社会保障制度(年金・医療・介護保険の体系)
年金は基礎年金+厚生年金の2階建て、医療は被用者保険・国保・後期高齢者医療の三本柱、介護は市町村を保険者とする独立制度——各制度の「保険者・被保険者・給付・費用負担」の4要素の対応関係を正確に区別できることが合否を分ける。
わが国の社会保障は、1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会勧告により、社会保険、公的扶助(国家扶助)、社会福祉、公衆衛生(及び医療)の4部門で体系づけられた。中核をなす社会保険は、年金保険、医療保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険の5つで構成され、保険料を主たる財源とし、保険事故に対して定型的な給付を行う防貧的な仕組みである点で、税を財源とし資力調査(ミーンズテスト)を伴う救貧的な公的扶助(生活保護)と対比される。1961年(昭和36年)には国民健康保険の全国実施と国民年金の全面施行により「国民皆保険・皆年金」体制が確立した。本試験では、各制度の根拠法(国民年金法、厚生年金保険法、健康保険法、国民健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法)と、保険者・被保険者・給付・費用負担の対応関係が繰り返し問われるため、この4要素を軸に整理することが学習の出発点である。
公的年金は、全国民共通の国民年金(基礎年金)を1階、被用者を対象とする厚生年金保険を2階とする2階建て構造である。基礎年金は1985年(昭和60年)改正(1986年施行)で導入され、2015年(平成27年)10月には被用者年金一元化により共済年金が厚生年金に統合された。国民年金の被保険者は、自営業者・学生等の第1号被保険者、厚生年金の被保険者である第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者である第3号被保険者に区分される(国民年金法第7条)。第1号被保険者の保険料は定額で、法定免除・申請免除のほか、学生納付特例、50歳未満の納付猶予、産前産後期間の免除(2019年4月〜)がある。厚生年金の保険料率は標準報酬の18.3%で労使折半とされ、2017年9月以降固定されている。基礎年金給付費の2分の1は国庫負担であり、2009年度から恒久化された。また短時間労働者への被用者保険の適用拡大が段階的に進められ、2024年10月からは従業員51人以上規模の企業まで適用対象が広がっている。
年金給付は老齢・障害・遺族の3種類である。老齢基礎年金の受給資格期間は、年金機能強化法により2017年(平成29年)8月に25年から10年へ短縮された。支給開始は原則65歳であるが、60歳からの繰上げ(1962年4月2日以降生まれは1月につき0.4%減額)と75歳までの繰下げ(1月につき0.7%増額、最大84%。2022年4月に上限が70歳から75歳へ引上げ)を選択できる。障害基礎年金は1級・2級の2区分で、1級の額は2級の1.25倍である(国民年金法第33条)。遺族基礎年金の支給対象は「子のある配偶者」又は「子」であり、2014年4月からは父子家庭も対象となった。年金額の改定には、被保険者数の減少と平均余命の伸びに応じて給付水準の伸びを自動的に抑制するマクロ経済スライドが2004年(平成16年)改正で導入されている。在職中の老齢厚生年金には在職老齢年金の仕組みがあり、賃金と年金月額の合計が支給停止調整額を超えると年金の一部又は全部が支給停止される。
医療保険は、職域を基盤とする被用者保険と、地域を基盤とする国民健康保険、そして後期高齢者医療制度の三本柱で構成される。被用者保険には、主に中小企業の被用者が加入する全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)、大企業等の健康保険組合が運営する組合管掌健康保険、公務員等の共済組合、船員保険がある。国民健康保険は被用者保険の適用を受けない自営業者・無職者等を被保険者とし、2018年(平成30年)度からは都道府県が財政運営の責任主体となり、市町村とともに保険者となった(国民健康保険法第4条)。被用者保険と異なり国保には被扶養者の仕組みがなく、世帯の加入者全員がそれぞれ被保険者となる。後期高齢者医療制度は「高齢者の医療の確保に関する法律」(老人保健法を全面改正)に基づき2008年(平成20年)4月に創設され、75歳以上の者と65歳以上75歳未満で一定の障害の状態にある旨の認定を受けた者を被保険者とし、都道府県単位で全市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が運営する。
