基礎栄養学・応用栄養学(栄養素の代謝・ライフステージ栄養)
糖新生の基質は乳酸・糖原性アミノ酸・グリセロールで脂肪酸は使えないこと、ケトン体は肝臓で生成され肝外組織で利用されること、そして日本人の食事摂取基準(2025年版)の5指標とエネルギーのBMI指標を、代謝とライフステージ栄養に横断して押さえるのが本章の核である。
糖質代謝の中心は、細胞質基質で進行する解糖系である。グルコースは解糖系でピルビン酸まで分解され、好気的条件下ではミトコンドリアでアセチルCoAを経てクエン酸回路(TCA回路)と電子伝達系に入り、多量のATPを産生する。酸素が乏しい筋肉や、ミトコンドリアをもたない赤血球では、ピルビン酸は乳酸へ変換される。空腹時には主に肝臓で糖新生が行われ、乳酸・糖原性アミノ酸・グリセロールを材料にグルコースが再合成される。筋肉で生じた乳酸が肝臓で糖新生に用いられる経路をコリ回路とよぶ。脂肪酸のβ酸化で生じるアセチルCoAは糖新生の基質とならない点が頻出論点である。
脂質代謝では、脂肪酸はミトコンドリアでβ酸化を受けてアセチルCoAとなりエネルギー源となる。飢餓時や糖尿病などで糖利用が低下すると、肝臓でアセチルCoAからケトン体(アセト酢酸・3-ヒドロキシ酪酸・アセトン)が生成され、脳や骨格筋・心筋などの肝外組織のエネルギー源となる。ただし肝臓自身はケトン体を利用できない。一方、脂肪酸やコレステロールの合成は細胞質基質で行われ、コレステロール合成の律速酵素はHMG-CoA還元酵素である。食事由来のトリグリセリドはカイロミクロン、肝臓由来のものはVLDLで運搬され、LDLは末梢へコレステロールを供給し、HDLは末梢から肝臓へコレステロールを逆転送する。
たんぱく質・アミノ酸代謝では、体内で十分に合成できず食事から摂取する必要のある不可欠(必須)アミノ酸が重要である。成人ではバリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・トレオニンにヒスチジンを加えた9種とされる。たんぱく質の摂取と排泄の均衡は窒素出納で評価し、成長期・妊娠期・回復期は正、飢餓や外傷・感染などの侵襲時は負となる。アミノ酸の分解で生じた有毒なアンモニアは、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で無毒な尿素へ変換され腎臓から排泄される。たんぱく質の栄養価はアミノ酸スコアや正味たんぱく質利用率などで評価される。
消化は、消化管腔内で消化酵素が働く管腔内消化と、小腸微絨毛膜で行われる膜消化に大別される。糖質は二糖類が膜消化で単糖に分解され、グルコースとガラクトースはナトリウム依存性のSGLT1により能動輸送で、フルクトースはGLUT5により促進拡散で吸収される。たんぱく質はペプシン・トリプシン・キモトリプシンなどで分解され、アミノ酸のほかジペプチド・トリペプチドの形でも吸収される。脂質は胆汁酸によりミセル化されて吸収され、小腸上皮細胞内で再合成されたのちカイロミクロンとなりリンパ管を経て循環へ入る。水溶性栄養素が門脈経由であるのに対し、脂質がリンパ経路をとる点が対比的に問われる。
ビタミンは脂溶性(A・D・E・K)と水溶性(B群・C)に分けられる。ビタミンB1(チアミン)は糖代謝の補酵素TPPとして働き、欠乏で脚気やウェルニッケ脳症を起こす。ビタミンDは肝臓と腎臓での水酸化を経て活性型(1,25-ジヒドロキシビタミンD)となり、腸管でのカルシウム吸収を促進する。ビタミンKは血液凝固因子の生成に関与し腸内細菌でも合成されるが、腸内細菌叢が未熟な新生児では欠乏しやすい。ミネラルではカルシウムが活性型ビタミンDにより吸収を促進され、鉄はヘム鉄が非ヘム鉄より吸収されやすく、ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を高める。ナトリウムの過剰摂取は高血圧に関与し、食塩相当量として目標量が設定されている。
