債権債務・手形・電子記録債権
債権債務は「商品売買由来か否か」「債権(資産)か債務(負債)か」の2軸で勘定科目が決まる。売掛金/未収入金、支払手形/手形借入金、手形と電子記録債権の平行構造の区別が合否を分ける。
本章では日商簿記3級の中核論点である債権債務を扱う。まず基本となるのが売掛金と買掛金である。商品売買という主たる営業取引から生じた代金の後払い債権が売掛金、後払い債務が買掛金であり、これに対し、商品以外の物品(備品・土地など)の売買から生じた債権債務は未収入金・未払金で処理する点が本試験第1問(仕訳問題)の頻出のひっかけである。何を売買したかで勘定科目が変わることを常に意識する。また、クレジット払いの条件で商品を販売した場合は、信販会社に対する債権として「クレジット売掛金」勘定を用い、信販会社へ支払う決済手数料は原則として販売時に「支払手数料」として費用計上する。この一連の処理はネット試験でも統一試験でも繰り返し出題されている。
手形については、3級では約束手形のみが出題範囲である(為替手形は範囲外)。約束手形は手形法に規定される有価証券で、振出人が名宛人(受取人)に対して一定期日に一定金額の支払いを約束する証券である。手形を振り出した側は「支払手形」(負債)、受け取った側は「受取手形」(資産)で処理する。満期日に当座預金口座で決済されたときは、振出人は支払手形を減少させ当座預金を減らし、受取人は受取手形を減少させ当座預金を増やす。なお、売掛金の回収として約束手形を受け取った場合は売掛金から受取手形への振替となる点に注意する。また、3級の「支払手形」「受取手形」は商品売買など商取引から生じた手形に限られる。備品など商品以外の購入代金のために約束手形を振り出す取引(営業外支払手形)は2級の論点であり、3級では支払手形勘定は用いない(未払金等で処理する)。
電子記録債権・電子記録債務は、電子記録債権法(平成19年法律第102号)に基づき、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録を効力発生要件とする金銭債権である。手形の紛失・盗難リスクや印紙税の負担を回避できる決済手段として実務で普及しており、3級では2019年度から出題区分に含まれている。売掛金について電子記録債権の発生記録が行われたときは、債権者は売掛金から「電子記録債権」(資産)へ振り替え、債務者は買掛金から「電子記録債務」(負債)へ振り替える。支払期日に決済されれば、それぞれ電子記録債権・電子記録債務を減少させる。処理の構造は受取手形・支払手形と完全に平行であるため、手形とセットで押さえると効率がよい。
金銭の貸借から生じる債権債務は貸付金(資産)・借入金(負債)で処理する。利息の受け払いは受取利息(収益)・支払利息(費用)となり、利息計算は「元本×年利率×月数/12」の月割計算が原則である。借用証書の代わりに約束手形を用いて金銭を貸し付けた・借り入れた場合は「手形貸付金」「手形借入金」を用い、商取引の受取手形・支払手形とは区別する。これは手形という形式ではなく取引の実態(金銭消費貸借、民法587条)で勘定科目を決める考え方であり、第1問で頻出である。また、従業員に対する給料の前貸しは「従業員貸付金」または「立替金」、源泉所得税や社会保険料の従業員負担分を給料から差し引いたときは「所得税預り金」「社会保険料預り金」等の預り金勘定で処理し、後日納付時に取り崩す。
前払金・前受金も重要である。商品の仕入に先立ち手付金(内金)を支払ったときは「前払金」(資産)、受け取ったときは「前受金」(負債)で処理し、後日商品を受け渡した時点で仕入・売上に振り替える。手付金の授受の段階では商品の受け渡しがないため、仕入・売上を計上してはならない。これは収益認識の観点からも、商品の引渡時点で売上を計上するという基本原則(企業会計原則の実現主義、現行の収益認識に関する会計基準の考え方とも整合)に基づく。さらに、内容不明の入金は「仮受金」、概算払いは「仮払金」で一時的に処理し、内容判明時に適切な勘定へ振り替える。出張旅費の概算払い→精算の流れは第1問の定番であり、精算時に残額の返金や追加払いがある場合の仕訳まで書けるようにしておく。
その他の債権債務として、受取商品券と差入保証金を押さえる。他社(自治体・商店会等)発行の商品券を受け取って商品を販売したときは「受取商品券」(資産)で処理し、後日精算して現金等を受け取ったときに減少させる。店舗等の賃借にあたり敷金・保証金を差し入れたときは「差入保証金」(資産)で処理し、解約時に返還されれば減少させる(原状回復費用が差し引かれた場合は修繕費等で処理)。これらは2019年度の出題区分改定で3級に加わった論点であり、ネット試験の第1問で高頻度に出題される。本章全体を通じて、①取引の発生原因(商品売買か否か・金銭貸借か)と②債権か債務か(資産か負債か)の2軸で勘定科目を判定する訓練を積めば、第1問15問中の相当数を確実に得点できる。
この章の問題から3問
備品を売却し代金を後日受け取る約束をした場合、その債権は売掛金勘定で処理する。
正解 ×(誤り)
誤り。売掛金は商品など主たる営業取引から生じた債権に限る。備品(商品以外の物品)の売却代金の未回収分は「未収入金」で処理する。取引の対象が商品か否かで勘定科目が変わる点が本試験第1問の定番のひっかけである。
売掛金について電子記録債権の発生記録が行われたとき、債権者は売掛金を減少させ電子記録債権(資産)を計上する。
正解 ○(正しい)
正しい。電子記録債権法に基づく発生記録により、債権者は売掛金から電子記録債権(資産)へ振り替える。債務者側は買掛金から電子記録債務(負債)へ振り替える。処理構造は受取手形・支払手形と平行である。
借用証書の代わりに約束手形を受け取って金銭を貸し付けた場合、その債権は受取手形勘定で処理する。
正解 ×(誤り)
誤り。金銭消費貸借(民法587条)に基づく貸付けは、手形という形式を用いても「手形貸付金」で処理する。受取手形は商品売買など商取引から生じた手形債権に用いる。形式ではなく取引の実態で勘定科目を決める。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。