。両者の区別、すなわち制度としての原価計算に含まれるか否かの判定は短答の定番論点である。

CVP分析(損益分岐点分析)は業績管理会計の基礎である。貢献利益=売上高−変動費、損益分岐点売上高=固定費÷貢献利益率、目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)÷貢献利益率が基本公式となる。安全余裕率=(現在売上高−損益分岐点売上高)÷現在売上高、経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益であり、経営レバレッジ係数と安全余裕率は逆数の関係にある。多品種製品のCVPではセールス・ミックス一定を仮定して加重平均貢献利益率を用いる。固変分解の方法として勘定科目精査法・高低点法・スキャッター・チャート法・最小自乗法があり、高低点法は正常操業圏内の最高操業度と最低操業度の2点のみを用いる点に注意する。全部原価計算と直接原価計算の営業利益の差額は、期末・期首棚卸資産に含まれる固定製造間接費の差として計算できることも頻出である。

直接原価計算は変動製造原価のみを製品原価とし、固定製造間接費を期間原価として処理する方法である。原価計算基準は全部原価計算を制度上の原則とするため、直接原価計算により算定した営業利益を外部報告に用いるには固定費調整が必要となる。固定費調整は「全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益+期末棚卸資産に含まれる固定製造間接費−期首棚卸資産に含まれる固定製造間接費」で行う。生産量が販売量を上回る(在庫増加)場合は全部原価計算の利益が大きく、販売量が生産量を上回る(在庫減少)場合は直接原価計算の利益が大きい。全部原価計算では生産量の増加自体が単位当たり固定費を低下させ利益を増やすため、過剰生産のインセンティブが生じるという批判も理論問題として問われる。

業務的意思決定では、関連原価(relevant cost・意思決定によって変化する未来原価)と無関連原価の区別が核心となる。なお、代替案間で異なる原価を差額原価(differential cost)といい、意思決定上の関連原価と実質的に同義に用いられる。過去に支出済みで回収不能な埋没原価(sunk cost)は常に無関連であり、機会原価(opportunity cost・断念した代替案から得られたはずの最大の利益)は支出を伴わなくても関連原価として考慮する。典型論点は、(1)特別注文の受諾可否=遊休能力がある場合は増分収益が増分原価(変動費+特別注文固有の固定費)を上回れば受諾、(2)自製か購入かの選択=回避可能固定費と遊休能力の代替的用途(機会原価)を考慮、(3)セグメント廃止の可否=当該セグメントの貢献利益と回避可能固定費の比較、(4)追加加工の可否=分離点後の増分収益と増分原価の比較(連産品の結合原価は埋没原価)、である。制約条件が1つある場合は制約単位当たり貢献利益が最大の製品を優先する。

構造的意思決定(設備投資の経済性計算)では貨幣の時間価値を考慮する方法としない方法を区別する。正味現在価値法(NPV法)は将来キャッシュ・フローを資本コスト率で割り引いた現在価値合計から投資額を控除し、正なら採択とする。内部利益率法(IRR法)はNPVがゼロとなる割引率を求め、資本コスト率を上回れば採択する。NPV法とIRR法は相互排他的投資案の順位付けで結論が相違し得るが、再投資率の仮定(NPV法は資本コスト率、IRR法は内部利益率)の観点からNPV法が理論的に優れるとされる。回収期間法と投下資本利益率法(会計的利益率法)は時間価値を考慮しない簡便法である。キャッシュ・フロー計算では、税引後CF=税引前CF×(1−税率)+減価償却費×税率(タックス・シールド)が基本であり、減価償却費自体は非現金支出費用のため直接のCFではない点が頻出のひっかけである。

標準原価計算と予算管理も管理会計の柱である。原価計算基準四〇以下が定める標準原価計算では、直接材料費差異を価格差異と数量差異に、直接労務費差異を賃率差異と時間差異に、製造間接費差異を予算差異・能率差異・操業度差異に分析する。価格差異=(標準価格−実際価格)×実際消費量として、価格変動の影響を数量差異に混入させない計算方式が採られる。基準四(一)2は標準原価として「現実的標準原価又は正常原価」を原則とし、理想標準原価は制度上の標準原価としては認められない。予算管理では変動予算(公式法変動予算)に基づく差異分析、責任会計との結合が問われる。事業部制の業績評価では、事業部長の評価には管理可能利益、事業部自体の評価には事業部貢献利益(セグメント・マージン)を用いるという管理可能性原則の適用が重要である。

事業部の業績評価指標として、投下資本利益率(ROI=利益÷投下資本)と残余利益(RI=利益−投下資本×資本コスト率)がある。ROIは比率のため規模の異なる事業部間の比較に適するが、事業部ROIが全社目標を上回る限り、資本コストを上回る投資案でも事業部ROIを低下させる案を棄却する部分最適化(過少投資)の危険がある。RIは金額指標でありこの問題を回避できるが規模の影響を受ける。関連指標として経済的付加価値(EVA)も理論問題で登場する。内部振替価格には市価基準・原価基準(全部原価・変動費)・交渉価格基準があり、完全競争市場が存在する場合は市価基準が全社的最適と事業部自律性を両立させる。近年の短答では活動基準原価計算(ABC)・品質原価計算(予防原価・評価原価・内部失敗原価・外部失敗原価)・ライフサイクル・コスティング・原価企画も理論肢として頻出であり、定義の正確な暗記が求められる。

この章の問題から3問

特殊原価調査は、財務会計機構と有機的に結合して常時継続的に行われる計算体系であり、原価計算制度に含まれる。

正解 ×(誤り)

原価計算基準二により、原価計算制度は財務会計機構と有機的に結合し常時継続的に行われる計算体系である。特殊原価調査は差額原価・機会原価等を用いて随時断片的に行われるものであり、原価計算制度の枠外である。前半の定義は原価計算制度のものであり、それを特殊原価調査に当てはめた点がひっかけ。

埋没原価は過去の支出額であるため、いかなる意思決定においても関連原価とはならない。

正解 ○(正しい)

埋没原価(sunk cost)は既に発生し回収不能な原価であり、いずれの代替案を選択しても変化しないため、意思決定上は常に無関連原価である。関連原価は「未来の原価」かつ「代替案間で差異のある原価」という2要件を満たすものに限られる。

経営レバレッジ係数は貢献利益を営業利益で除して求められ、安全余裕率の逆数に等しい。

正解 ○(正しい)

経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益。営業利益=貢献利益×安全余裕率の関係が成り立つため、経営レバレッジ係数=1÷安全余裕率となり、両者は逆数の関係にある。固定費の割合が高い企業ほど経営レバレッジ係数は大きくなる。

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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。