日本人の食事摂取基準(2025年版)は、健康の保持・増進、生活習慣病およびフレイルの発症・重症化予防を目的として策定され、2025〜2029年度に使用される。栄養素の指標には、推定平均必要量(EAR)、推奨量(RDA)、目安量(AI)、耐容上限量(UL)、および生活習慣病予防のための目標量(DG)の5種類がある。エネルギーについては、摂取量と消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標として体格指数であるBMIを採用している。また三大栄養素の構成比を示すエネルギー産生栄養素バランス(たんぱく質・脂質・炭水化物)が目標量として範囲で示される。
応用栄養学ではライフステージごとの特性を理解する。妊娠を計画する女性や妊娠初期には、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスク低減のため、付加的に葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)の摂取が推奨される。妊娠期・授乳期にはエネルギーやたんぱく質・鉄などが付加量として上乗せされる。乳児期は多くの指標が母乳を基準とした目安量で設定され、生後5〜6か月頃から離乳を開始する。乳幼児の発育評価にはカウプ指数、学童期にはローレル指数が用いられる。高齢期では、骨格筋量と筋力が低下するサルコペニアや、心身の脆弱状態であるフレイルの予防が重視され、十分なたんぱく質摂取が推奨される。
栄養アセスメントでは、身体計測・生化学検査・臨床診査・食事調査などから栄養状態を総合的に評価する。血清アルブミンは半減期が長く比較的長期の栄養状態を反映するのに対し、トランスサイレチン(プレアルブミン)・レチノール結合たんぱく質・トランスフェリンは半減期が短い急速代謝回転たんぱく質(RTP)として短期の栄養状態の指標となる。身体計測では体格指数(BMI)、上腕周囲長、上腕三頭筋部皮下脂肪厚などが用いられる。これらの指標を組み合わせ、栄養素の過不足を早期に把握して栄養ケア・マネジメントにつなげることが実務上重要である。
この章の問題から3問
糖新生は、脂肪酸を材料としてグルコースを合成する経路である。
正解 ×(誤り)
誤り。糖新生の基質は乳酸・糖原性アミノ酸・グリセロールである。脂肪酸のβ酸化で生じるアセチルCoAはピルビン酸へ正味変換されず、哺乳類では糖新生の材料とならない。「脂肪酸から糖ができる」は典型的なひっかけ。
肝臓で合成されたケトン体は、脳や骨格筋などの肝外組織でエネルギー源として利用される。
正解 ○(正しい)
正しい。飢餓時などに肝臓でアセチルCoAから生成されたケトン体(アセト酢酸・3-ヒドロキシ酪酸・アセトン)は肝外組織で利用される。ひっかけの根拠は「肝臓自身はケトン体を利用できない(利用酵素を欠く)」点で、生成臓器と利用臓器が異なることが要点。
成人の不可欠(必須)アミノ酸は、ヒスチジンを除いた8種類である。
正解 ×(誤り)
誤り。現在の食事摂取基準では、成人でもヒスチジンを含めた9種類(バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・トリプトファン・トレオニン・ヒスチジン)を不可欠アミノ酸とする。「成人は8種」は旧来の理解で、ヒスチジンを外すのがひっかけ。
登録不要 ・ 採点と解説はその場 ・ 進捗は端末に保存
管理栄養士の他の章
- 社会・環境と健康(公衆衛生・疫学・健康日本21)
- 人体の構造と機能・疾病の成り立ち(生化学・病態)
- 栄養教育論と臨床栄養学(行動科学・疾患別栄養管理)
- 公衆栄養学(食事摂取基準・国民健康・栄養調査)
- 給食経営管理論と食べ物と健康(大量調理・食品衛生)
本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。