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相続税の課税の仕組み

日本の相続税は『遺産取得課税方式+法定相続分による総額計算』が骨格であり、まず相続税の総額を確定してから各人の取得割合であん分する流れを理解することが全章の土台になる。

相続税は、人の死亡を原因として財産が移転する際に、その財産を取得した人に課される税金です。課税されるのは財産を与えた被相続人ではなく、相続・遺贈・死因贈与によって財産を取得した相続人や受遺者である点が出発点になります。富の世代間移転に対する再分配と、所得税の補完(生前に課税しきれなかった資産への清算)という2つの役割を担っています。

日本の相続税は『法定相続分課税方式を加味した遺産取得課税方式』という独特の構造をとります。まず各人が取得した財産を合計し、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いて課税遺産総額を求めます。次に、これを法定相続人が法定相続分どおりに取得したと仮定して超過累進税率を当てはめ、いったん『相続税の総額』を確定させます。最後にその総額を、各人が実際に取得した割合であん分して各人の税額を出します。この『総額を先に決めてから配分する』仕組みにより、遺産分割の仕方を変えても税の総額が動かず、恣意的な分割による租税回避を防げます。

課税対象となる財産には、預貯金・土地・有価証券といった被相続人本来の財産だけでなく、『みなし相続財産』が含まれます。代表が死亡保険金と死亡退職金で、これらは民法上の相続財産ではありませんが、被相続人の死亡を機に実質的に相続財産と同じ利益が移るため課税されます。ただし相続人が受け取る場合は、それぞれ『500万円×法定相続人の数』の非課税限度額が設けられています。逆に、墓地・仏壇・一定の公益目的財産などは非課税財産として課税価格に算入しません。

課税価格を組み立てる際は、本来の財産とみなし相続財産を足し、非課税財産を除き、そこから債務(借入金・未払の税金等)と葬式費用を控除します。さらに、相続又は遺贈により財産を取得した人が相続開始前一定期間内(令和5年度改正により3年から7年へ段階的に延長中)に被相続人から受けた暦年課税贈与財産を加算します。こうして固まった各人の課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず原則申告も不要です。

申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内で、提出先は被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署長です。納付は金銭による一時納付が原則ですが、困難な場合には延納、それでも困難なら物納という順序で例外が用意されています。注意すべきは、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で税額が0になる場合でも、特例の適用を受けるには申告書の提出が必要だという点です。

この章の問題から3問

相続税は、相続又は遺贈によって財産を取得した者に課される税であり、財産を与えた被相続人に課される税ではない。

正解 ○(正しい)

正しい。相続税法1条の3第1項は、納税義務者を「相続又は遺贈により財産を取得した個人」等と定めており、課税の名宛人は財産を取得した者である。ここでいう「遺贈」には、同項かっこ書により「贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与」(死因贈与)が含まれる。課税対象も相続税法2条が「取得した財産の全部(又は法施行地にある財産)」と規定するとおり、取得者が取得した財産である。したがって、財産を与えた被相続人に課される税ではなく、財産取得者課税である点が相続税の基本構造となる。

日本の相続税の課税方式に関する記述として正しいものはどれか。

  1. 法定相続分課税方式を加味した遺産取得課税方式
  2. 完全な遺産取得課税方式(各取得者の取得額に独立に累進課税)
  3. 完全な遺産課税方式(被相続人の遺産総額に直接課税)
  4. 各人の取得財産に関係なく定額課税する方式

正解 法定相続分課税方式を加味した遺産取得課税方式

正解は(0)。日本の相続税は、相続や遺贈で財産を取得した者に課税する遺産取得課税方式を基本としつつ、税額計算の過程に法定相続分課税方式を組み込んだ折衷型である。計算構造を条文で追うと次のとおり。①各人が取得した財産の価額を課税価格とし(相続税法11条の2)、②課税価格の合計額から基礎控除額を差し引く(同法15条)。③その残額を、実際の分割内容とは無関係に法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定して按分し、その各金額に超過累進税率を適用して算出した金額を合計したものが「相続税の総額」となる(同法16条)。④この総額を、各人が実際に取得した財産の課税価格が課税価格の合計額に占める割合であん分して各人の税額を算出する(同法17条)。すなわち、相続税の総額は16条の仮定計算で決まり、遺産分割の仕方によって総額が変動しない仕組みになっている。したがって、完全な遺産取得課税方式(1)でも、被相続人の遺産総額に直接課税する遺産課税方式(2)でもなく、取得額と無関係な定額課税(3)でもない。

相続税の申告書の提出期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内である。

正解 ○(正しい)

相続税法第27条。被相続人が死亡したこと(相続の開始)を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署長に申告・納付する。

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