不動産登記法
共同申請主義(60条)とその例外(判決63条・相続・保存74条・仮登記107条)を軸に、根抵当権の元本確定前後の可否(変更契約は確定前限定・免責的債務引受等による債務者変更登記は確定後も可)と相続登記義務化(76条の2)を条文ベースで正確に区別できることが合否を分ける。
不動産登記は、不動産の表示および権利を公示する制度であり、不動産登記法(平成16年法律第123号)がその根拠法である。登記記録は一筆の土地または一個の建物ごとに作成され(物的編成主義・同法2条5号)、表題部と権利部に区分される。権利部はさらに甲区(所有権に関する登記)と乙区(所有権以外の権利に関する登記)に分かれる。権利に関する登記の対抗力は民法177条に基づき、登記をしなければ物権変動を第三者に対抗できない。わが国の登記には原則として公信力がないため、無権利者名義の登記を信頼して取引しても権利取得は認められない点が、体系理解の出発点である。
権利に関する登記の申請は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則である(不登法60条)。これは登記の真正を担保する趣旨であり、判決による登記(63条1項)、相続・法人の合併による権利移転の登記(63条2項)、登記名義人の氏名等の変更・更正の登記(64条1項)、所有権保存の登記(74条)などが単独申請の例外として認められる。63条1項の「判決」は登記手続を命ずる給付判決の確定判決に限られ、確認判決や形成判決は原則として含まれない(和解調書・調停調書等の確定判決と同一の効力を有するものは含む)。共同申請主義とその例外は択一・記述双方で最頻出の論点である。
申請情報と併せて提供する添付情報も頻出である。登記識別情報(不登法22条)は登記義務者の本人確認手段であり、提供できない場合は事前通知(23条1項)または資格者代理人による本人確認情報の提供(23条4項)による。登記原因証明情報(61条)は権利に関する登記の申請に原則として必須である。所有権の登記名義人が登記義務者となる場合等には印鑑証明書(作成後3か月以内)の提供を要する。また農地の所有権移転には農地法3条の許可が第三者の許可を証する情報として必要であり、許可は物権変動の効力発生要件である点にも注意する。
所有権保存の登記は、74条1項各号(表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人、所有権を有することが確定判決によって確認された者、収用によって所有権を取得した者)および74条2項(区分建物について表題部所有者から所有権を取得した者)に列挙された者のみが申請できる。特に74条2項は区分建物特有の規定であり、この場合の転得者名義の保存登記では登記原因証明情報の提供を要し、敷地権付き区分建物では敷地権の登記名義人の承諾を要する。相続を原因とする移転登記では、法定相続分による登記、遺産分割による登記、そして令和6年4月1日施行の相続登記申請義務化(76条の2・取得を知った日から3年以内、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)および相続人申告登記(76条の3)が新しい重要論点である。
抵当権・根抵当権の登記は乙区の中心論点である。登記事項の条文の振り分けを正確に押さえること。債権額・債務者は担保権に共通の登記事項として不登法83条1項(1号・2号)に定められ、利息・損害賠償額の定め等の抵当権固有の登記事項は88条1項に定められる。根抵当権では、極度額が債権額に代わるものとして83条1項1号により、債権の範囲・債務者(および定めがあるときは元本確定期日等)が88条2項により、いずれも必須的登記事項となる。元本確定前の根抵当権には随伴性がないため、被担保債権が譲渡されても根抵当権は移転せず、根抵当権の全部譲渡・一部譲渡・分割譲渡(民法398条の12・398条の13)には設定者の承諾が効力要件である。極度額の変更(増額・減額とも)は利害関係人の承諾を得れば元本確定の前後を問わずできる(民法398条の5)のに対し、変更契約による債権の範囲・債務者の変更は元本確定前に限られる(398条の4)。ただし確定後であっても、免責的債務引受や相続を登記原因とする債務者の変更の登記は可能である(登記実務・先例)。この確定前後の区別は記述式でも合否を分ける。
登記手続の中間論点として、仮登記(105条)がある。1号仮登記は物権変動は生じているが登記識別情報や第三者の許可を証する情報を提供できない場合、2号仮登記は請求権保全のためにする。仮登記は仮登記権利者と仮登記義務者の共同申請が原則だが、仮登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる処分(108条)があるときは仮登記権利者が単独で申請できる(107条1項)。仮登記に基づく本登記の順位は仮登記の順位による(106条・順位保全効)。所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者の承諾があるときに限り申請でき(109条1項)、この場合第三者の権利に関する登記は登記官が職権で抹消する(109条2項)。
登記の抹消・更正・変更も体系的に押さえる。更正登記は登記事項に原始的な錯誤・遺漏がある場合、変更登記は後発的な変動があった場合にする。権利の登記の抹消は、抹消につき登記上の利害関係を有する第三者があるときは、その承諾情報(または対抗できる裁判の謄本)の提供が必要である(68条)。また、登記官の処分に対する審査請求(156条)は監督法務局または地方法務局の長に対してし、申請の却下事由は25条に列挙される。オンライン申請(電子情報処理組織による申請)と書面申請の双方が認められ、令和3年改正(令和8年4月施行の住所変更登記義務化を含む所有者不明土地対策)まで、近年の改正動向は毎年出題可能性が高い。
この章の問題から3問
所有権の移転の登記手続を命ずる確定した給付判決を得た登記権利者は、単独で所有権移転登記を申請することができる。
正解 ○(正しい)
不動産登記法63条1項。登記手続を命ずる給付判決の確定判決があれば勝訴した登記権利者が単独申請できる。ひっかけ注意: 所有権確認訴訟の確認判決では単独申請できない点と対比して問われる。
元本確定前の根抵当権の被担保債権が債権譲渡により第三者に移転した場合、根抵当権も当然にその第三者に移転するので、根抵当権移転の登記を申請することができる。
正解 ×(誤り)
民法398条の7第1項。元本確定前の根抵当権には随伴性がなく、被担保債権が譲渡されても根抵当権は移転しない。確定後であれば随伴性が認められ移転登記が可能となる点がひっかけ。
相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならず、正当な理由なくこれを怠ったときは過料の制裁がある。
正解 ○(正しい)
不動産登記法76条の2第1項(令和6年4月1日施行)。義務違反には164条1項により10万円以下の過料。相続人申告登記(76条の3)をすれば義務を履行したものとみなされる点も併せて押さえる。
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