成人・老年看護学(周術期・慢性期・認知症ケア)
術後合併症は発生時期で整理し、慢性期はセルフケア確立が目標、認知症は中核症状とBPSDの区別とパーソン・センタード・ケアが柱で、2024年施行の認知症基本法まで押さえることが合格の鍵である。
周術期とは手術を中心とした術前・術中・術後の一連の時期を指す。術前の全身状態の評価には米国麻酔科学会が定めたASA分類(ASA-PS)が広く用いられ、麻酔・手術のリスク指標となる。術前オリエンテーションでは、深呼吸・咳嗽・排痰訓練やインセンティブ・スパイロメトリの使用法を指導し、患者自身が術後合併症を予防する主体的行動を獲得できるよう支援する。喫煙は気道分泌物の増加と創傷治癒の遅延を招くため、術前の禁煙指導が重要である。また臥床に伴う深部静脈血栓症を予防する目的で、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法の適用を術前から計画する。栄養状態・服薬(抗凝固薬の休薬)・感染源の確認も術前管理の要点である。
術後合併症は発生時期別に整理して理解することが本試験で頻出である。術直後(麻酔覚醒期)は舌根沈下による気道閉塞・呼吸抑制、悪性高熱症、術後悪心・嘔吐(PONV)に注意する。術後1〜3日ごろは無気肺・肺炎などの呼吸器合併症が、術後3〜5日以降は縫合不全・手術部位感染(SSI)・術後イレウスが生じやすい。深部静脈血栓症に由来する肺血栓塞栓症は初回離床(歩行)時に好発するため、離床時のバイタルサイン、呼吸困難・胸痛・SpO2低下の観察が不可欠である。ドレーン管理では排液の量・性状・色の変化を経時的に観察し、閉塞・屈曲・逆行性感染を防止する。出血の徴候として頻脈・血圧低下・創部の腫脹にも留意する。
術後疼痛の管理には硬膜外鎮痛や患者自己調節鎮痛法(PCA)が用いられる。疼痛は交感神経を緊張させて循環に負担をかけ、深呼吸や離床を妨げて無気肺・せん妄の誘因となるため、十分な鎮痛が回復を促進する。早期離床は腸蠕動の回復、無気肺・深部静脈血栓症の予防、廃用症候群の防止に有効であり、術後回復能力強化プログラム(ERAS)の中核概念に位置づけられる。離床の前には血圧・脈拍などの循環動態、創部やドレーンの状態を確認し、座位・端座位・立位・歩行と段階的に進める。起立性低血圧やふらつきに備え、初回歩行は看護師が付き添うことが原則である。
慢性期看護の目標は疾患の治癒ではなく、疾患とともに生きながら生活の質(QOL)を維持し、患者が自己管理(セルフケア)を確立することにある。オレムのセルフケア理論や、患者が主体的に治療方針の決定に参加し実行するアドヒアランスの概念が基盤となる。糖尿病では自己血糖測定、感染や発熱時のシックデイ対応、低血糖症状(冷汗・動悸・手指振戦・空腹感)への対処、末梢神経障害を踏まえたフットケアを指導する。慢性閉塞性肺疾患(COPD)では口すぼめ呼吸、在宅酸素療法(HOT)の安全管理、インフルエンザ等の感染予防を教育する。患者自身の自己効力感を高めるエンパワメントの視点が重要である。
認知症は原因疾患により分類され、アルツハイマー型認知症が最も多く、次いで血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症がある。レビー小体型は具体的な幻視、認知機能の変動、パーキンソニズムを特徴とする。症状は、脳の器質的障害から直接生じる中核症状(記憶障害・見当識障害・実行機能障害・失語・失行・失認)と、本人の性格や環境・心理要因が加わって二次的に現れる行動・心理症状(BPSD:徘徊・興奮・妄想・抑うつ・不穏)に大別される。認知機能の評価には改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSEを用いる。急性発症・変動性・可逆性を特徴とするせん妄は、認知症との鑑別を要する重要な病態である。
認知症ケアの基本理念はパーソン・センタード・ケアであり、その人らしさと尊厳を尊重し、残存能力を活かす関わりを重視する。ユマニチュードなどのケア技法も普及している。施策面では、2019年に策定された認知症施策推進大綱が「共生」と「予防」を車の両輪として位置づけた。さらに2023年6月に成立し2024年1月1日に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、認知症の人の意思の尊重と社会参加の推進、国民の理解の増進を国・地方公共団体の責務として定めた。BPSDへの対応では薬物療法よりも、原因(不安・痛み・環境変化・身体不快)の除去と受容的な非薬物的ケアを優先することが基本である。
高齢者は複数の慢性疾患を併存し、症状が非定型的・非特異的に現れやすい。生理的予備能の低下により、脱水・低栄養・転倒・せん妄・褥瘡・尿失禁・廃用症候群を生じやすく、これらは老年症候群と総称される。加齢に伴い予備能が低下し可逆性を残す状態をフレイル、骨格筋量・筋力が低下する状態をサルコペニアといい、早期の評価と栄養・運動介入が重要である。薬物動態・薬力学の変化から多剤併用(ポリファーマシー)による有害事象が起こりやすい。介護保険法に基づく要介護認定と地域包括ケアシステムを活用し、多職種連携によって在宅・施設での生活を支えることが老年看護の要点である。
この章の問題から3問
深部静脈血栓症に起因する肺血栓塞栓症は、術後の初回離床(歩行)時に発症しやすい。
正解 ○(正しい)
正しい。長期臥床で下肢深部静脈に形成された血栓が、初回離床時の下肢筋のポンプ作用で遊離し、肺動脈を閉塞して肺血栓塞栓症を起こす。肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドラインでも早期離床時の観察が重視され、初回歩行時の突然の呼吸困難・胸痛・SpO2低下は本症を疑う所見である。
術後の早期離床は縫合不全のリスクを高めるため、可能な限り安静臥床を長く保つことが推奨される。
正解 ×(誤り)
誤り。早期離床は術後回復能力強化(ERAS)プログラムの中核で、腸蠕動の回復促進、無気肺・深部静脈血栓症・肺炎・廃用症候群の予防に有効である。安静臥床の遷延はむしろ合併症を増やす。循環動態と創部・ドレーンを確認し、段階的に離床を進めるのが原則である。
レビー小体型認知症では、具体的な幻視、認知機能の変動、パーキンソニズムが特徴的にみられる。
正解 ○(正しい)
正しい。レビー小体型認知症の中核的特徴は「具体的な幻視」「認知機能の変動」「パーキンソニズム」であり、レム睡眠行動障害や抗精神病薬への過敏性を伴うこともある。抗精神病薬の安易な使用は症状を悪化させるため注意を要する。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。