精算表・財務諸表の作成
決算整理仕訳(売上原価・貸倒引当金・減価償却・経過勘定等)を正確に切り、精算表では損益計算書欄の貸借差額=当期純利益を借方に、貸借対照表欄の貸方に同額記入して締める——この一連の流れが第3問35点の核心である。
決算とは、会計期間末に帳簿を締め切り、経営成績と財政状態を明らかにする一連の手続である。日商簿記3級の出題範囲では、決算手続は「決算整理前残高試算表の作成→決算整理仕訳→精算表または財務諸表の作成→帳簿の締切」という流れで進む。精算表(8桁精算表)は、残高試算表欄・修正記入欄・損益計算書欄・貸借対照表欄の4欄(各借方・貸方で8桁)から構成され、決算整理の過程を一覧できる計算表である。本試験(統一試験・ネット試験とも)では第3問(配点35点)で精算表作成または財務諸表作成のいずれかが出題されるのが定番であり、決算整理仕訳を正確に切れるかが得点を左右する。企業会計原則(昭和24年経済安定本部企業会計制度対策調査会中間報告、最終改正昭和57年)の損益計算書原則・貸借対照表原則が表示の基礎にある。
決算整理事項の中核は売上原価の算定である。三分法では期中の商品売買を仕入・売上・繰越商品の3勘定で処理するため、決算整理前の仕入勘定残高は当期商品仕入高を、繰越商品勘定残高は期首商品棚卸高を示すにすぎない。そこで「(借)仕入/(貸)繰越商品」(期首商品を仕入へ振替)、「(借)繰越商品/(貸)仕入」(期末商品を仕入から控除)という2本の仕訳、いわゆる「しいくり・くりしい」により、仕入勘定で売上原価(=期首商品棚卸高+当期仕入高−期末商品棚卸高)を算定する。損益計算書では仕入勘定を「売上原価」、売上勘定を「売上高」と表示し、貸借対照表では繰越商品を「商品」と表示する点が、精算表と財務諸表の表示上の重要な相違である。
貸倒引当金の設定は差額補充法による。期末の受取手形・売掛金・電子記録債権などの債権残高に貸倒実績率を乗じて貸倒見積額を計算し、貸倒引当金の決算整理前残高との差額のみを「(借)貸倒引当金繰入/(貸)貸倒引当金」と仕訳する。設定額より残高が大きい場合は貸倒引当金戻入(収益)とする。減価償却は3級では定額法のみが出題され、減価償却費=(取得原価−残存価額)÷耐用年数で計算し、記帳は間接法(借方 減価償却費/貸方 減価償却累計額)による。期中に取得した固定資産は使用開始月から決算月までの月割計算を行う。貸借対照表上、貸倒引当金は債権から、減価償却累計額は固定資産の取得原価から、それぞれ控除する形式で表示する。
経過勘定項目の処理は企業会計原則注解【注5】の考え方(費用・収益の見越し・繰延べ)に基づく。①費用の繰延べ(前払費用):支払済みだが次期分の費用を「(借)前払保険料/(貸)保険料」と資産計上する。②収益の繰延べ(前受収益):受取済みだが次期分の収益を負債計上する。③費用の見越し(未払費用):当期分だが未払いの費用を「(借)支払利息/(貸)未払利息」と負債計上する。④収益の見越し(未収収益):当期分だが未収の収益を資産計上する。前払・未収は貸借対照表の資産、前受・未払は負債となる。これらは翌期首に再振替仕訳(逆仕訳)を行う点まで問われる。月数按分の指示(「×月分を繰り延べる」等)を読み違えないことが実戦上の最大の注意点である。
