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工業簿記② 総合原価計算・標準原価計算・直接原価計算

本章は「按分」の章である。月末仕掛品評価・仕損の負担関係・標準原価差異・貢献利益はいずれもどの数量基準で原価を配分するかに帰着し、ボックス図とシュラッター図で図解して解く型を固めれば第4問(2)・第5問で満点が狙える。

総合原価計算は、標準規格製品を連続大量生産する生産形態に適用される製品別計算の方法であり、「原価計算基準」二〇および二一にその定めがある。計算の核心は、一期間の製造費用を完成品と月末仕掛品とに按分する点にある。工程の始点で投入される直接材料費は数量ベースでそのまま按分するのに対し、加工費(直接労務費・製造間接費)は数量に加工進捗度を乗じた完成品換算量に基づいて按分する。月末仕掛品の評価方法には平均法と先入先出法があり(基準二四)、平均法は月初仕掛品原価と当月製造費用の合計を完成品換算総量で除して平均単価を求める。他方、先入先出法は月初仕掛品が先に加工され完成すると仮定するため、月末仕掛品原価はすべて当月製造費用のみから計算される。本試験の第4問(2)・第5問では材料の投入時点(始点・平均的投入・終点)の読み取りが得点を左右するため、生産データを必ずボックス図に整理して数量の対応関係を可視化する習慣を確立すべきである。

仕損とは加工の失敗による不合格品の発生をいい、減損とは蒸発・粉散等により材料の物量が消失することをいう。正常な状態で不可避的に生じる正常仕損費・正常減損費は良品の原価に算入され、日商簿記2級では仕損分の数量を計算上度外視して自動的に良品へ負担させる度外視法が出題範囲である(「原価計算基準」二七)。最大の論点は負担関係の判定であり、仕損の発生点の進捗度と月末仕掛品の加工進捗度を比較する。発生点が月末仕掛品の進捗度より後(典型例は工程の終点)であれば月末仕掛品は発生点を通過していないから完成品のみが負担し、発生点が月末仕掛品の進捗度以前または発生点不明の場合は完成品と月末仕掛品の両者が負担する。両者負担の場合は当月投入量から仕損・減損量を控除した数量比で按分すればよい。仕損品に売却価値(仕損品評価額)がある場合はこれを控除する処理も問われる。負担関係の判定を誤ると以降の計算がすべて崩れる芋づる式失点になるため、最優先で固めるべき論点である。

単一工程・単一製品を前提とする単純総合原価計算に対し、生産形態に応じた応用類型が三つある。第一の工程別総合原価計算(「原価計算基準」二五)は、二つ以上の工程を経て生産する場合に工程ごとに原価を計算する方法で、2級では第1工程完成品原価を第2工程へ順次振り替える累加法が出題される。前工程費は第2工程の始点で投入される直接材料費と同様に扱い、加工進捗度を乗じない点が鍵である。第二の組別総合原価計算(基準二三)は、異種製品(組製品)を反復連続生産する場合に適用され、組直接費は各組製品に賦課し、組間接費は機械運転時間等の適切な配賦基準によって各組に配賦したうえで、組ごとに単純総合原価計算を行う。第三の等級別総合原価計算(基準二二)は、同種製品で重量・長さ・純分度等の等級が異なる場合に適用され、これらの性質に基づいて等価係数を定め、等価係数に各等級製品の生産量を乗じた積数の比で完成品総合原価を各等級製品に按分する。三類型それぞれの適用条件と計算手順の対応を一枚の表に整理して記憶することが効率的である。

標準原価計算は、科学的・統計的調査に基づき算定した標準原価によって製品原価を計算し、実際原価との差異を分析して原価管理に役立てる制度である(「原価計算基準」四〇〜四七)。まず製品1単位あたりの原価標準を、標準直接材料費(標準単価×標準消費量)、標準直接労務費(標準賃率×標準直接作業時間)、標準製造間接費(標準配賦率×標準操業度)の合計として設定する。勘定記入法には、仕掛品勘定の借方に実際原価を記入し原価差異を仕掛品勘定で把握するパーシャル・プランと、借方から標準原価で記入し差異を材料・賃金等の各費目別勘定で把握するシングル・プランがあり、いずれも商工会議所簿記検定2級出題区分表に明記されている。差異分析では、直接材料費差異を価格差異と数量差異に、直接労務費差異を賃率差異と時間差異に分解し、製造間接費差異は公式法変動予算のもとで予算差異・能率差異・操業度差異に三分析する(基準四六)。価格面の差異(価格差異・賃率差異)は実際消費量・実際作業時間を乗じて計算するのが定型であり、シュラッター図を描いて機械的に解けるまで反復すべきである。

