財務・会計
財務・会計は「制度会計(企業会計原則・各会計基準)」「経営分析・CVP」「ファイナンス(NPV・WACC・CAPM)」の三本柱であり、公式の暗記でなく計算過程を手で再現できることが60点確保の絶対条件である。
財務・会計は中小企業診断士1次試験の中核科目であり、大きく「制度会計(財務諸表論・簿記)」と「管理会計・ファイナンス」の二領域から出題される。制度会計の基礎は企業会計原則(昭和24年に経済安定本部企業会計制度対策調査会が設定・その後継組織である企業会計審議会により最終改正は昭和57年)であり、真実性の原則を最高規範として、正規の簿記の原則、資本取引・損益取引区分の原則、明瞭性、継続性、保守主義、単一性の七つの一般原則が置かれる。会社法第435条は株式会社に計算書類(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表)の作成を義務付け、金融商品取引法は有価証券報告書提出会社に財務諸表(キャッシュ・フロー計算書を含む)の開示を求める。両法の開示体系の違い、および会社計算規則と財務諸表等規則の位置付けは頻出の制度論点である。
個別の会計基準では、企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準が出題の根拠となる。特に「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)は、契約の識別から履行義務の充足までの5ステップで収益を認識する枠組みであり、2021年4月以後開始事業年度から強制適用されている点を押さえる。棚卸資産は「棚卸資産の評価に関する会計基準」(第9号)により原価法(収益性の低下による簿価切下げ)が原則で、トレーディング目的を除き低価法的処理が強制される。固定資産では減価償却の定額法・定率法・生産高比例法の計算、「固定資産の減損に係る会計基準」による減損の兆候→認識→測定の3段階、リース取引(第13号)のファイナンス・リースの売買処理が繰り返し問われる。
損益計算書と貸借対照表の構造理解は計算問題の土台である。売上総利益→営業利益→経常利益→税引前当期純利益→当期純利益という段階利益の区分、営業外損益と特別損益の分類は毎年のように問われる。キャッシュ・フロー計算書では、営業活動・投資活動・財務活動の3区分と、間接法における調整(減価償却費の加算、売上債権の増加は減算、仕入債務の増加は加算、棚卸資産の増加は減算)が最頻出である。小計より下の利息・法人税等の扱い、受取利息・支払利息の記載区分の選択(営業/投資・財務)も正誤問題の定番であるから、間接法の調整ロジックを機械的でなく因果で理解しておくこと。
経営分析は診断士2次試験にも直結する最重要領域である。収益性は売上高総利益率・売上高営業利益率・ROA(総資本営業利益率等)・ROE(自己資本利益率)で測り、ROEはデュポン分解により売上高当期純利益率×総資本回転率×財務レバレッジに分解できる。安全性は流動比率(流動資産÷流動負債)、当座比率、固定比率、固定長期適合率(固定資産÷(自己資本+固定負債))、自己資本比率、インタレスト・カバレッジ・レシオで測る。効率性は総資本回転率、棚卸資産回転率(回転期間)、売上債権回転期間が中心である。各指標の分子・分母と「高い方が良いか低い方が良いか」の方向感を、単なる暗記でなく貸借対照表の構造から導けるようにする。
管理会計ではCVP分析(損益分岐点分析)が最頻出である。損益分岐点売上高=固定費÷貢献利益率(1−変動費率)、目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)÷貢献利益率、安全余裕率=(実際売上高−損益分岐点売上高)÷実際売上高、経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益の各公式は計算問題として毎年出題される。原価計算は「原価計算基準」(昭和37年・大蔵省企業会計審議会)が根拠であり、費目別→部門別→製品別の計算手続、個別原価計算と総合原価計算の区別、直接原価計算と全部原価計算の営業利益差異(固定製造間接費の在庫繰延)、標準原価計算における価格差異・数量差異の分解が主要論点である。
ファイナンス領域では、貨幣の時間価値を出発点に、正味現在価値法(NPV)、内部収益率法(IRR)、回収期間法による投資評価が問われる。NPV=各期キャッシュ・フローの現在価値合計−初期投資額であり、NPV>0なら投資実行が原則、NPVとIRRの優劣(再投資仮定・相互排他的投資での順位逆転)も論点となる。資本コストは加重平均資本コスト(WACC)=負債比率×負債コスト×(1−実効税率)+自己資本比率×株主資本コストで計算し、負債の節税効果(タックス・シールド)を織り込む点が引っかけどころである。株主資本コストはCAPM(期待収益率=リスクフリーレート+β×市場リスクプレミアム)で推定するのが標準である。
証券投資論とその他の頻出論点も落とせない。ポートフォリオ理論では、2資産の分散投資効果は相関係数が+1未満のとき生じ、相関係数−1で理論上リスクをゼロにできること、効率的フロンティア、システマティック・リスク(βで測る市場リスク・分散投資で消せない)とアンシステマティック・リスクの区別を押さえる。配当割引モデル(定率成長型: 株価=次期配当÷(株主資本コスト−成長率))、MM理論(完全市場下で資本構成は企業価値に無関係・法人税があれば負債の節税効果分だけ負債企業の価値が高い)、デリバティブ(先物・オプション・スワップ)の基本、オプションのコール・プットの損益図も正誤問題で頻出である。最後に、税制面では法人税の課税所得は会計利益に申告調整(加算・減算)を加えて算出する点、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式・2023年10月開始)が仕入税額控除の要件である点まで確認しておきたい。
この章の問題から3問
キャッシュ・フロー計算書を間接法で作成する場合、売上債権の増加額は営業活動によるキャッシュ・フローの計算上、税引前当期純利益に加算する。
正解 ×(誤り)
誤り。売上債権の増加は「売上として利益に計上されたが現金は未回収」を意味するため減算する。加算するのは売上債権の減少・仕入債務の増加・減価償却費など(連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準)。増加=加算と誤答させる典型のひっかけ。
収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)では、顧客との契約から生じる収益は、履行義務を充足した時点または充足するにつれて認識する。
正解 ○(正しい)
正しい。同基準は①契約の識別②履行義務の識別③取引価格の算定④取引価格の配分⑤履行義務の充足による収益認識の5ステップを定め、一時点または一定期間にわたる充足に応じて収益を認識する。2021年4月以後開始事業年度から強制適用。
2つの証券の収益率の相関係数が+1である場合、分散投資によるリスク低減効果が最も大きくなる。
正解 ×(誤り)
誤り。相関係数+1(完全正相関)では分散投資効果はゼロで、ポートフォリオのリスクは加重平均になるだけ。リスク低減効果が最大になるのは相関係数−1のときで、理論上リスクをゼロにできる。符号を逆にするひっかけ。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。