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中小企業経営・中小企業政策

中小企業者の定義(基本法2条:資本金基準と従業員基準の「いずれか」充足、製造業3億円/300人・卸売業1億円/100人・サービス業5,000万円/100人・小売業5,000万円/50人)と小規模企業者(20人・商業サービス業5人以下)を正確に暗記することが全施策理解の土台である。

中小企業基本法第2条第1項は、業種ごとに資本金基準と従業員基準の「いずれか」を満たす者を中小企業者と定義する。すなわち、製造業・建設業・運輸業その他の業種は資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下である。両基準は「または」で結ばれるため、資本金が基準を超えていても従業員数が基準以下であれば中小企業者に該当する点が頻出の引っかけである。また、飲食店は小売業に分類されること、業種区分は日本標準産業分類に基づき判定されることも押さえておく。この定義は補助金・税制・金融支援など各種施策の適用対象を画する基礎であり、本科目で最も出題頻度が高い論点である。

中小企業基本法第2条第5項は小規模企業者を「おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業またはサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については5人)以下の事業者」と定義する。小規模企業者の判定に資本金基準はなく従業員数のみによる点が中小企業者の定義との重要な相違である。なお、政令により宿泊業・娯楽業は中小企業信用保険法や小規模企業共済法等の適用上20人以下まで小規模企業者として扱われる特例がある。2014年に制定された小規模企業振興基本法は、小規模企業の「事業の持続的発展」を基本原則として位置づけ、政府に5年ごとの基本計画の策定を義務づけた。同年の商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)改正により、商工会・商工会議所が作成する経営発達支援計画の認定制度が創設され、その後の2019年改正により、同計画は市町村と共同で作成する仕組みに改められた(併せて事業継続力強化支援計画の認定制度も創設)。創設は2014年改正、市町村との共同作成化は2019年改正という改正年の対応を混同しないこと。

中小企業白書・小規模企業白書の統計データも毎年出題される。中小企業基本法上の中小企業は企業数で全企業の約99.7%、うち小規模企業が約85%を占める。従業者数では中小企業が全体の約7割弱を雇用し、付加価値額では5割強を生み出す。業種別では企業数で小売業・宿泊飲食サービス業などの構成比が高く、開業率・廃業率は雇用保険事業年報ベースで開業率が4〜5%台と欧米(10%前後)より低位にある。経営者の高齢化と後継者不在は構造的課題であり、経営者年齢のピークは高齢側へ移動を続けている。白書からの出題は「増加しているか減少しているか」「大企業と比べて高いか低いか」という大小・増減の方向を問う形式が中心のため、絶対値より傾向を優先して記憶することが効率的である。

中小企業等経営強化法は、経営革新計画・経営力向上計画・先端設備等導入計画(現在は「導入促進基本計画」に基づき市区町村が認定)などの計画認定制度を束ねる法律である。経営革新計画は「新事業活動」により経営の相当程度の向上を図る計画で、数値目標は付加価値額(または一人当たり付加価値額)が年率3%以上(計画期間3年で9%、4年で12%、5年で15%以上)、かつ給与支給総額が年率1.5%以上の伸びである。承認により日本政策金融公庫の特別利率融資や信用保証の特例等の支援措置が受けられるが、支援措置の適用には別途各機関の審査がある点に注意する。経営力向上計画は人材育成・財務管理・設備投資等により経営力を向上させる計画で、基本方針上、労働生産性を計画期間に応じて3年計画:1%以上・4年計画:1.5%以上・5年計画:2%以上向上させることを目標とし(経営革新計画のような年率目標ではない点に注意)、認定により中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)や金融支援が利用できる。