このほか頻出の決算整理として、①現金過不足の整理(原因判明分は該当勘定へ振替え、不明分は雑損または雑益へ)、②当座借越の振替(当座預金勘定の貸方残高を当座借越勘定または借入金勘定へ振り替える)、③貯蔵品への振替(未使用の郵便切手・収入印紙を通信費・租税公課から貯蔵品勘定=資産へ振り替える)、④仮払金・仮受金の精算、⑤法人税、住民税及び事業税の計上(中間納付の仮払法人税等を控除した残額を未払法人税等とする。法人税法・地方税法に基づく税目である)、⑥消費税の整理(税抜方式により仮受消費税と仮払消費税を相殺し、差額を未払消費税とする。消費税法に基づき、2023年10月開始のインボイス制度=適格請求書等保存方式下でも3級の処理は税抜方式で一貫している)が挙げられる。
精算表の記入手順は機械的に習得できる。まず決算整理仕訳を修正記入欄に記入し、次に残高試算表欄の金額に修正記入欄の金額を加減(同じ側は加算・反対側は減算)して、収益・費用の勘定は損益計算書欄へ、資産・負債・純資産の勘定は貸借対照表欄へ書き移す。損益計算書欄の貸借差額が当期純利益(または純損失)であり、当期純利益の場合は損益計算書欄の借方と貸借対照表欄の貸方に、純損失の場合はその逆側に同額を記入して両欄を一致させる。財務諸表作成問題では、当期純利益は損益計算書の末尾に表示するとともに、貸借対照表では繰越利益剰余金に含めて表示する(帳簿上は損益勘定から繰越利益剰余金勘定へ振り替える)。この「純利益が2箇所に同額で現れる」構造を理解すれば、検算にも使える。
本試験対策としては、第3問で決算整理事項が7〜9個並ぶ形式に慣れることが不可欠である。時間配分は60分中20〜25分が目安で、全ての整理仕訳を下書きしてから記入するより、1項目ずつ仕訳→記入を繰り返す方がミスが少ない。当期純利益の金額が合わなくても、個々の勘定科目の行で部分点が積み上がる採点方式(統一試験・ネット試験共通)のため、途中で詰まっても空欄にせず埋め切ることが得点戦略上重要である。また、財務諸表作成問題では表示科目への変換(仕入→売上原価、売上→売上高、繰越商品→商品、貸倒引当金・減価償却累計額の控除形式)を落とすと複数箇所で失点するため、精算表との違いを意識した演習を重ねるべきである。
この章の問題から3問
8桁精算表において、当期純利益が生じた場合、その金額は損益計算書欄の借方と貸借対照表欄の貸方に記入される。
正解 ○(正しい)
正しい。損益計算書欄は収益(貸方)>費用(借方)のとき貸借差額=当期純利益を借方に記入して貸借を一致させ、同額を貸借対照表欄の貸方(純資産の増加=繰越利益剰余金の増加)に記入する。純損失の場合は逆になる(企業会計原則の損益計算書原則・貸借対照表原則に基づく複式簿記の貸借一致の構造)。
三分法を採用している場合、決算整理前残高試算表の繰越商品勘定の残高は、期末商品棚卸高を示している。
正解 ×(誤り)
誤り。ひっかけは「期末」。三分法では期中に繰越商品勘定を動かさないため、決算整理前の繰越商品残高は期首商品棚卸高のままである。決算整理仕訳「仕入/繰越商品」「繰越商品/仕入」を行って初めて期末商品棚卸高に更新され、売上原価(期首+当期仕入−期末)が仕入勘定で算定される。
財務諸表を作成する際、貸借対照表には繰越商品勘定の期末残高を「繰越商品」という科目名のまま表示する。
正解 ×(誤り)
誤り。ひっかけは勘定科目名と表示科目名の混同。帳簿上の勘定科目は「繰越商品」だが、貸借対照表上の表示科目は「商品」である。同様に損益計算書では仕入→「売上原価」、売上→「売上高」と表示する(企業会計原則 貸借対照表原則・損益計算書原則の表示ルール)。精算表では勘定科目のままである点との対比が頻出。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。