権利関係① 民法の基礎(意思表示・代理・時効)
強迫取消しだけは善意無過失の第三者にも対抗できる(96条3項の反対解釈)一方、虚偽表示は善意のみ・錯誤/詐欺は善意無過失の第三者に対抗不可——この保護要件の差と、錯誤が改正で「取消し」になった点が最頻出である。
宅建試験の権利関係(全14問)のうち、意思表示・代理・時効は毎年のように出題される基幹論点である。まず意思表示の全体像を押さえる。民法は、意思表示に瑕疵や欠缺がある場合の効力を、心裡留保(93条)・虚偽表示(94条)・錯誤(95条)・詐欺又は強迫(96条)の4類型で規定する。心裡留保は原則有効だが、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは無効となる(93条1項ただし書)。虚偽表示は当事者間では常に無効であるが、その無効は善意の第三者に対抗できない(94条2項)。ここでの第三者は善意であれば足り、無過失や登記は不要とするのが判例(最判昭44.5.27等)である。試験では「善意かつ無過失が必要」「登記が必要」とするひっかけが頻出するため、条文の文言どおりに整理しておくことが重要である。
錯誤(95条)は2020年施行の債権法改正で「無効」から「取消し」に変更された点が最重要である。取り消しうるのは、(1)意思表示に対応する意思を欠く錯誤(表示の錯誤)と、(2)表意者が法律行為の基礎とした事情についての認識が真実に反する錯誤(基礎事情の錯誤=動機の錯誤)であり、いずれも法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであることを要する。基礎事情の錯誤は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り取消しができる(95条2項)。また、表意者に重大な過失があったときは原則として取消しができないが、相手方が悪意・重過失の場合や相手方が同一の錯誤に陥っていた場合(共通錯誤)は取消し可能である(95条3項)。錯誤取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗できない(95条4項)。詐欺取消しも善意無過失の第三者に対抗できない(96条3項)が、強迫取消しは善意無過失の第三者にも対抗できる点が最大の対比ポイントである。
代理では、代理行為の要件と効果、無権代理、表見代理を体系的に押さえる。代理人が顕名をして権限内の行為をすれば、効果は直接本人に帰属する(99条)。顕名を欠く場合、代理人自身のためにした意思表示とみなされるが、相手方が代理意思を知り又は知ることができたときは本人に帰属する(100条)。意思表示の瑕疵の有無は原則として代理人を基準に判断する(101条)。制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない(102条本文)。自己契約・双方代理は無権代理行為とみなされるが、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為は例外である(108条1項)。任意代理人による復代理人の選任は、本人の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるときに限られる(104条)のに対し、法定代理人は自己の責任でいつでも復代理人を選任できる(105条)。
無権代理では、本人の追認権(113条)・追認拒絶権、相手方の催告権(114条)・取消権(115条)・無権代理人への責任追及(117条)を整理する。催告は相手方が悪意でも可能だが、取消権は善意の相手方に限られ、117条の履行又は損害賠償の請求は相手方が善意かつ無過失(ただし無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは過失があっても可)であることを要する。判例上、無権代理人が本人を単独相続した場合、無権代理行為は当然に有効となる(最判昭40.6.18)が、本人が無権代理人を相続した場合は追認拒絶ができる(最判昭37.4.20)という相続の交錯論点は頻出である。表見代理は、代理権授与表示(109条)・権限外の行為(110条)・代理権消滅後(112条)の3類型で、いずれも相手方の正当な信頼(善意無過失等)を要件として本人に責任を負わせる制度である。
時効は、取得時効・消滅時効・時効の完成猶予と更新・援用と利益の放棄の4本柱で学ぶ。所有権の取得時効は、所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有し、占有開始時に善意無過失なら10年、それ以外は20年で完成する(162条)。善意無過失は占有開始の時点で判定すれば足り、途中で悪意になっても10年で足りる。占有の承継人は前主の占有を併せて主張できるが、その場合は前主の瑕疵(悪意等)も承継する(187条)。債権の消滅時効は、債権法改正により「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」又は「権利を行使することができる時から10年」のいずれか早い方で完成する(166条1項)。人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権は、主観的起算点から5年・客観的起算点から20年に伸長される(167条・724条の2)点も改正論点として押さえる。
時効の完成猶予・更新も改正で用語と構造が変わった。裁判上の請求等は完成猶予事由であり、確定判決等により権利が確定したときに更新される(147条)。確定判決で確定した権利の時効期間は、元が5年でも10年となる(169条1項)。催告は6か月間の完成猶予にとどまり、催告による猶予中の再催告には猶予の効力がない(150条)。承認は更新事由である(152条)。時効は当事者(消滅時効では保証人・物上保証人・第三取得者など権利の消滅について正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ裁判所は判断できず(145条)、時効の利益は完成前にあらかじめ放棄することができない(146条)。また判例は、時効完成後に債務者が債務を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても信義則上もはや援用できないとする(最大判昭41.4.20)。これらの条文番号と対比構造を一問一答レベルまで落とし込めば、本試験の権利関係で確実に2〜3点を確保できる。
この章の問題から3問
AがBと通謀して土地の仮装売買を行った場合、その事情を知らないが知らないことに過失があるBからの転得者Cに対し、Aは虚偽表示による無効を対抗できる。
正解 ×(誤り)
民法94条2項の第三者は「善意」であれば足り、無過失は要求されない(判例)。過失ある善意の第三者Cにも無効を対抗できない。「善意無過失が必要」と誤認させるひっかけ。
錯誤による意思表示は、表意者に重大な過失があった場合でも、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは取り消すことができる。
正解 ○(正しい)
民法95条3項2号。表意者に重過失があると原則取消し不可だが、相手方が悪意・重過失の場合(1号)と共通錯誤の場合(2号)は例外的に取消しできる。改正民法の頻出条文。
強迫による意思表示の取消しは、取消し前に利害関係に入った善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。
正解 ×(誤り)
民法96条3項は「詐欺による」取消しのみ善意無過失の第三者に対抗不可と定める。強迫取消しは善意無過失の第三者にも対抗できる。詐欺と強迫の対比の定番ひっかけ。
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本ページの講義ノートと問題は、各試験の出題範囲に基づきAIが作成し、法令・基準に照らして別のAIレンズで敵対的に検証したものです(検証プロセス)。法改正等で誤りが見つかった場合は随時修正します。合格を保証するものではありません。