医療保険の一部負担金(自己負担)は、義務教育就学前が2割、就学後から69歳までが3割、70〜74歳が2割(現役並み所得者は3割)、75歳以上が1割(一定以上の所得がある者は2022年10月から2割、現役並み所得者は3割)である。自己負担が高額となった場合には、所得区分に応じた自己負担限度額を超える部分が高額療養費として支給され、医療と介護の自己負担を年単位で合算する高額介護合算療養費制度もある。現金給付として、被用者保険には傷病手当金(労務不能4日目から支給、支給期間は通算1年6か月)と出産手当金があるが、国民健康保険では傷病手当金は任意給付とされ実施例は限られる。出産育児一時金は2023年4月から原則50万円に引き上げられた。後期高齢者医療の財源は、公費約5割、現役世代の各医療保険者が拠出する後期高齢者支援金約4割、被保険者の保険料約1割で構成され、保険料率は広域連合ごとに条例で定められる。負担割合の数字は毎年のように問われる最頻出事項である。
介護保険は介護保険法(1997年成立、2000年施行)に基づき、市町村及び特別区を保険者とする(同法第3条)。被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に区分され、第2号被保険者は末期がん、初老期における認知症、脳血管疾患等の加齢に伴う16の特定疾病を原因とする場合に限り給付を受けられる。給付を受けるには市町村の要介護認定が必要であり、認定調査と主治医意見書に基づく一次判定(コンピュータ判定)を経て、市町村に設置される介護認定審査会が審査・判定を行う。要介護状態区分は要支援1・2、要介護1〜5の7区分で、認定の効力は申請日に遡る(同法第27条)。要介護者には介護給付(居宅・施設・地域密着型サービス)、要支援者には予防給付が支給され、ケアマネジメントは介護支援専門員(ケアマネジャー)が担う。要介護認定や保険料に関する不服申立ては、都道府県に設置される介護保険審査会に対して行う点も頻出である。
介護保険の利用者負担は原則1割であるが、一定以上所得者は2割(2015年8月〜)、特に所得の高い者は3割(2018年8月〜)である。給付費の財源は公費50%(居宅給付費は国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%、施設等給付費は国20%・都道府県17.5%・市町村12.5%)と保険料50%で賄われ、第1号・第2号の保険料負担割合は3年ごとに見直される(2024〜2026年度は23%対27%)。第1号保険料は市町村が所得段階別に定め、年金からの特別徴収を原則とする。第2号保険料は各医療保険者が医療保険料と一体的に徴収し、社会保険診療報酬支払基金を通じて交付される。市町村は3年を1期とする市町村介護保険事業計画を策定し(都道府県は介護保険事業支援計画)、2005年改正で創設された地域包括支援センターが総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントを担う。2011年改正以降は地域包括ケアシステムの構築が推進され、地域支援事業として介護予防・日常生活支援総合事業が全市町村で実施されている。
この章の問題から3問
介護保険の保険者は、市町村及び特別区である。
正解 ○(正しい)
正しい。介護保険法第3条により保険者は市町村及び特別区である。国民健康保険の財政運営責任主体が2018年度から都道府県になったことや、後期高齢者医療の運営主体(広域連合)と混同させるのが定番のひっかけ。「介護保険の保険者=都道府県」とする誤りの選択肢が頻出する。
後期高齢者医療制度の運営主体は、都道府県である。
正解 ×(誤り)
誤り。運営主体は、都道府県の区域ごとに全市町村・特別区が加入して設立される後期高齢者医療広域連合である(高齢者の医療の確保に関する法律第48条)。「都道府県単位」という地理的範囲から「都道府県が運営」と読み替えさせるひっかけ。保険料率の決定も広域連合ごとに行われる。
老齢基礎年金を受給するためには、保険料納付済期間と保険料免除期間等を合算した受給資格期間が25年以上必要である。
正解 ×(誤り)
誤り。年金機能強化法(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)により、2017年(平成29年)8月から受給資格期間は25年から10年に短縮された(国民年金法第26条)。改正前の「25年」を提示するのが典型的なひっかけである。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。