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保健医療と権利擁護(成年後見制度・虐待防止法)

法定後見3類型の対象・権限・本人同意の要否の区別と、高齢者虐待防止法(段階的通報義務)・障害者虐待防止法(全件通報義務・使用者を含む3主体)の対比、通報先=市町村が最頻出。条文の文言で正確に押さえよ。

成年後見制度は、精神上の障害により判断能力(事理弁識能力)が不十分な者の権利を擁護する民法上の制度であり、法定後見と任意後見に大別される。法定後見は判断能力の程度に応じて三類型に分かれる。後見は「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(民法7条)、保佐は「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」(同11条)、補助は「事理を弁識する能力が不十分な者」(同15条)を対象とし、家庭裁判所の審判により開始される。重要な相違点として、補助開始の審判を本人以外の者の請求により行う場合には本人の同意が必要である(15条2項)のに対し、後見・保佐の開始に本人の同意は要件とされていない。本試験では三類型の対象者の文言の入替えや、本人同意の要否を問う出題が繰り返されており、条文の文言レベルで正確に区別しておく必要がある。

三類型では保護者に付与される権限が異なる。成年後見人は財産に関する法律行為について包括的な代理権を有し、成年被後見人の行為を取り消すことができるが、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消すことができない(民法9条ただし書)。保佐人は民法13条1項所定の重要な行為(借財・保証、不動産その他重要な財産の処分、相続の承認・放棄等)について同意権・取消権を有し、代理権は申立ての範囲で個別に付与される。補助人の同意権・代理権はいずれも申立ての範囲で付与され、付与に本人の同意を要する。なお、成年後見人の職務は財産管理と身上監護(身上保護)に関する法律行為に限られ、手術等の医的侵襲行為への同意権は認められていない。また婚姻・離婚・養子縁組などの身分行為は代理できず、成年被後見人も事理弁識能力を一時回復した時であれば、医師2人以上の立会いの下で遺言をすることができる(民法973条)。

法定後見開始の審判の申立権者は、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等であり、加えて65歳以上の者・知的障害者・精神障害者については「その福祉を図るため特に必要があると認めるとき」に市町村長にも申立権が認められている(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健福祉法51条の11の2)。最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」によれば、近年は申立人として市区町村長が最も多く、身寄りのない高齢者等の権利擁護における行政の役割が拡大している。成年後見人等に選任される者は親族が約2割にとどまり、司法書士・弁護士・社会福祉士等の第三者(専門職)後見人が多数を占める。申立ての動機は預貯金等の管理・解約が最多であり、三類型では後見類型の利用が最も多い。後見等の内容は戸籍には記載されず、後見登記等に関する法律に基づき法務局の後見登記ファイルに登記される。

任意後見制度は、本人が判断能力を有するうちに、将来の判断能力低下に備えて任意後見人となるべき者と代理権の範囲をあらかじめ契約で定めておく制度である。任意後見契約は公正証書によって締結しなければならず(任意後見契約に関する法律3条)、本人の判断能力が不十分となった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力を生ずる(同法2条1号・4条)。制度の利用促進については、成年後見制度の利用の促進に関する法律(2016年施行)に基づき基本計画が策定され、第二期成年後見制度利用促進基本計画(2022〜2026年度)では、権利擁護支援の地域連携ネットワークづくりと中核機関の整備、本人の意思決定支援・身上保護を重視した運用への転換が掲げられている。また2019年には、成年被後見人等の権利制限措置の適正化を図る一括整備法により、公務員等の資格に係る欠格条項が原則として削除された。

日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な者を対象に、福祉サービスの利用援助、日常的金銭管理、書類等の預かりを行う事業であり、社会福祉法上の福祉サービス利用援助事業として第二種社会福祉事業に位置づけられる。実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会であり(窓口業務は市区町村社会福祉協議会等に委託できる)、利用は本人との契約に基づくため、契約内容を理解できる程度の判断能力が本人に残っていることが必要である。成年後見制度が財産管理等の法律行為の代理・取消しにまで及ぶのに対し、本事業は日常的な生活支援にとどまり、不動産処分のような重要な法律行為の代理はできない。判断能力が契約締結可能な水準を下回った場合には成年後見制度への移行が検討されることになり、両制度の対象・機能の違いは本試験の頻出論点である。

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法、2006年4月施行)は、「高齢者」を65歳以上の者と定義し、虐待を養護者によるものと養介護施設従事者等によるものとに分けて規定する。虐待の類型は、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待の5類型である。通報義務には段階があり、養護者による虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、生命又は身体に重大な危険が生じている場合は速やかに市町村へ通報しなければならず(義務・7条1項)、それ以外の場合は通報するよう努めなければならない(努力義務・同条2項)。養介護施設従事者等は、自らの施設等で虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合、速やかに市町村へ通報する義務を負う(21条1項)。市町村は、虐待により生命・身体に重大な危険が生じているおそれがあるときは、地域包括支援センターの職員等に居所への立入調査をさせることができ(11条)、必要に応じて警察署長に援助を要請できる(12条)。

障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法、2012年10月施行)は、虐待の主体を養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者の3者と定め、虐待類型は高齢者虐待と同じ5類型である。学校・病院・保育所での行為は通報対象となる「障害者虐待」の定義に含まれず、それぞれの管理者に防止措置義務が課される構造(29〜31条)も問われやすい。通報については、虐待を受けたと思われる障害者を発見した者すべてに市町村(使用者による虐待は市町村又は都道府県)への通報義務が課され、高齢者虐待防止法のような重大な危険の有無による区別はない。市町村には市町村障害者虐待防止センター、都道府県には都道府県障害者権利擁護センターの機能が置かれる。児童虐待の防止等に関する法律における児童虐待は、身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待の4類型で経済的虐待を含まず、児童虐待を受けたと思われる児童の発見者には通告義務がある(6条)。2019年改正で親権者等による体罰が禁止され、2022年の民法改正では懲戒権規定が削除され、体罰等の禁止が明記された(民法821条)。

この章の問題から3問

補助開始の審判を本人以外の者の請求によって行うには、本人の同意がなければならない。

正解 ○(正しい)

正しい。民法15条2項が根拠。ひっかけは保佐・後見との混同で、保佐開始(11条)・後見開始(7条)の審判に本人の同意は不要である。判断能力の低下が最も軽い補助類型についてのみ、自己決定尊重の観点から本人同意が要件とされている。

成年後見人は、成年被後見人が行った日用品の購入その他日常生活に関する行為についても、取り消すことができる。

正解 ×(誤り)

誤り。民法9条本文は成年被後見人の法律行為を取り消しうるとするが、同条ただし書により「日用品の購入その他日常生活に関する行為」は取消しの対象外である。残存能力・自己決定の尊重(ノーマライゼーション)の趣旨に基づく例外で、「すべて取り消せる」と読ませるのが定番のひっかけ。

養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じているか否かにかかわらず、市町村に通報しなければならない。

正解 ×(誤り)

誤り。高齢者虐待防止法7条は二段構えで、生命又は身体に重大な危険が生じている場合は通報義務(1項)、それ以外の場合は通報の努力義務(2項)である。ひっかけは障害者虐待防止法(7条)との混同で、同法では危険の程度を問わず発見者全員に通報義務が課される。

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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。