人体の構造と機能(解剖生理の頻出領域)
刺激伝導系は洞房結節→房室結節→ヒス束→プルキンエ線維の順に興奮が伝わり、自律神経では交感神経と副交感神経が臓器を拮抗的に二重支配する——この二軸が人体機能で最頻出の要である。
循環器系は本試験で頻出の領域であり、まず心臓の構造を押さえる必要がある。心臓は右心房・右心室・左心房・左心室の4つの腔からなり、右心系と左心系は心房中隔・心室中隔で隔てられる。心臓が規則的に拍動する基盤が刺激伝導系であり、興奮は右心房にある洞房結節(洞結節)から発生する。洞房結節は本来のペースメーカー(歩調取り)として機能し、成人の安静時心拍数はおよそ60〜100回/分である。興奮は洞房結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順に伝わり、心室全体へ広がる。房室結節での伝導遅延により心房収縮と心室収縮に時間差が生まれ、効率的な血液拍出が可能となる。看護師国家試験出題基準『人体の構造と機能』では、この伝導順序と各部位の役割が繰り返し問われている。
血液循環は体循環(大循環)と肺循環(小循環)に大別される。体循環では左心室から大動脈を経て全身へ動脈血が送られ、全身の組織で酸素と二酸化炭素を交換したのち、静脈血が上・下大静脈を通って右心房へ戻る。肺循環では右心室から肺動脈を通って血液が肺へ送られ、肺胞でガス交換を受けて動脈血となり、肺静脈を経て左心房へ戻る。ここで重要なのは、肺動脈には静脈血が、肺静脈には動脈血が流れるという点であり、血管名と血液の性状が一致しない例として頻出のひっかけとなる。心臓自体を養う血管は冠状動脈(冠動脈)であり、大動脈起始部(バルサルバ洞)から左右に分岐する。これらの循環経路は必修問題でも問われる基本事項である。
呼吸器系では、鼻腔・咽頭・喉頭・気管・気管支を経て空気が肺胞に達し、肺胞と毛細血管の間でガス交換が行われる。肺胞で行われる酸素と二酸化炭素の交換を外呼吸(肺呼吸)、組織細胞と血液の間の交換を内呼吸(組織呼吸)とよぶ。呼吸運動の中枢は延髄にあり、橋とともに呼吸リズムを調節する。健常者では血液中の二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇が最も強い呼吸刺激となり、化学受容器を介して換気が促進される。成人の安静時呼吸数は1分間におよそ12〜20回である。横隔膜と外肋間筋が収縮すると胸腔が拡大し、胸腔内圧が陰圧化して吸気が生じる。呼吸中枢の局在は必修レベルで問われるため確実に押さえたい。
神経系は中枢神経系(脳・脊髄)と末梢神経系(脳神経・脊髄神経・自律神経)に分けられる。脳神経は左右12対あり、嗅神経(I)から舌下神経(XII)まで番号が付されている。自律神経系は交感神経と副交感神経からなり、多くの臓器を二重支配して拮抗的に働く。交感神経が優位になると瞳孔散大・心拍数増加・気管支拡張・消化管運動抑制が起こり、いわゆる『闘争か逃走か』の反応を示す。逆に副交感神経が優位になると縮瞳・心拍数減少・気管支収縮・消化管運動亢進が生じる。副交感神経の代表が迷走神経(第X脳神経)であり、頸部から胸腹部の広い範囲の臓器を支配する。交感神経・副交感神経の作用の対比は本試験の定番問題である。
腎・泌尿器系では、尿を生成する機能単位であるネフロン(腎単位)が中心となる。ネフロンは腎小体(糸球体とボウマン嚢)と尿細管から構成され、片側の腎臓に約100万個存在する。糸球体では血液が濾過されて原尿がつくられ、1日に約150Lに及ぶが、尿細管と集合管で大部分の水分・電解質・グルコースが再吸収され、最終的な尿量は1日約1.5Lとなる。腎臓は尿生成に加え、血圧調節に関わるレニンの分泌、赤血球産生を促すエリスロポエチンの分泌、ビタミンDの活性化(活性型ビタミンD産生)といった内分泌機能も担う。糸球体濾過と再吸収の流れ、腎臓の内分泌機能は一般・状況設定問題で頻出である。
内分泌系では、ホルモンによる血糖とカルシウムの調節が頻出である。血糖を下げるホルモンは膵臓ランゲルハンス島のB(β)細胞から分泌されるインスリンのみであり、血糖を上げるホルモンにはα(A)細胞のグルカゴン、副腎髄質のアドレナリン、副腎皮質のコルチゾール、成長ホルモンなど複数がある。血中カルシウム濃度は、上昇させる副甲状腺ホルモン(パラソルモン)と、低下させる甲状腺のカルシトニンが拮抗して調節する。甲状腺ホルモン(T3・T4)は全身の代謝を亢進させる。ホルモンの産生部位と標的・作用の対応関係は、正確に暗記しておくべき定番事項である。
消化器系では、三大栄養素が各消化酵素により分解される。糖質は唾液・膵液のアミラーゼ、タンパク質は胃のペプシンや膵液のトリプシン、脂質は膵液のリパーゼによって消化され、脂質の消化は肝臓で生成される胆汁による乳化で促進される。消化管で吸収された栄養素は門脈を通って肝臓へ運ばれる。肝臓はアルブミンなど血漿タンパクの合成、グリコーゲンの貯蔵、アンモニアから尿素への変換(解毒)、胆汁生成など多彩な機能をもつ。血液は赤血球・白血球・血小板と血漿からなり、赤血球はヘモグロビンにより酸素を運搬し、寿命は約120日で主に脾臓で破壊される。動脈血のpHは約7.35〜7.45の弱アルカリ性に維持される。これらは一般問題で広く問われる。
この章の問題から3問
心臓の刺激伝導系において、興奮は房室結節から発生する。
正解 ×(誤り)
刺激伝導系の興奮は右心房にある洞房結節(洞結節)から発生し、洞房結節→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ線維の順に伝わる。したがって『房室結節から発生する』は誤り。洞房結節が正常な歩調取り(ペースメーカー)である。
肺動脈には動脈血が流れている。
正解 ×(誤り)
肺循環では右心室から出た静脈血が肺動脈を通って肺へ運ばれ、肺胞でガス交換を受けて動脈血となり肺静脈から左心房へ戻る。よって肺動脈を流れるのは静脈血であり、本記述は誤り。血管名(動脈/静脈)と血液の性状が一致しない代表的なひっかけである。
動脈血の正常なpHは約7.35〜7.45であり、弱アルカリ性に保たれている。
正解 ○(正しい)
動脈血の正常pHは約7.35〜7.45で、中性(7.0)よりわずかに高い弱アルカリ性に維持されている。呼吸によるCO2排出と腎臓によるHCO3−(重炭酸イオン)調節が酸塩基平衡を保っている。よって本記述は正しい。
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