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基礎看護学(バイタルサイン・感染予防・与薬)

標準予防策は全患者に適用する感染対策の基本であり、与薬時は6Rの確認と投与経路別の刺入角度(皮内ほぼ水平・皮下10〜30度・筋注45〜90度・静注約20度)を確実に守ることが、必修問題での得点に直結する。

バイタルサインとは生命徴候を指し、体温・脈拍・呼吸・血圧を基本とし、意識レベルを含めて評価することが多い。体温は身体内部の温度(中枢温)を反映し、測定部位により直腸温>口腔温>腋窩温の順に高い。臨床では腋窩温が最も一般的で、成人の平熱はおよそ36.0〜37.0℃である。体温には早朝に低く夕方に高い日内変動があり、女性では性周期に伴い高温相・低温相が現れる。発熱時の悪寒・戦慄はセットポイントが上昇する体温上昇期にみられ、この時期には保温を行い、解熱期(下降期)には発汗による放熱を助ける。腋窩検温では体温計を前下方から後上方へ約45度で挿入し、腋窩中央の最深部にあてる。

脈拍は心臓の拍動が動脈壁に伝わったもので、通常は橈骨動脈で触知する。成人の基準値はおよそ60〜80回/分で、100回/分以上を頻脈、60回/分未満を徐脈とよぶ。測定時はリズムの整・不整、緊張度(大小)も観察する。呼吸は成人で12〜20回/分が基準であり、25回/分以上を頻呼吸、9回/分以下を徐呼吸という。呼吸は意識させると回数が変化するため、脈拍測定に続けて患者に気づかれないよう観察するのが原則である。異常呼吸としてチェーンストークス呼吸(無呼吸と過呼吸の周期的反復)、クスマウル呼吸(糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられる深く大きい呼吸)、ビオー呼吸などがあり、疾患との対応が頻出である。

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗で規定され、上腕動脈での測定が標準である。日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」では、診察室血圧で収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上を高血圧と定義し、正常血圧は収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満とする。家庭血圧では135/85mmHg以上を高血圧とし、診断において家庭血圧を重視する点が改訂の要点である。カフ(マンシェット)の幅が規定より狭すぎると血圧は高く、広すぎると低く測定される。カフと心臓の高さを一致させ、測定部位が心臓より低いと高値、高いと低値となる。触診法では収縮期血圧のみが把握できる点にも注意する。

感染予防の基本は標準予防策(スタンダードプリコーション)であり、米国CDCが提唱した。これはすべての患者に適用し、血液・体液・分泌物・排泄物(汗を除く)・粘膜・損傷した皮膚を感染性があるものとして扱う考え方である。中心となるのが手指衛生で、WHOは「手指衛生の5つのタイミング(My 5 Moments for Hand Hygiene)」として、(1)患者に触れる前、(2)清潔・無菌操作の前、(3)体液に曝露された可能性のある後、(4)患者に触れた後、(5)患者周辺の環境に触れた後を示している。目に見える汚染がある場合は石けんと流水による手洗いを行い、目に見える汚れがなければアルコール性擦式消毒薬でよい。手袋の着用は手指衛生の代替にはならず、手袋を外した後にも手指衛生を行う。

標準予防策に加え、病原体の感染経路に応じた感染経路別予防策を併用する。空気感染予防策の対象は結核・麻疹・水痘であり、直径5μm以下の飛沫核が長時間浮遊するため、陰圧個室管理と医療者のN95マスク着用が必要である。飛沫感染予防策の対象はインフルエンザ・風疹・流行性耳下腺炎・百日咳・髄膜炎菌感染症などで、5μmより大きい飛沫が約1〜2mの範囲に飛散するため、サージカルマスクで対応する。接触感染予防策の対象はMRSA・ノロウイルス・腸管出血性大腸菌などで、手袋・ガウンの着用と環境整備が中心となる。予防策は標準予防策を土台として重ねるものであり、経路の分類と代表的疾患の対応は必修・一般ともに頻出である。

滅菌とはすべての微生物(芽胞を含む)を死滅または除去することをいい、消毒は病原微生物を害のない程度まで減らすことをさす。代表的な滅菌法には高圧蒸気滅菌(オートクレーブ、飽和水蒸気121℃前後)、酸化エチレンガス(EOG)滅菌、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌があり、熱に弱い器材にはEOGや低温プラズマを用いる。消毒薬は抗菌スペクトルにより高水準・中水準・低水準に分類され、グルタラールなどの高水準消毒薬は内視鏡に、次亜塩素酸ナトリウムはノロウイルスやB型肝炎ウイルスにも有効な中水準消毒薬として用いられる。アルコールは芽胞やノンエンベロープウイルス(ノロウイルスなど)には効果が弱い点が問われやすい。

与薬における最大の責務は誤薬の防止であり、実施の前後に6R(正しい患者・正しい薬剤・正しい目的・正しい用量・正しい用法/経路・正しい時間)を確認する。注射法では投与経路により刺入角度が異なり、皮内注射はほぼ水平(0〜15度程度)でツベルクリン反応などに用い、皮下注射は10〜30度、筋肉内注射は45〜90度、静脈内注射は約10〜20度で刺入する。筋肉内注射の部位は中殿筋(クラークの点)・三角筋・外側広筋などを選び、坐骨神経損傷を避けるため殿部では部位決定を厳密に行う。針刺し事故防止のためリキャップは原則禁止で、使用済み針は専用の耐貫通性容器に廃棄する。

点滴静脈内注射の速度管理も頻出である。輸液セットは一般用(成人用)が1mL=20滴、微量用(小児用)が1mL=60滴に対応する。1分間の滴下数は「総輸液量(mL)×1mLあたりの滴数÷指示時間(分)」で求める。たとえば500mLを2時間(120分)に一般用セットで投与する場合、500×20÷120≒83滴/分となる。薬剤管理では、麻薬・向精神薬は施錠保管し使用記録を残すこと、インスリンや抗凝固薬などのハイリスク薬は複数人でダブルチェックを行うことが求められる。医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく毒薬・劇薬の表示(毒薬は黒地に白枠・白字、劇薬は白地に赤枠・赤字)と保管方法も基礎知識として問われる。

この章の問題から3問

標準予防策(スタンダードプリコーション)では、汗を含むすべての体液を感染の可能性があるものとして扱う。

正解 ×(誤り)

誤り。CDCの標準予防策は、血液・体液・分泌物・排泄物・粘膜・損傷した皮膚を感染性とみなすが、汗のみは対象から除外される。「すべての体液」と断定する点がひっかけである。

結核患者に対する感染対策では、医療者はサージカルマスクを着用すれば十分である。

正解 ×(誤り)

誤り。結核は5μm以下の飛沫核による空気感染であり、空気感染予防策としてN95マスクの着用と陰圧個室管理が必要となる。サージカルマスクで足りるのは飛沫感染予防策(インフルエンザ等)である。

アルコール性擦式手指消毒薬は、ノロウイルスや芽胞形成菌に対する効果が弱い。

正解 ○(正しい)

正しい。アルコールはエンベロープをもたないノロウイルスや、芽胞(クロストリジオイデス・ディフィシル等)には効果が弱い。これらには次亜塩素酸ナトリウムによる消毒や石けんと流水による物理的除去が推奨される。

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