栄養教育論と臨床栄養学(行動科学・疾患別栄養管理)
行動科学は「モデル名と構成概念の対応」で、臨床栄養は「病態生理から導かれる栄養処方の根拠」で押さえ、目標体重・たんぱく質制限・減塩基準などの頻出値を診療ガイドラインに沿って正確に記憶することが合格の分かれ目である。
栄養教育は、対象者の行動変容を通じてQOLの向上を目指す系統的な営みであり、国際的に標準化された栄養ケアプロセス(NCP)に沿って展開される。NCPは「栄養アセスメント→栄養診断→栄養介入→栄養モニタリングと評価」の4段階からなり、栄養診断ではPES報告書(Problem/Etiology/Signs・Symptoms)を用いて「Sの根拠に基づき、Eが原因となった、Pである」と一文で明確化する。栄養教育マネジメントはこれを包含するPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)として運用され、まずスクリーニングでリスク者を抽出したうえでアセスメントを行う。アセスメント指標は食物・栄養関連の履歴、身体計測、生化学データ、身体所見、既往・生活歴に整理され、客観的情報と主観的情報を統合して課題を構造化する点が要点である。
行動科学理論は栄養教育の中核であり、複数モデルの特徴と適用場面の区別が頻出する。トランスセオレティカルモデル(行動変容段階モデル)は、無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期の5段階を想定し、段階に応じて変容プロセスと介入を変える。ヘルスビリーフモデルは、罹患性・重大性の認知、行動の有益性と障害の差引、行動のきっかけ、自己効力感で行動を説明する。社会的認知理論(バンデューラ)は、個人・行動・環境の相互決定主義を基盤とし、観察学習(モデリング)と自己効力感を重視する。計画的行動理論では、行動意図が「行動への態度・主観的規範・行動コントロール感」で規定される。理論名と構成概念の対応を取り違えないことが得点の鍵である。
行動変容技法の多くはオペラント条件づけに基づく。刺激統制は、食行動を誘発する先行刺激(手の届く場所の菓子など)を管理する技法であり、反応妨害・拮抗は、衝動が生じた際に別の行動で置き換える。オペラント強化は、望ましい行動に報酬を随伴させて出現頻度を高める。認知再構成は、非合理な思い込みを修正する認知的技法である。栄養カウンセリングでは、ラポール形成と傾聴を前提に、開かれた質問・是認・聞き返し・要約(OARS)を用いる動機づけ面接が有効とされ、対象者の両価性に働きかけて自発的な変化への言葉(チェンジトーク)を引き出す。指導者が一方的に説得するのではなく、対象者の自律性を支える点が本質である。
栄養教育計画では目標を階層的に設定する。結果(アウトカム)目標はQOLや健康状態の到達点、行動目標は具体的な食行動、学習目標は知識・態度・スキル、環境目標は食環境整備、実施目標はプログラム実施に関する目標である。目標は具体的で測定可能かつ達成可能なものとし、優先順位を付ける。評価は、企画評価(計画の妥当性)、経過(プロセス)評価(実施状況)、影響評価(行動・知識など短期的変化)、結果(アウトカム)評価(健康状態やQOLなど長期的変化)、経済評価に分類される。経済評価には、効果を金額換算しない費用効果分析と、金額換算する費用便益分析があり、両者の区別が問われる。評価デザインの妥当性を高める配慮も重要である。
臨床栄養学では、栄養アセスメントと栄養補給法の選択が基礎となる。半減期の短いたんぱく質であるトランスサイレチン(プレアルブミン)やレチノール結合たんぱく質は、短期の栄養状態変化を反映する動的指標(rapid turnover protein)として用いられ、半減期の長いアルブミンとは意味づけが異なる。主観的包括的評価(SGA)は問診と身体所見のみで低栄養リスクを判定する簡便な手法である。栄養補給は、消化管が機能している場合は経腸栄養を第一選択とし、機能していない場合や長期絶食時に静脈栄養を選ぶ。経腸栄養は腸管粘膜の萎縮とバクテリアルトランスロケーションを防ぐ利点をもつ。多職種で構成される栄養サポートチーム(NST)が、こうした栄養管理を横断的に支援する。
疾患別栄養管理では基準値の暗記より根拠の理解が問われる。糖尿病では、総エネルギー摂取量を「目標体重×エネルギー係数」で算定し、目標体重は原則65歳未満で[身長(m)]²×22とする。エネルギー係数は身体活動量により25〜35kcal/kg程度を用い、炭水化物は指示エネルギーの50〜60%、たんぱく質は20%以下を目安とする(糖尿病治療ガイド)。慢性腎臓病(CKD)では、日本腎臓学会の食事療法基準に基づき、たんぱく質をステージG3aで0.8〜1.0、G3b以降で0.6〜0.8g/kg標準体重/日に制限し、食塩は3g以上6g未満/日とする。高カリウム血症を伴う進行例ではカリウムを制限する。過度なたんぱく質制限はエネルギー不足と異化亢進を招くため、十分なエネルギー確保が前提となる。
その他の疾患でも病態に即した管理が求められる。非代償期の肝硬変では、夜間の飢餓を防ぐため就寝前補食(LES)を行い、肝性脳症を伴う高アンモニア血症では分岐鎖アミノ酸(BCAA)を補いつつたんぱく質を適正化する。高血圧では減塩が基本で食塩相当量6g/日未満を目標とし(高血圧治療ガイドライン)、心不全でも過剰な塩分と水分を管理する。慢性膵炎の代償期では脂質制限が中心となる。胃切除後は、急速な高浸透圧食の流入によるダンピング症候群を防ぐため、少量頻回食と糖質のとり方に配慮する。炎症性腸疾患の活動期では、腸管安静と低脂肪・低残渣を基本としつつ、寛解期には過度の制限を避ける。病態生理と栄養処方を結び付けて理解することが要点である。
この章の問題から3問
行動変容段階モデル(トランスセオレティカルモデル)において、「6か月以内に行動を変える意思はあるが、まだ実行していない」段階は準備期に分類される。
正解 ×(誤り)
それは関心期(熟考期)である。準備期は「1か月以内に行動を変える意思がある、または既に部分的に開始している」段階を指す。無関心期(前熟考期)は6か月以内に変える気がない段階であり、段階の定義を混同させる典型的なひっかけである。
消化管が機能している場合でも、栄養管理では中心静脈栄養を経腸栄養より優先して選択するのが原則である。
正解 ×(誤り)
「腸が使えるなら腸を使う」が原則であり、消化管が機能していれば経腸栄養が第一選択となる。経腸栄養は腸管粘膜の萎縮やバクテリアルトランスロケーションの予防に有利で、静脈栄養は消化管が使えない場合や長期絶食時に選択する。
慢性腎臓病(CKD)の食事療法では、日本腎臓学会の食事療法基準上、食塩摂取量は3g以上6g未満/日とされる。
正解 ○(正しい)
慢性腎臓病に対する食事療法基準(日本腎臓学会)では食塩を3g/日以上6g/日未満と定めている。上限のみでなく下限が設けられているのは、過度の減塩による有害事象(低ナトリウム血症・脱水など)を避けるためである。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。