人体の構造と機能・疾病の成り立ち(生化学・病態)
本章はエネルギー代謝の『反応の座』(解糖系=細胞質ゾル、TCA回路=マトリックス、電子伝達系=内膜)と律速酵素・臓器特異性を軸に、ビタミン補酵素とホルモンによる調節を対応づけて押さえることが得点源である。
エネルギー代謝を理解する第一歩は、反応が進行する細胞内区画を正確に区別することである。解糖系(グリコリシス)は細胞質ゾルで進行し、酸素を必要とせずグルコース1分子から正味2分子のATPと2分子のピルビン酸を生じる。ピルビン酸は好気的条件下でミトコンドリアマトリックスへ入り、ピルビン酸脱水素酵素によってアセチルCoAへ変換され、クエン酸回路(TCA回路)で酸化される。TCA回路はマトリックスで進行し、生じたNADHおよびFADH2はミトコンドリア内膜の電子伝達系(酸化的リン酸化)へ電子を供与する。グルコース1分子の完全酸化では、およそ30〜32分子のATPが生成される。本試験では『解糖系は細胞質ゾル』『TCA回路はマトリックス』『電子伝達系は内膜』という反応の座の区別が頻出であり、これらの混同が誤答の典型である。
血糖の恒常性は、グリコーゲン代謝と糖新生、および膵ホルモンによって維持される。グリコーゲンは肝臓と骨格筋に貯蔵されるが、肝臓はグルコース-6-ホスファターゼをもつため分解産物を遊離グルコースとして血中へ放出し血糖を維持できるのに対し、骨格筋は同酵素を欠くため筋グリコーゲンは血糖の維持に直接利用されない。糖新生は主に肝臓(一部は腎臓)で行われ、乳酸・糖原性アミノ酸・グリセロールを基質とするが、偶数鎖脂肪酸から正味のグルコースは合成できない。血糖降下ホルモンであるインスリンは膵ランゲルハンス島のB(β)細胞から、血糖上昇に働くグルカゴンはA(α)細胞から分泌される。この細胞名とホルモン作用の対応は繰り返し問われる論点である。
脂質代謝では、脂肪酸のβ酸化がミトコンドリアで進行し、飢餓時や絶食時に亢進する点が重要である。長鎖脂肪酸はカルニチンを介してミトコンドリア内へ輸送される。β酸化で生じたアセチルCoAは、糖が不足する飢餓時には肝臓でケトン体(アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトン)へ変換される。ケトン体は肝外組織(脳・心筋・骨格筋)のエネルギー源となるが、肝臓は利用に必要な酵素(サクシニルCoA:3-ケト酸CoA転移酵素)を欠くため、自ら産生したケトン体を利用できない。一方、コレステロール合成の律速酵素はHMG-CoA還元酵素であり、スタチン系薬の作用点でもある。これらの律速酵素と臓器特異性は、脂質異常症やケトアシドーシスなど病態の理解にも直結する。
タンパク質・アミノ酸代謝では、体内で十分に合成できない不可欠(必須)アミノ酸9種(バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン)を押さえる。うちバリン・ロイシン・イソロイシンは分枝鎖アミノ酸(BCAA)であり、主に骨格筋で代謝される。アミノ酸の異化で生じた有害なアンモニアは、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で尿素へ変換され腎臓から排泄される。アミノ基転移反応を触媒するAST・ALTはビタミンB6(ピリドキサールリン酸)を補酵素とし、肝細胞障害では血中へ逸脱して上昇する。肝機能が低下すると血中アンモニアが上昇し肝性脳症を来す機序も、この尿素回路の理解から導ける。
酵素反応は基質特異性をもち、反応速度はミカエリス・メンテン式で表され、Km(ミカエリス定数)は基質に対する親和性の指標となる。水溶性ビタミンの多くは補酵素として働き、ビタミンB1はチアミンピロリン酸(TPP)としてピルビン酸脱水素酵素などの酸化的脱炭酸反応に、ナイアシンはNAD/NADPとして酸化還元反応に、葉酸はテトラヒドロ葉酸として一炭素単位の転移に関与する。ホルモンの情報伝達では、ステロイドホルモンや甲状腺ホルモンは細胞内(核内)受容体に結合するのに対し、ペプチドホルモンやカテコールアミンは細胞膜受容体を介してcAMPなどのセカンドメッセンジャーを動員する。ビタミンと補酵素の対応、受容体の局在の違いは頻出論点である。
疾病の成り立ちでは、炎症の基本徴候(発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害)と、急性炎症での好中球浸潤、慢性炎症でのリンパ球・マクロファージ浸潤の違いを整理する。免疫では、血中に最も多い抗体はIgG、粘膜や初乳に多い分泌型はIgA、感染初期に最初に産生されるのはIgM、Ⅰ型(即時型)アレルギーに関与するのはIgEである。腫瘍については、がん遺伝子の活性化とがん抑制遺伝子(p53、RBなど)の不活化が発がんに関与し、悪性腫瘍は浸潤・転移を示す点が良性腫瘍との決定的な差となる。これらの基礎知識は、感染症・アレルギー・がんの臨床栄養における病態理解の土台となる。
代謝性疾患では、まず糖尿病の病型を区別する。1型糖尿病は主に自己免疫機序による膵B細胞破壊でインスリンの絶対的欠乏を来し、2型糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌低下が背景となる。診断では、HbA1c(NGSP値)6.5%以上、空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖または75gOGTT2時間値200mg/dL以上のいずれかが糖尿病型とされる(日本糖尿病学会の診断基準)。脂質異常症はLDLコレステロール高値などで判定され動脈硬化の危険因子となる。痛風はプリン体代謝の最終産物である尿酸の血中増加(高尿酸血症)により、尿酸塩結晶が関節に沈着して急性関節炎を生じる病態である。これらの数値基準は正確に暗記したい。
この章の問題から3問
解糖系は酸素の存在下でのみ進行し、ミトコンドリア内で行われる反応である。
正解 ×(誤り)
解糖系(グリコリシス)は細胞質ゾルで進行し、酸素を必要とせず嫌気的条件でも進む。ミトコンドリアで進行するのはピルビン酸脱水素酵素反応以降のTCA回路・電子伝達系である。よって『酸素依存かつミトコンドリア内』とする記述は誤り。
肝臓はケトン体を産生するが、産生したケトン体自体をエネルギー源として利用することはできない。
正解 ○(正しい)
肝臓はβ酸化由来のアセチルCoAからケトン体(アセト酢酸・β-ヒドロキシ酪酸・アセトン)を産生するが、利用に必要なサクシニルCoA:3-ケト酸CoA転移酵素を欠くため、自らはケトン体を利用できない。ケトン体は脳・心筋・骨格筋など肝外組織で利用される。よって正しい。
骨格筋のグリコーゲンは、グルコース-6-ホスファターゼを欠くため、分解して血糖の維持に直接利用されない。
正解 ○(正しい)
骨格筋はグルコース-6-ホスファターゼをもたないため、筋グリコーゲンの分解産物を遊離グルコースとして血中へ放出できず、血糖維持に直接寄与しない。同酵素をもつ肝臓のグリコーゲンが血糖維持を担う。よって正しい。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。