直接原価計算は、原価を変動費と固定費とに分解し、変動製造原価のみで製品原価を計算する方法である。その損益計算書は、売上高から変動売上原価を控除して変動製造マージンを求め、さらに変動販売費を控除して貢献利益を表示し、貢献利益から固定費(固定製造間接費および固定販売費・一般管理費)を一括控除して営業利益を計算する構造をとる。全部原価計算との営業利益の差は固定製造間接費の扱いに起因し、生産量が販売量を上回り在庫が増加する期間には、全部原価計算では固定製造間接費の一部が期末在庫に繰り延べられて費用化が遅れるため、全部原価計算の営業利益のほうが大きくなる。「原価計算基準」三〇は総合原価計算において直接原価計算を採用できる旨を定めるが、制度会計上の外部報告は全部原価計算によるため、会計年度末には固定費調整によって営業利益を修正する。算式は「直接原価計算の営業利益+期末仕掛品・製品に含まれる固定製造間接費−期首仕掛品・製品に含まれる固定製造間接費=全部原価計算の営業利益」であり、加減の方向を在庫増減と結び付けて理解しておくことが重要である。

直接原価計算の枠組みは、短期利益計画のためのCVP分析(原価・営業量・利益分析)に直結する。損益分岐点とは営業利益がゼロとなる販売量・売上高であり、損益分岐点売上高は固定費を貢献利益率(貢献利益÷売上高=1−変動費率)で除して求める。目標営業利益を達成する売上高は(固定費+目標営業利益)÷貢献利益率で、安全余裕率は(予想売上高−損益分岐点売上高)÷予想売上高で計算する。原価を変動費と固定費に分解する原価分解の方法としては、正常操業圏内の最高操業度と最低操業度の2点の原価データから変動費率と固定費を推定する高低点法が商工会議所簿記検定2級出題区分表に明記されている。統一試験・ネット試験とも第5問で直接原価計算方式の損益計算書作成とCVP分析を組み合わせた出題実績が多く、貢献利益率で「割る」のか「掛ける」のかの混同が典型的な失点原因である。公式の暗記に頼らず、売上高S×貢献利益率−固定費=営業利益という基本等式から毎回導出できるようにしておくことが確実な得点につながる。

この章の問題から3問

先入先出法によって月末仕掛品を評価する場合、月末仕掛品原価はすべて当月製造費用から計算される。

正解 ○(正しい)

正しい。先入先出法(「原価計算基準」二四)では月初仕掛品が先に加工され完成すると仮定するため、月末仕掛品は当月投入分のみから構成され、その原価はすべて当月製造費用から計算される。平均法(月初仕掛品原価と当月製造費用の合計を完成品換算総量で按分する)との違いを対比して押さえること。

正常仕損が工程の終点で発生した場合、度外視法では正常仕損費を完成品と月末仕掛品の両者に負担させる。

正解 ×(誤り)

誤り。負担関係は仕損の発生点と月末仕掛品の加工進捗度の比較で決まる。終点発生の場合、月末仕掛品は仕損発生点を通過していないため、正常仕損費は完成品のみに負担させる(「原価計算基準」二七の正常仕損費を良品に負担させる趣旨)。「度外視法だから常に両者負担」と機械的に判断させるひっかけである。

標準原価計算のパーシャル・プランでは、仕掛品勘定の借方に実際原価を記入し、原価差異は仕掛品勘定で把握される。

正解 ○(正しい)

正しい。パーシャル・プランでは仕掛品勘定の借方に実際原価、貸方(完成品)に標準原価を記入するため、原価差異は仕掛品勘定内で把握される。これに対しシングル・プランでは借方から標準原価で記入し、差異は材料・賃金・製造間接費の各費目別勘定で把握される。両プランとも商工会議所簿記検定2級出題区分表(標準原価計算の記帳)に明記された論点である。

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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。