民法② 担保物権・債権・親族相続
抵当権(物上代位372条・304条、被担保債権の範囲375条、法定地上権388条、一括競売389条)、債権法改正後の時効・保証・債権譲渡の条文、嫡出推定改正と配偶者居住権・遺留分の金銭債権化を、判例の結論と施行時期まで正確に押さえることが得点の核心である。
担保物権では抵当権が最頻出である。抵当権は目的物の占有を移転せずに設定できる約定担保物権であり(民法369条)、その効力は付加一体物に及ぶ(370条)。判例上、抵当権設定当時に存在した従物にも効力が及ぶとされる(最判昭44.3.28参照の宅地と石灯籠等の事案)。物上代位(372条・304条)は、賃料債権にも及ぶが、抵当権者は「払渡し又は引渡し」の前に自ら差押えをしなければならない(最判平10.1.30)。また抵当権侵害に対する妨害排除請求(最大判平11.11.24、最判平17.3.10)も繰り返し出題される。被担保債権の範囲は、元本のほか満期となった最後の2年分の利息・遅延損害金に限定される(375条)点は後順位抵当権者等との関係での制限であることに注意する。
法定地上権(388条)は択一・記述双方で問われる中核論点である。成立要件は、①抵当権設定当時に土地上に建物が存在すること、②設定当時に土地と建物が同一所有者に属すること、③土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと、④競売により所有者を異にするに至ったこと、の4つである。更地に抵当権を設定した後に建物が築造された場合は法定地上権は成立せず、この場合の一括競売(389条)では建物の代価から優先弁済を受けられない点も頻出。共同抵当の建物再築事案(最判平9.2.14)では、新建物に土地と同順位の共同抵当権が設定される等の特段の事情がない限り法定地上権は成立しないとされた。根抵当権(398条の2以下)では、元本確定前の被担保債権の範囲・債務者の変更(398条の4)、確定期日(398条の6)、元本確定事由(398条の20)が不動産登記法との複合で問われる。
債権分野では、平成29年改正民法(債権法改正・2020年4月1日施行)後の条文知識が前提となる。消滅時効は「権利を行使することができることを知った時から5年」「権利を行使することができる時から10年」の二本立て(166条1項)となり、時効の完成猶予・更新(147条以下)の概念に再編された。裁判上の請求は完成猶予事由であり、確定判決等により権利が確定したときに更新の効力が生じる。債務不履行による損害賠償(415条)は「債務者の責めに帰することができない事由」が免責事由として明文化され、解除(541条・542条)は債務者の帰責事由を要件としない制度に改められた。催告解除では不履行が軽微であるときは解除できない(541条ただし書)点が出題される。
多数当事者の債権債務と保証も改正の影響が大きい。連帯債務では、履行の請求は相対的効力事由に変更され(441条)、絶対的効力事由は弁済等のほか更改(438条)・相殺(439条1項)・混同(440条)に限定された。保証では、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする個人保証契約は、原則として公正証書による保証意思宣明(465条の6)を経なければ効力を生じない。個人根保証契約は極度額の定めが書面でなければ無効である(465条の2)。債権譲渡(466条)は、譲渡制限特約に反する譲渡も有効としつつ、悪意・重過失の譲受人に対する履行拒絶等を認める構成に改められ、対抗要件(467条)の確定日付ある通知の到達の先後で優劣を決する判例法理(最判昭49.3.7)は維持されている。
弁済・相殺も頻出である。第三者弁済(474条)は、弁済をするについて正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済できないのが原則である(債権者が善意の場合等の例外あり)。改正法は受領権者としての外観を有する者に対する弁済(478条)として旧・債権の準占有者への弁済を再構成した。相殺では、悪意による不法行為に基づく損害賠償債務および人の生命・身体の侵害による損害賠償債務の債務者は相殺をもって対抗できない(509条)。差押えと相殺については、差押え前に取得した債権による相殺は差押え後でも可能とする無制限説が明文化された(511条1項)。
親族法では、婚姻の成立と効力、親子関係が中心である。婚姻適齢は男女とも18歳に統一され(731条・令和4年4月1日施行)、成年擬制の規定(旧753条)は削除された。女性の再婚禁止期間(旧733条)は令和6年4月1日施行の改正で廃止され、嫡出推定(772条)も再婚後の出産は再婚後の夫の子と推定する規律に改められた。嫡出否認の訴えの出訴権者は父のほか子・母等に拡大され、出訴期間は原則3年とされた(774条・777条)。利益相反行為(826条)は、行為の外形から客観的に判断するのが判例であり(最判昭42.4.18)、親権者が子を代理して自己の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為は利益相反行為に当たる。
相続法では、法定相続分(900条)、相続の承認・放棄(915条以下)、遺産分割、遺言、配偶者居住権が柱である。相続放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされ(939条)、代襲原因とならない(887条2項対照)。平成30年相続法改正により、配偶者居住権(1028条以下・令和2年4月1日施行)、自筆証書遺言の財産目録の自書不要化(968条2項)、遺留分侵害額請求権の金銭債権化(1046条)が導入された。遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合は3分の1、それ以外は2分の1を法定相続分に乗じて算定する(1042条)。共同相続された預貯金債権は遺産分割の対象となる(最大決平28.12.19)一方、909条の2により一定額の単独払戻しが認められる。令和3年改正(令和5年4月1日施行)では、相続開始から10年経過後の遺産分割は原則として具体的相続分によらず法定相続分による(904条の3)とされた点も新しい出題領域である。
この章の問題から3問
抵当権者は、物上代位権を行使して抵当不動産の賃料債権から優先弁済を受けるには、その払渡しまたは引渡しの前に自ら差押えをしなければならない。
正解 ○(正しい)
正しい。民法372条が準用する304条1項ただし書により、払渡し・引渡し前の差押えが必要であり、判例(最判平10.1.30)は抵当権者自身による差押えを要するとする。他の債権者が差し押さえただけでは足りない点がひっかけの定番。
更地に抵当権が設定された後、抵当地上に建物が築造され競売により土地と建物の所有者が異なるに至った場合、建物のために法定地上権が成立する。
正解 ×(誤り)
誤り。法定地上権(民法388条)は「抵当権設定当時」に土地上に建物が存在することが要件であり、更地に設定した後の築造建物には成立しない。この場合は一括競売(389条)が可能だが、建物の代価からは優先弁済を受けられない。
連帯債務者の一人に対する履行の請求は、債権者と他の連帯債務者の一人が別段の意思表示をしない限り、他の連帯債務者に対してもその効力を生じる。
正解 ×(誤り)
誤り。平成29年改正により履行の請求は相対的効力事由となった(民法441条本文)。絶対的効力が認められるのは弁済等のほか更改(438条)・相殺(439条1項)・混同(440条)に限られる。改正前の絶対効(旧434条)との入れ替えを狙ったひっかけ。
登録不要 ・ 採点と解説はその場 ・ 進捗は端末に保存
司法書士の他の章
本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。