取引適正化の中心は下請代金支払遅延等防止法(下請法)である。親事業者・下請事業者の該当性は資本金区分で判定され、製造委託・修理委託等では資本金3億円超の親事業者と3億円以下の下請事業者、資本金1,000万円超3億円以下の親事業者と1,000万円以下の下請事業者の組合せが対象となる(情報成果物作成委託・役務提供委託は5,000万円・1,000万円区分)。親事業者には発注書面の交付、書類の作成・保存(2年間)、支払期日を給付受領日から60日以内に定める義務、遅延利息(年率14.6%)の支払義務の4つの義務と、受領拒否・下請代金の減額・買いたたき等11の禁止行為が課される。なお2025年成立の改正により、法律名は「中小受託取引適正化法(取適法)」に改められ、従業員数基準の追加や手形払の禁止等が措置された(2026年1月施行)。改正前後の内容が問われ得るため、施行時期と併せて整理しておく。

共済制度と事業承継支援も定番論点である。小規模企業共済(運営:中小企業基盤整備機構)は小規模企業の経営者・役員・個人事業主のための退職金制度で、掛金は月額1,000円から70,000円まで500円刻み、掛金全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除できる。中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐ制度で、掛金は月額5,000円から20万円(積立上限800万円)、取引先倒産時には無担保・無保証人・無利子で「回収困難となった売掛金債権等の額」と「掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない額を借り入れできるが、借入額の10分の1相当の掛金が権利消滅する点が頻出の引っかけである。法人版事業承継税制の特例措置は、特例承継計画の提出を前提に、対象株式の全部(100%)について贈与税・相続税の納税猶予割合100%を認めるもので、一般措置(対象株式3分の2・相続税猶予80%)との相違が問われる。

資金調達・信用補完制度では、信用保証協会による信用保証(普通保証2億円・無担保保証8,000万円が基本の限度額)と、責任共有制度により原則として金融機関が20%を負担する仕組み(100%保証となるセーフティネット保証等の例外あり)を押さえる。日本政策金融公庫の国民生活事業・中小企業事業の役割分担、小規模事業者経営改善資金融資(マル経融資)が商工会・商工会議所の経営指導(原則6か月以上)を受けた小規模事業者に対する無担保・無保証人・低利の融資であることも頻出である。補助金では、小規模事業者持続化補助金(販路開拓等、商工会・商工会議所の支援を受けて申請)、ものづくり補助金、IT導入補助金、事業承継・M&A補助金の対象者と目的の対応関係が問われる。制度名・実施主体・対象者・支援内容を縦横の表で整理し、「誰のための・何のための制度か」を一対一で答えられる状態にすることが得点の近道である。

この章の問題から3問

中小企業基本法において、小売業を主たる事業とする会社は、資本金5,000万円以下または常時使用する従業員50人以下のいずれかを満たせば中小企業者に該当する。

正解 ○(正しい)

正しい。中小企業基本法第2条第1項第4号の小売業の基準は資本金5,000万円以下「または」従業員50人以下であり、いずれか一方を満たせば中小企業者に該当する。資本金・従業員の両方を満たす必要があるとする出題が典型的な引っかけである。

中小企業基本法における小規模企業者の定義では、サービス業を主たる事業とする事業者はおおむね常時使用する従業員20人以下の者をいう。

正解 ×(誤り)

誤り。中小企業基本法第2条第5項では、小規模企業者は従業員おおむね20人以下だが、商業(卸売業・小売業)またはサービス業は「5人以下」である。20人以下が適用されるのは製造業・建設業等であり、業種の入れ替えが定番の引っかけ。なお政令特例で宿泊業・娯楽業を20人以下とする法律(中小企業信用保険法等)もある点に注意。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の共済金の借入れは無担保・無保証人・無利子であるが、借入額の10分の1に相当する額が納付した掛金から控除(権利消滅)される。

正解 ○(正しい)

正しい。中小企業倒産防止共済法に基づく共済金貸付は無担保・無保証人・無利子だが、その代わり借入額の1/10相当の掛金が権利消滅する。「無利子だから負担ゼロ」と誤解させる出題が多い。借入限度は回収困難額と掛金総額の10倍(最高8,000万円)のいずれか少ない額。

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